見出し画像

あんこうとガルパンを求めて


東京では大雪警報が相次いでいる冬、新年を経て2月に入り疲れてきた。新しい仕事環境を迎えやっと慣れてきたかどうか。昨年度を終わらせ、ますます自分の能力のなさを痛感していき、気持ちとしては、厭世気分が募っていく。身も、心も寒い。しばらくずっと引きこもっている。


やっと給料が出、休みを迎えた。すべてを置き去りにして遠くのほうに旅へ出たい衝動に駆られる。
しかし、どこに赴くか頭が真っ白な状態。散歩記事を書いている自分だが、何もかも解放されたいし、とにかく遠くへ行きたかった。

ふと思った。あんこう鍋ってどういう味だったっけ。

ガルパンおじさんになりました!

そもそも、茨城県大洗町にはまた旅に行きたいな、と思っていた。
アニメ「ガールズアンドパンツァー」こと「ガルパン」。女子高生が部活動で戦車戦を繰り広げる突飛な作品なのだが、空想の世界ながらもリアルな戦術と戦車の動きで多くのファンがいる。
僕はとにかく動きと音響にはまってしまい、実際に映画館の4dxに憧れて行ってみた。60分の短さで2000円であるが体感は2時間くらいの密度で戦車の迫力と鳴り響く爆撃音と金属音に体中がしびれるくらい満足した。
この作品の舞台である茨城県大洗町は海水浴場や水族館などで茨城県有数の観光地だったが、2011年東日本大震災の被災後、2012年にガルパンがはじまり、いわゆる聖地巡礼スポットとして有名となった。2013~14年には7億円の経済効果を挙げているらしい。

大洗町には過去に3度ほど行ったことがある。
一度はガルパンを観たことない状態だったが、アニメの聖地巡礼の経済効果とはどういうものか視察するため。町を挙げてのアピールといろんなお店が温かく「ガルパンさんですか?」と迎え入れる姿勢が心地よかった。現地の海鮮料理と「幕末と明治の博物館」と大洗磯前神社などを歩き楽しんだ。
二度目はガルパンを一通り履修した後。意外と面白いな、けどハマるほどではないなと思ったが、アニメで出てきた店などを探し求めていた。

そして今回の三度目。実はガルパン最終章シリーズで、いわゆる「沼にはまった」感触を覚えた。BC自由学園戦、フランスをモチーフにした敵軍。情報操作と囮を用いた戦術や、主人公たちの工作による攪乱作戦。BC自由学園の最期はフランス軍歌「玉ねぎの歌」(日本では童謡「クラリネットこわしちゃった」)を合唱し、だんだんと仲間が散り、大将のマリー様の独唱になっていく切なさ。包囲された後、愛するケーキを食べて至近距離から被弾され敗戦を迎える。

左の安藤は受験組でフランス革命でいえば「庶民」、中央マリー様はフランス革命における「王族」、右の押田はエスカレーター組でフランス革命における「貴族」。この革命感あふれるキャラ設定とやりとりに、僕の偏見でもあるフランス観が刺激された。
ケーキ好きの、いけ好かないお嬢様と思っていた大将のマリー様が、信頼していた仲間たちの窮地に立ちあがり、超越した身体能力と分析力と判断力を発揮するカリスマぶり。安藤と押田が自然にマリー様を崇拝するのがわかります。
ボカージュで戦う戦車にひたすら痺れる…

ヌルヌル滑らかに動く戦車と爆音、砲弾が車体の金属をかすめる音。ガルパンは音を楽しむものだと改めて確信した。そしてカメラアングルをふくめる映像美。観ていて心の中は足がバタバタし、頭抱えて絶叫するような歓喜を味わえた。そのまま過去のシリーズを観直して改めて凄味を感じる。
特に劇場版の最終決戦の5分、いっさいセリフ無しの戦車戦で観客を圧倒する演出。本当に宝物のようなアニメであり、いわゆる「ガルパン沼」に喜んで落ちていった。贔屓目かもしれないがハリウッドにも対抗できるものだと思っている。

あんこう鍋ってどんな味だったっけ?

