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一級建築士がwebマーケティング会社に転職した理由

大学院を卒業して、公共建築を扱う設計事務所に4年、設計施工の住宅会社に4年勤めた私が、2019年10月からwebマーケティング会社に転職しました。
建築設計の仕事しか経験せず、一級建築士の資格も取得していましたが、急な方向転換に周囲は驚いていました。
なぜそんな唐突な方向転換をしたのか、ご紹介したいと思います。

1.転職先は住宅情報を扱うwebマーケティング会社

転職先は業種で言えばwebマーケティング会社ですが、サービスの一つに県内の住宅会社が登録されたプラットフォームの運営があります。
私は住宅情報のプロフェッショナルとして転職することになりました。
しかし設計ができたり、現場のことを知っていたりするだけではwebマーケティングの会社にお誘いを受けることはありません。
私は前職の住宅会社で設計の他に広報業務を兼務していたため、一般的な建築士よりもリテラシーが高く映ったのが誘った理由みたいです。
建築が好きで、設計が好きで、建築を通して多くの人を豊かにしたいという思いを抱いていました。
実直すぎる思いを抱いていたにも関わらず、異業種へのお誘いに乗って転職に至ったのは、建築業界の外からこそ業界を変えられる可能性があると感じたからです。
また建築のプロだからこそ、住宅情報を扱っているwebの会社で、独自のポジションを築けると感じたのも転職の理由です。

2.営業なしにプロに学べない環境

住宅会社で働いて思ったのは、ユーザーが想像以上に無知だということでした。
人生で数少ない家づくりで、個人として一度に扱う金額が大きく、よく学ばなければ後悔することが多いのが特徴です。
しかしなぜユーザーが無知なのか。
それは「プロに学ぶ機会=執拗な営業行為を受ける場」という認識が強く根付いているからだと私は思いました。
ユーザーが家づくりについて知りたいと思い、ネットや雑誌を見てもよくわからないと思います。
プロの話を聞いて学びたいけど、住宅会社のイベントに行けば執拗な電話や突然の訪問にあうイメージが強く、躊躇してしまうのが現状です。
意を決してイベントに参加したものの、内容は自社紹介ばかりで、知りたい情報ではなかったという経験をしている方も多いはずです。
このように根付いたイメージはなかなか払拭できません。
私が住宅会社に勤めていた頃、営業行為も自社紹介もしないと謳ったイベントを企画しましたが、集客はイマイチでした。
イベントの主催が一企業で、ユーザーの抱いているイメージが前述のようなので、謳い文句を疑われたのが原因だと思います。
一方で私が言っていることは綺麗事で、住宅会社が営業目的ではない売上の上がらない行為に時間を割くのは、費用対効果として間違っています。
私の思考は住宅会社に勤めるサラリーマンとしては失格だったと思います。
しかしユーザーにとって有意義な家づくりをするために、学びの場こそ必要なのも事実です。
そのため情報を発信する側に専念すれば、営業行為と学びの場の矛盾から解き放たれると思い、私はwebの会社に行くことを決意しました。

3.webのプロであり、建築のプロではない企業

webマーケティング会社のため、そこに勤めている人たちはwebやマーケティング、PRに関してはプロフェッショナルです。
転職して10日程の出勤で知らない言葉をたくさん耳にしています。
しかし扱っている情報一つ一つに関してのプロではありません。
現在の職場は、住宅のプラットフォームを運営していますが、住宅や建築のプロはいませんでした。
そのため専門的な内容を書く際や相談を受けた時に、判断できない状況があったみたいです。
その都度知り合いの建築関係者に確認したり、インターネット等で調べていたら時間がかかって仕方ありません。
ここが専門分野に特化したメディアとして分岐点かもしれません。

1.専門的なことに踏み込みすぎず、上っ面の情報を発信する
2.時間をかけて自社のスタッフでなんとかする
3.専門家と契約を結び、専門性を高める

ここで現在の勤め先が選んだのが3で、一級建築士の私を雇用することでした。
今となっては雇用ではなくてもアドバイザー契約という選択肢があったのではとも思いますが、社員として雇用するあたりに現在の勤め先の本気度が伺えます。
専門分野に特化したメディアとして、社内で企画や判断できる範囲を広げることで、事業拡大を目指している姿勢に私は共感しました。
webの会社で唯一の一級建築士という建築の専門家なので、社内でも独自のポジションになります。
そこに優位性がある訳ではなく、異業種としての独自性が求められます。
私は引き続き建築や住宅に関する専門知識をインプットしつつ、webのことも少しずつ学んでいかなければいけません。
大変だけど、大変だからこそやり甲斐があります。

4.掛け合わせが可能性を生む

私は建築の専門家でありながら、webの会社に席を置くことになりました。
以前から建築と写真という複業家として活動をしており、この選択も私らしいかなと思っています。
建築を知っているから、建築士が求める建築写真を撮影することができます。
同様に、建築を知っているからwebに活かせることやその逆も起き得るはずです。
専門分野の掛け合わせが独自の技術を生み、更に新しいサービスをつくることができるかもしれません。
その新しいサービスで業界を変えられるかもしれません。
まだまだ仕事はこれからです。
「建築を通して多くの人を豊かにしたい」
この信念が少しでも叶えられるように、「建築士×写真家×web」で新しい道を切り開いていきます。

建築と写真で素敵な生活のサポートをしたい