雨森れに

物書き。 ショートショート、怪談、純猥談、エッセイ、詩など。いろんな『ブンゲイ』に挑戦中。 連絡などはDM解放してあります。 Twitter:https://twitter.com/rainy02forest 詳細:https://lit.link/AmamoriReni

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マガジン

  • ドライブレコーダー・プール

    書かない日を作らないための悪あがき。 拙いバタ足はいつかクロールを泳ぎ始める。 日々の衝突を記録する。

  • 記憶の紙魚

    雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。

  • 御手々結び

    手指にまつわる怪談噺卅話。 手の仕草が呼び込んだのは、こんな物語だった。 -ほら、離れないよう手を繋いで。 -それは祈るように指を折っていた。 -その時に初めて気が付いた。触れられないのだ。 あなたの手指、本当にあなたのものですか? 1、手をつなぐ 2、指切り

  • 猫塚

    猫の声が耳から離れない。 ある時から始まった怪異。 きっかけは恐らく自分だと話す提供者。 都内のある家で今も続く恐怖とは。 『とにかく猫を絶やすな。可愛がれ』という言いつけの意味は。 ※3名の提供者から頂いた話を創作を混じえてまとめました。 ※初めての長編(連載)なのでご意見頂けたら幸いです。

最近の記事

8/29 18:47 踏まれて覚えたオトナ

お久しぶり。 生きてる? 生きてるよ。 笑ってる? 笑ってるよ。 不機嫌な空を見て、湿った空気をひと呼吸分。 太陽に負けたアスファルトが、雨にも負けた匂いがした。 ※ 電車に乗る時にふと思い出した。 「あなたは自分が傷つくことには敏感で、他人が傷つくことには鈍感」 だから叱れないと、アルバイト先の上司に言われたことがある。 「プロ」ばかりがいる飲食店で、他のチェーン店とは勝手が違った。マニュアルはあるようで無く、無いようであった。 食材を調べるのは自分の目と鼻。触った時

    • 小指の所在 上

      林田くんはコンビニ店員だ。 フルタイムでシフトに入り、主に深夜帯で勤務していた。 慣れているとはいえ、客足が遠のく午前三時あたりになると眠気がやってくる。 防犯上、事務所にばかりいるわけにもいかない。 その上、彼は一度寝てしまうと起きれないタイプのロングスリーパーだったものだから、何がなんでも起きていなければならなかった。 ある夏の夜。深夜三時を回った頃。 うつらうつらしながらレジに立っていると、客が入ってきた。 白いワンピースに黒いキャップ、いかにも最近風の女性。 彼女の

      • 知らない家族

        前上さんは古物商の真似事をしていた。 古いものを買っては、フリマアプリや本物の古物商に持ち込み、金を稼ぐ。 ある時からはホームレスに換金すると声をかけて、協力してもらっていた。 その中のひとり、ヤスイと名乗るホームレスが持ってくるものは格別だったそうだ。 古い陶器やら細工物が多く、それらは高く売れる。 だが、ヤスイはそれらに添えて必ず何枚かの白黒写真を持ってきた。 前上さんとしては写真はあまり価値がなく必要なかったが、ヤスイが全部引き取れとうるさいので残らず買い取っていた。

        • 狸虫

          かな恵さんは、小学校に通う歳になってもおもらしが直らなかった。 それもいわゆる大のほう。 排泄は便所でするものだと頭では理解しているのに、いざとなると体が動かない。 漏らすことは恥ずかしく、せめてもの抵抗として足をきつく交差させて、汚物が出ないように尻まわりに力を入れた。 それでも努力の甲斐なく下着を汚す日々。 常に糞便の臭いをまとえば、友人などできるはずもない。 本人だけでなく、両親や先生らにも悩みの種となっていた。 ある日、かな恵さんの家に猟師の宮坂さんがやってきた。

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        • ドライブレコーダー・プール
          31本
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          69本
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          3本
        • 猫塚
          3本

