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御手々結び

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手指にまつわる怪談噺卅話。 手の仕草が呼び込んだのは、こんな物語だった。 -ほら、離れないよう手を繋いで。 -それは祈るように指を折っていた。 -その時に初めて気が付いた… もっと読む
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記事一覧

ナマモノ禁止

ナマモノ禁止

3、握手

横山さんという男性は、子供の頃とても歯並びが悪かったという。
しかし、それは乳歯の時の話。
家族には大人の歯になったら矯正考えようね、なんて言われていた。

ある日、横山さんの下の前歯がグラグラとし始めた。
なかなか抜けないもので、いかんせん気持ちが悪い。
指で触って押し込んだりもしたが、歯の根元に筋がついていて取れなかった。
歯が不安定では、食事も気を使うし、歯を磨く時も気持ちが悪い

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桃蜜の指

桃蜜の指

2、指切り

昔の中国は字が上手いのが昇進の条件にもなったという。
こんな話を聞いた。

唯香さんが小学生の頃。
授業で書道というものに初めて触れた。
書道バッグも真新しく、教室に置いていいと言われたが自宅に持って帰った。
祖父に見せるためだった。

祖父は趣味で画家をしている。
依頼が多い油絵画家で、よく筆を握っているのを見ていた。
なので幼心にお揃いだと嬉しくなったのだ。
「おじいちゃん、習字

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痣のワケ

痣のワケ

1、手をつなぐ

タカシさんという男性が小学校の時だけ経験したという不思議な話を聞いた。

当時タカシさんは小学6年生になったばかり。
小学校から帰ると、必ず二階で音がした。
玄関のがちゃりという音。
この音に反応したかのように、二階の床が軋む。
自分の帰宅に気が付いて、母や幼い弟が反応しているのだと思うと嬉しくなった。

二階の和室は畳が古く、赤ん坊の香りと混ざってお日様の匂いがする。
そこで寝

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