雨森れに
雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
手指にまつわる怪談噺卅話。 手の仕草が呼び込んだのは、こんな物語だった。 -ほら、離れないよう手を繋いで。 -それは祈るように指を折っていた。 -その時に初めて気が付いた。触れられないのだ。 あなたの手指、本当にあなたのものですか? 1、手をつなぐ 2、指切り
猫の声が耳から離れない。 ある時から始まった怪異。 きっかけは恐らく自分だと話す提供者。 都内のある家で今も続く恐怖とは。 『とにかく猫を絶やすな。可愛がれ』という言いつけの意味は。 ※3名の提供者から頂いた話を創作を混じえてまとめました。 ※初めての長編(連載)なのでご意見頂けたら幸いです。
ある日、Twitterのタイムラインにて。輪入道のイラストが現れた。 “熱烈に語る 大いに語る 怪談会”と黄土色のフライヤーに掲げられたイベントの名前は「高田馬場怪談」。 怪談師 宮代あきら氏(以下、宮代氏)が自らオーガナイザーを務めるイベントだ。 各土地の駅名を冠し、先鋭怪談師数名を招いての怖い時間を提供。 音響での驚かせは一切なし、純粋に怪談話勝負で怖がらせてくる。 これは本人しかり、共演する怪談師らの腕がなければ成立しないイベントとも言えよう。 今回の5/28開催 高
高田さんが祖母のしめ子さんから聞いた話だ。 日本では人糞肥料が使用されなくなって久しい。 しかし需要のあった時代には、農家が一般家庭まで回って汲み取りに行ったほどであった。 そんな時代。当時まだ幼かったしめ子さん。 家の農業の手伝いで糞尿を運ぶことがあった。 自宅の便所から「ツボ」と呼ばれる肥溜めに流し入れる。 それだけのことだが、子供には非常に辛い手伝いであった。 肌に汚れが飛び、匂いで鼻が痺れる。 蠅や虫が、顔や体につくのも我慢しがたかったという。 しめ子さんが、い
沙希さんが結婚の挨拶に向かったのは、椿で有名な島だった。 東京育ちの彼女には全てが真新しく、恋人の実家にもすぐに馴染んだそうだ。 「広志、ちょっとお願いしてもいい」 庭から母親の声が聞こえ、お手洗いに立った広志さんの代わりに庭に向かった。 「あらやだ、沙希ちゃんが来たの! 広志にリスの始末お願いしようと思ったのに」 そこにはネズミ捕りより大き目の金属製のカゴがあった。 中にはグルグルと回る毛皮が見え、近づくとギャアギャアと鳴いた。 「島でリス園まで開いたんだけど増えるのが
知香さんは居酒屋勤務で、勤務開始時刻は夕方から。 しかし、TJ線は人身事故からの遅延が多いため、早めに家を出るのが常だった。 時刻は14時あたり。 知香さんは駅へと向かう途中。 踏切でなぜかしゃがみこんでいる少女がいる。 カンカンカン…… 警告音が鳴り響く。 片側、その逆側と遮断機がゆっくりと降りてゆく。 しかし、少女は俯いたまま動かなかった。 元々正義感の強い知香さんは迷わず飛び込んだ。 そして小さな体を抱きかかえて脱出した。 「危ないでしょう! なんで踏切で立ち
■連絡先一覧■東京在住なので東京都情報のみ(3/17現在) 発症時、自分が利用したもののみ掲載。 今後窓口が細分化される可能性もあるのでご自身でもお調べください。 新型コロナ・オミクロン株コールセンター 0570-550-571 ・9時から22時まで 年中無休 ・感染の予防に関することや、心配な症状が出た時の対応など、新型コロナウイルス感染症に関する相談 ・オミクロン株に関する相談 東京都宿泊療養申込窓口(宿泊療養センター) 03-5320-5997 ・9時から16時まで
私は2/21~3/3の期間でコロナ罹患した。 検査から宿泊療養、その後の対応までを記しておこうと思う。 感染者本人が言うのもなんだが、いろいろとスムーズだった。 少しでも誰かの助けになれば。 まず、現状、症状が風邪と類似していて気づきにくいとされているコロナになぜ気付いたかというと。 ・会社(医療器具系)から抗原キットを渡されていた ・アルバイト先(飲食)が体調不良報告フローシステムを確立していた ・基礎体温を毎日測っていた この3つが大きいように思う。 以下、時系列。
立石さんが中学生の時に、登山学習というものがあった。 その時泊まったのが、とある山小屋。 二階建ての雰囲気のある外観。 一階には広い食堂と薪ストーブがある談話室。 階段をあがると、寝るための大部屋があった。 天井は鉄骨がむき出しで、まるで秘密基地にいるような気分になったという。 立石さんは枕投げをする同級生達を尻目に、夜も早い時間からうつらうつらとしていた。 いつもとは違う寝具に寝にくさを感じ、完全に寝入れずにいた。 天井を薄目で眺めていると、違和感を覚えた。 鉄骨のあた