で、この状態でまた大洗町に行きたいと思っていたところ。そしてまた旅の付加価値を探す。ガルパンでも推していた大洗町名物「あんこう鍋」。
10年以上前、今と同じように、1年の業務を終え、後悔と失意、また来年度の不安に苦しんだとき。はじめて水戸と偕楽園を訪れ、梅が咲き乱れる名所のはずが2月で梅の枯れ木しかなく、妙なテンションで複雑な気持ちに狂っていたとき、店で食べた「あんこう鍋」が実にうまかったのを思い出したのだ。

ただ、どのような味だったか思い出せない。スーパーであんこうを買い自分で作ることもあったが、雑に煮込むことしかできないためか、違和感しか感じなかった。あん肝を出汁に溶かしているあの濃厚なコクと磯の味。

ひたすら「あんこう鍋を食べる旅にする!」と決意した。

漫画を読みながら大洗町を目指す

大洗町は、わが家がある西武からは遠くめったに行けるものではない。片道3000円あれば足りるか。特急「ひたち」「ときわ」を使うと早いのだが、あんこう鍋に大判振る舞うために普通の快速に乗る。
旅のおともの漫画も重要だ。僕は旅をしながら漫画を読むのが人生最高の楽しみだと思う。
選んだのは、アニメで評判になった「この着せ替え人形(ビスクドール)は恋をする」。いやあ、アニメも良いが原作も良い。雛人形職人(頭師)の家に生まれ頭師を目指し日々修行に打ち込むも、雛人形オタクすぎて友達がいない五条クン。彼があるとき、クラスのアイドルでモデルもやっている海夢(まりん)と出会う。実はまりんはコスプレをするレイヤーに憧れているオタクであり、雛人形の衣装づくりができるというか、ミシンと裁縫ができる五条クンに衣装づくりを依頼していく。
やがて、好きなものに打ち込んでいく人々と心通わせつつ、さらにまわりの世界を知っていく二人に読んでいて涙が出そうだった。

ちょいエロでもある当作品ですが、胸の揺れも含むキャラの動きやしぐさがていねいに描写され丁寧につくられているのがわかります。制作会社の妥協の無さというか。まりんの目の動きと輝きが最高です。

最高の旅を感じながら、3時間くらいかけて水戸に到着。
このまま、大洗鉄道に乗り換え、20~30分で大洗駅に着く。鉄道好きなので、この大洗鉄道のローカルぶりも良き♪

大洗駅到着

駅にラッピング車!
ようこそ!大洗へ!
小さい駅だが、ファンにはたまらない!
大洗は、海とガルパンの町なのだ!

早速難題が。まず、けっこうな雨である。まあこれを覚悟してでの旅で、傘を差し滅茶苦茶に歩き回るのも楽しみにしていた。バスの便数は当然少ないが、こじんまりとした町の雰囲気と海岸沿いを歩くのも楽しみにしていた。
想定外は「風の強さ」だ。海沿いは風が強いことにひたすら苦しむ。

町が一体になり、ガルパンを推している。
ファンじゃなくても、楽しいマンホール。
市街地の道端に水浜線のあと。
ファンじゃなくても楽しいスポットが。

商店街を歩くこと20~30分、マリンタワーが見えてくる。


マリンタワー入り口
ガルパンもお出迎え。ちなみに「あんこう踊り」はフィクションです。

マリンタワーの展望台はお金がかかるのだが、1階のショップと2階のガルパン喫茶は無料で入れる。

残念ながら、ガルパン喫茶は閉店中だった。ショップでは茨城の物産がけっこう豊かで、僕はインスタントの「のどぐろ雑炊」540円を購入。

マリンタワーを出て数分で、明太子で有名な「かねふく」の「めんたいパーク」を発見。以前は日が沈むころだったから行かなかったのかな。

めんたいミュージアムに工場見学マニアとしては工場の様子を一望できて楽しい。「めんたい丼」はこれでもか!と明太子が乗っているのだが、「あんこう鍋」を目指さないと!お土産も買いたかったのだが節約。

明太子の原料のスケトウダラは底引き網で獲れます!
思わず、あんこう鍋から浮気しそうな。

さて、あんこう鍋を食べさせてくれる店はきっとあるのだろうが、どこなのかがわからない。どこでもいいから、あんこう鍋を食べたいと思っていたところ、僥倖! 発見!! 入口に「あんこう鍋」があった! お店の人も入口にいて「よかったら」と声をかけてくれて。「あんこう鍋、大丈夫ですか?」と聞いたら、「1人前でも大丈夫ですよ」と。もう決定するしかない。

あんこう鍋との再会

値段は刺身とごはんつきで3000円くらいだが、刺身も食べたかったのでこんなもんかなと。奮発してビールも。

やっぱ旅先の食も楽しまないと!
はぁ。今見ても涎が出そう。

刺身きた! ダイエットと金欠もあり、ろくなもの食べてないからこそ、染みる!!
白魚は茨城県の霞ケ浦の名物でもある。ひらめ、タイは皮を湯引きしていて、もうこれで満足だ。さらに、油物は数か月ぶりで食べるのも抵抗があったが、フグのからあげ、そしてビール。大洗に来てよかった!!