        記事

          10/26 23:05 繭を作る眠りへと

          定期的に過眠気味になる。 今がそうだ。 予定がなければ大体12時間近くは寝ている。 もちろん起きいればやりたい作業は山積み。 アラームをかけても起きれない。頭に血が回らない。 何度かここで起きれそうーーという予感のある目覚め方をするけど、体が動かず布団の海に飲まれる結果に終わる。 こなさなければいけないことをしている自分を想像しながら、悔しさを覚えつつも意識を手放す。を繰り返す。 こういう時の夢見はいい。 現実逃避の産物は私を慰める。 今は友人らとわちゃわちゃする夢が多い。

          10/26 23:05 繭を作る眠りへと

          えべっさん

          漁師町で生まれ育った洋祐さん。 子供の頃から父親のような漁師になると心に決めていて、父親や漁師達と一緒にいる時は海の話を聞いていた。 そんなある日、聞いた事のない言葉を耳にした。 「えべっさんが近々揚がるってさ」 「そりゃいいな。稼ぎ時じゃねえか」 父親が嬉しそうに肩を回している。 「えべっさんってなに?」 「七福神の恵比寿様よ。来たら豊漁間違いなし」 「なにそれ! 僕も神様見たい!」 父親らが顔を見合わせる。 夜遅くに来るし、大人しか見てはいけない。 もう少し大人になった

          えべっさん

          9/27 4:44 意地と煌めきを不調で考える

          インドカレー屋さんのナンが美味しかった。 後回しにしていた洋服の整理をした。 いつもより早い時間に洗濯をして、お風呂を準備した。 それだけで、今日は少し嬉しい日になった。 朝、起きた時は空前絶後の絶不調。それもこれも予定を詰めすぎたせい。 冬はあまり動けない体質だから、寒くなる前にと詰めた。 物書き仲間と会って、飲み友達と飲んだ。 その他は怪談付き合い、イベント出演、動画出演、女子会、宅飲み、遊園地……etc あぁ生きてるな、と煌めいた。 青春時代も楽しかったけど、毎年楽し

          9/27 4:44 意地と煌めきを不調で考える

          抱卵を諦めるオシドリ

          若かりし頃、避妊を失敗して産婦人科に駆け込んだことがある。 アフターピルの副作用に苦しみながら「もし受精していたら私は人殺しかもしれない」なんて考えた。 妊娠しないという可能性を、あまり考えていない時代だった。 今、あの時に戻っても、私は同じ選択をしたと思う。 なぜ唐突にこんな話をしたかというと、夫婦で話し合った結果『子供を作らない』ことに決めたからだ。 どちらかといえば、ふたりとも子供が欲しいタイプだった。 長い月日をかけて、この選択をするしかなかった。 何度も何度も話

          抱卵を諦めるオシドリ

          7/5 18:33 ワンピースひるがえして

          気付けば雨の季節が終わりかけているのでは。 部屋に満ちる湿気と雨音で目を覚ますより、じわりと暑い空気と日差しで起床する。 例年通りなら7月中旬頃に梅雨が明け、真夏が始まるはず。 ゲリラ豪雨に肌濡らす夏が好きだ。 コンクリートが息をするように雨の匂いを発する瞬間が好きだ。 雨だけじゃない。 蒸れた夏草。生き物這う土。 身体の中に溜まる熱。肌をじりりと焼く太陽。突き抜けるような青空。 逃げ場のない季節が、生命を感じさせる。 ただ、汗は辛い。体臭や化粧が気になるから。 何も気に

          7/5 18:33 ワンピースひるがえして

          4/5 17:55 昨日見た夢を覚えているか

          私は沢山夢を見る。これは睡眠のほうの。 1回の睡眠で長い夢を見るけど、大体は前に見た夢の続きだったり再放送。 睡眠時間が長ければAの夢とBの夢を交互に見る。 そのうちAとBが一緒になったり、どちらも超長編になっていたり。 おそらく頭の作りがおかしいのだと思う。 夢を見る時は画面にシークバーが存在する。 もう一度見たいシーン。 準備をして挑みたいシーン。 むしろ何かを回避するために。 ちょこちょこやり直しがきくのだ。 だから毎日夢の中で無双している。 私は沢山夢を見る。 過

