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#11 流行と定番

2022年12月某日

師走の忙しさに心を亡くしていたら、新型コロナに感染してしまった。幸いにして症状は軽く、10日間ほど自宅で仕事や勉強しながら、少しじっくりと内省する機会を得た。思えば、新型コロナが日本で認知されたのは、2020年初頭頃だった。2022年末までのおよそ3年間で、彼らは『流行』から『定番』へのシフトしつつある。この時間の長さについて、『長い』か『短い』かと考えてみると中々判断が難しい。とはいえ、ビジネスのフィールドで考えてみると、自社商品をたった2~3年で、『定番化』することは、本来とても難しいことだ。

マーケティングの観点からは、最強の成果は『バズ』でも『一大ブーム』でもなく、『定番化』である。インスタグラムやTikTokでシェアされずとも、静かに、そして確かに売れ続けていく、そんな状況を目指したい。しかし、そのためには相応のプロセスが必要である。具体的には『定番化』の閾値を超えるための『認識の量』を社会に打ち込み続けなければならない。『認識の量』の社会的蓄積を増やすためには2つのアプローチがあるだろう。1つは『①長い時間をかける』ということ、2つは『②単位時間あたりの密度を上げる』ということである。至極当たり前のことだが、私企業がこれをやりぬくことは相当難しい事情もある。

『①長い時間をかける』については、特に、時間的コストの問題に直面する。『定番化』は短期的にわかりやすく顕在化してこない。目に見えない成果に対して、人的なリソースを配分し続けることは、社内の合議においてとても難しいことである。『②単位時間あたりの密度を上げる』については、特に、金銭的コストの問題に直面する。要するに、『太い』PR活動は『高い』のである。無論、利害関係者を巻き込みながらの戦略的PR活動という選択肢もあるのだろうが、それはマスにたどりつくまでが遠い。

『定番化』のすごいところは『大衆に深く刺さる』という奇跡の成果なのである。意図して戦略的に実行できる方法論があるなら、多くの企業が渇望するだろう。ひとつヒントになるかもしれないのは『民藝』のアプローチである。『民藝』とは『民衆的工芸』の略称で、要は、『生活の知恵』みたいなものから生まれたプロダクトやサービスのことだ。金継ぎや、食器など、種類は様々ある。これは、『生活の中に溶けた価値』をすくい取って、具現化した先にプロダクトがある、というプロセスとも表現できよう。仕掛け人という中心性が無いイメージだ。企業のマーケティング戦略から考えてみると、特定の企業の中心性というか、主語性といったものを極力排除しながら、生活の価値をすくい上げる視点で商品やサービス開発をしてみると、定番化の道筋がほんの少し開けるのではないだろうか。

ほなら。


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