実は、茨城は米の生産も全国7位。「ツヤツヤしてませんか?お米が立ってこんにちわしてますよ!」(BY「甘々と稲妻」1話、飯田小鳥)

あんこう鍋は、固形燃料で沸騰するまでお預け。一通り平らげた後、しばらく待つ。沸騰してきたときの「お待たせ」感、そして来るべき、あんこう鍋のお披露目。

見て、「これは絶対うまいやつ!」という高揚。
汁をすする。僕は実家は長崎で、釣り好きの父もあり、魚介で育ってきた。
このコク、磯の風味。寒い中、風で何度か傘も裏返り、雨にたびたび打たれるわ、マスクが吐息でグッショリに濡れ、眼鏡も曇り、歩くの好きな僕も正直苦しかったのだが、ひさしぶりの高級料理とこの温かいあんこう鍋の滋味にもう満足感しかありませぬ。

シズル感は出てますでしょうか。

あんこうの身は淡白ながらも感じられる旨味が出汁にからまりより濃厚に。あんこうの腸や皮の独特な触感。そして野菜と出汁をひたすら交互に食べる。もう十分にお腹も満たされ、3000円以上の価値を感じられた。

さて、堪能してもう帰宅しても良いのだが、やはり大洗磯前神社と幕末と明治の博物館には行かないと。そういう使命感を抱いてしまったために、この旅のさらなる辛みを味わうことになるのだが、それもふくめての旅だ。

大洗磯前神社へ

強い風雨にさらに苦しむ決意をし、大洗磯前神社へ。

神社の参拝はもともと好きだが、御朱印も好きになってきた。ちゃんと御朱印帳も用意し、濡れないようにビニールに包んでいる。
お店から海沿いに歩き20分くらいか。風雨もあり体感は30~40分の倍はかかったようだ。
この立派な鳥居をくぐると、参道の坂。ここはガルパンの舞台にもなった。

僕のガルパンの推しは、ソ連をモチーフにしたプラウダ高校の大将のカチューシャ。小さき暴君と言われ、ロリというよりツンデレぶりがかわいい。僕の推しキャラのひとつの傾向だ。まあ現実ツンデレさんと僕は合わないのだろうが。「粛清してやる!」という大将ぶりだが、実はポンコツ、されどえげつないほどの決断力と部下思い。というか、ロシアンティーやロシア民謡「カチューシャ」を軍歌として合唱するシーンに悶絶したのがはじまりだが。
カールを食らいそうなカチューシャの画像をグーグルで「カチューシャ カール ガルパン」で検索していたら、以前僕が貼ったカチューシャのnoteの画像が!
この仲間へのハンドサインを手遊びでやるカチューシャひたすらかわええ。


参拝をすませたら、神社わきの階段を下る。やはり大洗磯前神社のパワースポット、「磯にたたずむ鳥居様」へ。太平洋の荒波の前に、小さな鳥居がそびえたつ。

以前ここに初めてきたとき、僕はそれをじっと見つめ「あの遠い太平洋の先に、アメリカがあるのか」(まあ、実際に直線距離的にはチリやブラジルやアルゼンチンなのだが)と感慨にふけった。それを追体験しようとした。が、海の前の風の強さよ。ちなみに、このときはいつものニット帽ではなくキャップをかぶっていたため、何度も風で帽子が飛んでいく。傘も何度も裏返る。

僕は、「巨大な飛沫に散る荒波に映える鳥居(東映映画のOPのような)」を期待してスマホカメラを向けていた。傘を地面に置き、雨に打たれながら時期を待っていたそのとき。突風で置いた傘が2~3m這いずって飛んでいく。それが2回も。数分、10枚くらい撮ったが、波飛沫は鳥居から遠く、そんなに映えない写真で撤退。

旅館や料亭が並ぶ神社下の海岸通り、ここもガルパンのキャラが立っている。ガルパン待合室(ファン交流の場)もあったが閉まっていた。

幕末と明治の博物館へ

神社の大鳥居に戻り、市街地方面へ坂を上ると、幕末と明治の博物館。

土佐藩の田中光顕が、幕末の尊王攘夷運動の原動力となった水戸学と、桜田門外の変や天狗党の乱を起こした水戸藩士や明治天皇ら皇族たちを記念するために建てる。

藤田東湖像

幕末の志士たちに影響を与えた「藤田東湖」(吉田松陰らに尊王攘夷の思想を広めた)に「会沢正志斎」(外国船接近に備える海防の考え方を広め吉田松陰とも交流、徳川斉昭=徳川慶喜の父の師匠)に「武田耕雲斎」(幕府で尊王攘夷と海防を訴えた水戸藩主・徳川斉昭を藩主に擁立し藩政を支え、のち天狗党の乱を起こす)。徳川光圀が作った大日本史をはじめとする水戸学は江戸幕府討幕の原動力であった。展示品に見られるそれらの痕跡。
さらに、江戸時代の大洗町に思いを馳せる。