林田真理子さんは旦那さんとまだ幼いお子さんの三人暮らし。 ある日曜日。子供が昼寝の時間になり、これから夫婦で何をしようかと考えていた。 非常ベルが鳴り響く。 真理子さんの家はマンションの3階。 何かあれば逃げやすい階だが、まずは現状把握しなければいけない。 まずはご主人が外に出た。 少し時間を置いて帰ってくるが、どこにも煙が上がっていないと話す。 外には周りの部屋の人たちも出てきていたが、誰もが火の手が見えないと言っていたという。 マンション管理組合の役員である真理子さん、
3、握手 横山さんという男性は、子供の頃とても歯並びが悪かったという。 しかし、それは乳歯の時の話。 家族には大人の歯になったら矯正考えようね、なんて言われていた。 ある日、横山さんの下の前歯がグラグラとし始めた。 なかなか抜けないもので、いかんせん気持ちが悪い。 指で触って押し込んだりもしたが、歯の根元に筋がついていて取れなかった。 歯が不安定では、食事も気を使うし、歯を磨く時も気持ちが悪い。 数日我慢していたものの、横山さんは思い切って歯を回した。 かなり不安定な状態
麻美さんの小学校は城址跡にほど近く、いつもそこで友人と遊んでいたそうだ。 天守閣や日本庭園がしっかりと残るこの城、敷地の中には神社があった。 とても古く、ささくれや白く乾いた木材が目立ち、賽銭箱さえボロボロだったという。 この日はかくれんぼをしていた。 麻美さんは真っ先に神社を目指した。 ここは拝殿と舞殿がひとつになっており、その床下は子供が忍び込む程度の隙間がある。 常駐する人間もおらず、隠れるにはもってこいの場所だった。 神社に到着すると、背の小さい男性が舞殿で舞って
美容師を務める倫子さんは実家暮らし。 家は古く大きく、地下にも部屋があるという。 この部屋については「ミグシ様がおるでな。行ったら顔をあげちゃいけないよ」と教えられて育ったそうだ。 地下室の清掃は月に一度。 父親が担っていたが高齢の為、倫子さんが引き継ぐ事になった。 説明を受けるために父親と共に地下へと向かう。 部屋に入る前に「必ずこれを履くように」と足袋を渡された。 見ると父親はすでに足袋を履いていた。 扉に手をかけ、顔をあげないように首を下に向けた体勢で入る。 狭い視界
2、指切り 昔の中国は字が上手いのが昇進の条件にもなったという。 こんな話を聞いた。 唯香さんが小学生の頃。 授業で書道というものに初めて触れた。 書道バッグも真新しく、教室に置いていいと言われたが自宅に持って帰った。 祖父に見せるためだった。 祖父は趣味で画家をしている。 依頼が多い油絵画家で、よく筆を握っているのを見ていた。 なので幼心にお揃いだと嬉しくなったのだ。 「おじいちゃん、習字を習い始めたよ。みてみて。」 祖父の前に書道バッグを広げ始める。 硯や筆、マット
小林シゲヲ様の共作プロジェクト企画に応募しました。 果たして次の段階に進めるのでしょうか…… 審査結果をハラハラしながら待つことにします。 よかったら聴いてみてください。 下に歌詞も載せてあります。 夕闇に沈むpassionate すでに記憶は冷えたから あの日のことは 忘れて もう一度 もう一回 なんて言わせない 漆黒に溶けるegoistic 理性(じぶん)と本能(ジブン)が揺れる 一晩だけの夜更かし もう一度 もう一回 鮮やかに 繰り返したくなる お遊戯はいかが
なんとなく、詩が書きたくて書いてみた。 詩の作法も何も知らないけど、単語を音符のように扱って置いていく。 五線譜も何も無い。 ただ音が散らばっていく。 ヘタクソでも掻き鳴らす。 今日の私はセロ弾きのゴーシュ。 真夜中の来訪者(思考)に音楽を。 P.S. SS名刺メーカーって有能ね!
1、手をつなぐ タカシさんという男性が小学校の時だけ経験したという不思議な話を聞いた。 当時タカシさんは小学6年生になったばかり。 小学校から帰ると、必ず二階で音がした。 玄関のがちゃりという音。 この音に反応したかのように、二階の床が軋む。 自分の帰宅に気が付いて、母や幼い弟が反応しているのだと思うと嬉しくなった。 二階の和室は畳が古く、赤ん坊の香りと混ざってお日様の匂いがする。 そこで寝かされている弟を想像すると堪らなくなった。 タカシさんはずっと弟がほしかったのだ
新年あけましておめでとうございます。 頬が火照るほどに暑い部屋にいる。 長野に帰省していて、外はうっすらと雪。 厚いカーテンに、石油ストーブ。こたつとみかん。それに半纏。 室内で寒気を感じたくないという、強い意志が感じられる。 時々、幻想が横をかすめる。 この家のどこにでも。そこかしこに。 思い出。 気付いたら彼らはほどけるように消えてしまうから。 気付かないフリをして、青い自分の感情を眺めた。 また1年遠くなる。 また1年忘れていく。 そして、もうこの家には祖母しか住