対話における 理解 とは何か? 「話のピントが合う人」「合わない人」 【対話力 #8】
話をしていて「この人とは、どうも話のピントが合わないなぁ・・・」と感じることはないだろうか。
まるっきりコミュニケーションができないわけではないし、なんなら相手は「わかってる風情」で話してくるんだけど、「う〜ん、そういうことじゃないんだけどなぁ・・・」と思う瞬間。
今回は、そんな「話のピント」について語ってみたいと思う。
そもそも「話のピント」とはどうすれば合うのだろうか。
「ピントが合わない人」というのは、何が問題なのだろうか。
もちろん本人の「合わせよう」という意識の問題も多少はあるが、ほとんどこれは能力の問題だと私は捉えている。
なかでも「理解力」の問題。
対話力を向上させるための5つのスキル(傾聴力、質問力、理解力、再構成力、フィードバック力)の3番目。理解力が足りないのだ。
では、対話における「理解力」とは何か。
これをきっぱりと定義、説明するのは難しいが、重要なのは「理解と不理解を区別する力」と言えるのではないだろうか。
●自分は何を理解していて、何を理解していないのか。
結局、理解力が足りない人というのは、この区別があいまいだったり、間違ったりしている、ということだ。
一対一であれ、グループであれ、「自分は何を理解していて、何を理解できていないのか」が明確かつ正確であれば、話のピントは合ってくる。
たとえば、対話の場においてはこんな2つのケースがあるだろう。
① お互いが「なんか、理解できてませんよね」と、理解できていないことを共有しているケース
② 一方は「理解しているつもり」になっているのに、他方は「いや、そういうことじゃないんだけどなぁ・・・」と思っているケース
どちらも「十分に理解し合えていない」という問題は残っているが、より問題が大きいのは、圧倒的に②のケースだ。
①の場合、「理解できていない」ということ自体は共有されているんだから、質問をしたり、説明の仕方を変えたり、より多くの情報を共有するなど、やり方はいろいろある。
簡単ではないけれど、少なくとも、同じ方向を向くことはできる。
しかし、②はそうはいかない。
いまいちピントが合わないまま、「理解しているつもりになっている人」の、わけわからないレールの上で不毛なコミュニケーションを続けなければならないからだ。
そういった「モヤモヤしたコミュニケーション」を日々、当たり前のように体験している人も多いだろう。
つまり、対話における「理解の壁」というのは、「わかってくれない」ということではなくて、「理解できていないことが、共有されていない」という問題なのだ。
哲学的なことを言えば、そもそも相手を完璧に理解することなどできない。
でも、相手の話だったり、感情だったり、相手が言いたいことの “一部” なら理解できるかもしれない。
その「一部」とは、どこなのか。
自分は相手の何を正しく理解できていて、何を理解できていないのか。
そんな「理解」と「不理解」の境界線を正しく、クリアに引く力。それが理解力なのだ。
対話をしていれば、いろんな『不理解要素』に出会うだろう。
● 言葉がわからない。知識が不足している。
● 相手の情報が不足している。
● 状況が見えない、イメージできない。
● 話の要点、ポイントがつかめない。
● 話の構造そのものがよくわからない。
● 相手の気持ちがわからない。
● 相手にとっての主訴、一番言いたいことがわからない。
「わからないこと」それ自体は、じつは大きな問題ではない。対話における理解力を高めるためには、まず「自分が何をわかっていないのか」に気づくことだ。
相手の話を聞いていたり、グループのファシリテーションをしているときには、いろいろな「わからないこと」に出会う。
そんな「わからないこと」を、上記のように分類できるようになること。これが、対話における理解力を向上させる第一歩だ。
そうやって『不理解要素』が明確になってくれば、必然的に質問の質も上がり、結果として、相手への理解は深まっていく。
これはもう、意識して、繰り返しトレーニングするほかない。
もちろん、もともと「話のピントが合いやすい」という人はいる。同じ話をしても、「わかってくれる度」が高く、話を整理して、ポイントを見つけ出すのがうまい人というのはいるだろう。
でも、それって、相性の問題もあるし、つきあいの深さ、「共有しているもの」の量によっても違ってくる。
それを超えて、常に優れた対話者として、一定以上の理解力を発揮しようと思うなら、やはりここで述べたような「理解と不理解の境界線」をクリアにすることが大事だと思っている。
私もこれまでに多くのコーチやカウンセラー、キャリアコンサルタント、あるいは「仕事としてファシリテーションを日常的にしている人」に出会ってきたが、「この人は理解力が本当に高いなぁ」と感じさせる人というのは「なんでもすぐに理解してしまう人」ではなく、決して「相手の話を『わかったつもり」』になったりはしない」という人たちだ。
「わかるポイント」より、むしろ「わからないポイント」をていねいに拾い上げていくような人たちだった。
きっと、あなたの周りにいる人も同じではないだろうか。
「話のピントがズレない人」というのは、決して独りよがりになることがなく、「自分が理解していること」が本当に正しいのかを常に気にして、慎重に確認しながら、相手と対話をしている人ではないだろうか。
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