茨城の中心地、水戸。水戸は徳川家の親藩でありながら、討幕の拠点であり、多くの幕末の志士が訪れる。水戸の弘道館からは、この地域を支配するエリートを育て、若者はここで政治の在り方や学問への熱、日本の未来や享楽についてなど議論したことだろう。
そこから南下した、大洗町。くわしく調べたわけではないが、もとは磯浜町や大貫町が統合されてできた町だ。
漁業の町として栄えたようだが、おそらく、砂浜と海水浴、魚介類を楽しむ観光の町としても、多くの人々が訪れた歴史ある地域だったのだろうか。

そんな町の歴史を偲んでみる。この博物館は、かつて上皇陛下も若いころに訪問した。等身大の明治天皇像に皇族たちの遺品(有栖川宮威仁親王の小刀など)も展示されている。

有栖川宮熾仁殿下(皇女和宮の元婚約者で明治新政府総裁・戊辰戦争の東征大総督)の異母弟である威仁親王。何が言いたいかというと、幕末の数多いイケメンの中で、僕は最強のイケメンだと思いますが、いかがでしょう!
博物館では、ガルパンの歴女チームがお出迎え!
カバさんチームだっけ。

さて、博物館を出て。そのまま道なりに進めば大洗駅だ。
しかし、まだまだガルパンを満喫していない、心残りの場所がある。
実は、うっかりマリンタワーのときにガルパンギャラリー(グッズのショップ)を通り過ぎてしまったのだ。
そして、以前入った温泉! 来た道をまた戻ることにした。

ガルパンギャラリーと温泉を楽しみます!

体感、徒歩1時間くらいだろうか。ホントはもっと短いのだろうが、この風雨、特に強風だ! いろんな方向からくる風は予測不能。傘の向きを強風に対して様々な角度に変えていく。傘が破壊されれば、全身が濡れて服はクリーニングゆき、風邪をひくことにもなろう。
気づけば、右手(左手に荷物)は雨でグッショリ。
歯を食いしばり、来た道をひたすら戻る。

マリンタワーのすぐ右側にショッピングモール。ここにガルパンギャラリーがある。
平日、最悪の天気、コロナ禍もあり、ちょっとさびれた感じか。「ガルパン聖地ブーム」が下火になり、崩壊する恐れを抱いてみる。まあ、ガルパン最終章は、1話が2017年公開。2021年にやっと3話。おそらく全話終わるまで2030年くらいはかかるだろうから、ブームはずっと続くだろう。

ショッピングモール撮り忘れたんで、ガルパンの方で。

さて、何を買うか。僕がちょっと気になったのが「BC自由学園」のジャージだ。ちょっと良いかも。しかし、キャラグッズはなるべく控えめにしてきた僕。アニメ服とか、そこまでは…って感じだったが、最近はオタクであることに喜びと誇りを感じつつある。BC自由学園の1員であることもいいなぁ!? 部屋着として使うか…!?
けど、5500円… 散在しすぎか!?

結局、御朱印帳に落ち着く。今の御朱印帳も終わりそうだし、大洗女子学園のロゴが目立つ御朱印帳へ。プラウダかBC自由学園か、いろんな学園に迷ったがベタなものが王道。

広めのショップの脇にはギャラリーもあり、原画なども観れます。ガルパン聖地巡礼客を満足させることでしょう。

ガルパン主人公、西住みほ。視聴者からは「軍神」と呼ばれてました。フィギュアも展示!
ショッピングモールにある飲食店。閉店中でしたが、さっき食べた店のあんこう鍋がうまそうでした!

マリンタワーの目の前に、温泉がある。「ゆっくら健康館」はスポーツジムもプールも食事処もあるし、何よりも安そう(750円)。そして、ガルパンキャラもお出迎え!

温泉は、普通の温泉より二倍くらい濃く、いろんな効能が評判だとか。寒さと疲れに染みる!

食事処でビールを楽しもうとしたが、閉店中…。

そのまま駅に戻り、後ろ髪を引かれる思いで水戸へ戻る。

さよなら大洗、またいつか!


水戸に着くと、また宴のはじまりだ! お土産を買うが、納豆か梅干しか迷い、めっちゃ酸っぱそうな点から梅干しを選ぶ。納豆も買っておけばよかったな。駅のお土産屋は茨城名物を買うのに便利!
そして、おつまみに駅弁、ビールやハイボールを買い、特急で東京に戻る。

次の日からは、仕事がたて続き、大変だったのだが、この思い出をもとに乗り切りました。また仕事と節制の毎日で、たぶん旅に出たとしても、東京周辺でしょう。また散歩記事も書くし。
久しぶり遠出をしたのだが、身も心も疲れたら、この思い出をもとに乗り切ろう。


この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,511件

#この街がすき

43,653件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?