          4/5 17:55 昨日見た夢を覚えているか

          4/3 9:36 ハッピーを喰らう

          明るい感情に上限があるのを、感じたことはないだろうか。 暗い感情は底なしで、いつまでも負の世界に引きずり込むのに。 楽しい、面白い、幸せ……などは一定以上スパークしない。 しかも言語化してしまえば大変陳腐なものにならない? なんだか感受性の沸点が上がっていて、心が掻き乱されないのだ。 私はこれを孤独の後遺症なのではないかと思う。 ある種の俯瞰。 人が自分に対峙し続けると鬱々とし、もしくは割り切った明るさを持ち、外界からの刺激に揺れ動かなくなる。 己を見つめよとオトナや偉い人は

          4/3 9:36 ハッピーを喰らう

          オツトリさん

          達明さんはスノーボードが趣味だ。 7年前の冬。 有給休暇を使って4連休を作り、スキー場近くのペンションを予約した。 お世辞にも綺麗と言えない宿だったが、その分安く済むのでウェアを新調できた。 派手物好きの達明さんらしい、明るい青が眩しいウェア。 彼は宿に着くなり、すぐに着替えてスキー場へ向かった。 初めての場所だったが、雪の状態がよかった。 ボード越しに雪の柔らかさが感じられる。 彼の実力的に楽しめるのは中級者コースだったが、思わず上級者コースにも足を伸ばした。 人気の場

          オツトリさん

          3/15 18:52 南京玉すだれの前髪

          前髪がスダレみたいになっている。 束感といい、ツヤ感といい…… いや。クセ毛だから南京玉、をつけたほうがいいかもしれない。 朝のスキンケア後に対策しなかったからこうなりました。 パウダーはたいたりカーラーで髪を留めておけば、こんなことにはならなかった。 平安時代なら艶やかな髪で一世を風靡してたであろう私の髪。 アブラマシマシ。コイブミアブラカタブラ。 でも今は令和なので前髪ペッタリなダセー女やってます。 今日、ハンカチをもらった。 フラッシュバックのように飲み会でハンカチを

          3/15 18:52 南京玉すだれの前髪

          3/3 18:52 生死をループしようと思った妄想

          私が死んだ日。 夢を見ていた。 夢の中で夢を見て、さらにその先でも夢を見た。 戻ろうと思っても戻り方がわからず、現実味のない世界で「ここは現実じゃない」と思いながらずっと生きている。 多分だけど、私は死んでいるのだろう。 私が死んだ日。 クチナシの花が萎み始めていた。 フチが茶色くなってみっともない花弁。 香りも何となく腐敗が始まっていた。 もう捨ててしまおうと花を摘んで、気付く。 指の骨の露出。爪が1枚ひらり。 あぁ、私が腐敗していたんだ。 私が死んだ日。 出社すると会

          3/3 18:52 生死をループしようと思った妄想

          2/22 23:25 いつもの海原で

          書くという原動力は何だっただろうか。 思い出せば、いつも感情だったように思う。 何かにすがらなくては息ができないと、苦しさで物語を紡いだ。 酸素を取り込んで吐き出すかのように。 書いてるうちは全てが点と線になる。 2次元の中に私の物語が浮かび上がる。 書き手の私さえ点と線だというのに。 話だけは煌めいて、飛び上がる。 時に鯨のように。もしくはイルカのように。 手から離れ、大海原に解き放たれるストーリー。 のはずだったのに。 気づけば溜まりに溜まって、泳げないまま死んでいった

          2/22 23:25 いつもの海原で

          開花

          香純さんはおばあちゃんっ子だった。 土日になればおばあちゃんの家に行きたいと言い、行けば帰りたくないと駄々をこねた。 おばあさまのほうも、香純さんが初孫ということもあり、目に入れてもいたくないと言うような溺愛ぶりであったそうだ。   なので、おばあさまが亡くなった時は自ら線香の番を申し出た。 この時、香純さんは12歳。 人の死というものに向き合ったのは初めてだった。 線香を絶やさぬように過ごしていると、祖母の布団が動いた。 固定された手のあたりまで布団がめくれている。 ドライ