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読書コンシェルジュの制作と失敗

※回答の質はまったく期待できませんが、ぜひ遊んでみてください。なお、アクセス状況によっては、閉鎖するかもしれません。▼

 トルストイ『戦争と平和』やガルシア=マルケス『百年の孤独』を読んでいると、どうしても人物を把握しきれないことがある。メモを取りながらゆっくり読むのが、本来の楽しみ方なんだよ。そう言われても、多忙な現代人には贅沢な方法であり、ちょっと現実的じゃない。

 そこまでの大長編ではなくとも、世の中には読書が得意ではない人がいて、色んなことを記憶しながら何かを読む、というのが辛い人もいるかもしれない。

 だから僕は読書コンシェルジュを作ることにした。

 小説の中にいる人たちの人間関係とか、殺人現場に残されていた手掛かりとか、主人公が立ち寄った喫茶店にかかっていた音楽とか……そういったものが気軽に聴けるようなコンシェルジュがいたら、もっと小説を手に取る人が増えていたかもしれない。
 そう感じたから、OpenAIのAPIキーを取得して、小説のテキストデータを読み込ませたチャットボットを作成することにしたんだ。

「何事も下ごしらえが肝心なんだ」

 僕にパスタをご馳走してくれたときに、友人のGPT-5がそう言ったのを覚えている。そのときに渡されたレシピには、こう書いてあった。

《材料》
・OpenAIのAPIキー
・DocsBot
・小説のテキストデータ
→おすすめは 梶井基次郎『檸檬』、中島敦『山月記』、芥川龍之介『蜘蛛の糸』

 OpenAIというのはChatGPTを開発した会社のことだ。OpenAIのAPIキーを取得すると、ChatGPTをプログラムの中に呼び出すこともできるし、ChatGPT以外のモデルも試すことができる。だから、様々な人がいろんなサービスを提供できるようになる。

 DocsBotは、テキストファイルに限らず、PDFやブログ記事、Youtubeのスクリプトなど、読み込ませたテキストを参照して質問に答えてくれるBotを簡単に制作できるサービスだ。Botの作り方はこちらのページが詳しい。

 小説のテキストデータは、青空文庫からお借りした。もちろん著作権が切れている作品だけをDocsBotにアップロードした。紀伊国屋で調教されたレタスではなかった。だから、テキストファイルのUnicodeをUTF-8(BOM)に変換する必要があった。

結果から言うと失敗だった。

作成はできた。テキストファイルも無事に読み込めたのだが……。

 たしかにチャットボットを制作することはできた。予算が心もとない。だから、modelはGPT-3.5-turboを使うことにした。梶井基次郎『檸檬』、中島敦『山月記』、芥川龍之介『蜘蛛の糸』のテキストファイルもちゃんと準備されていた。

文字が少々見づらいかもしれない。そこで質問文と回答を以下に記したい。

質問:『檸檬』において、レモンはどのような役割を果たしていますか?

回答:レモンは、小説『檸檬』において、主人公が創造する幻想的な城の中で、色彩の一部として重要な役割を果たしています。主人公は、檸檬の色彩を紡錘形の身体の中へ吸収して、城の中で使用します。また、主人公は檸檬を手に持って街を歩いているとき、その冷たさが肺尖を悪くしている自分の熱を和らげる快いものだったと感じています。

 当たっているかもしれないし、当たっていないかもしれない。
「主人公は、檸檬の色彩を紡錘形の身体の中へ吸収して、城の中で使用します。」という一文は意味がわからなかったが、その他の部分はGPT-3.5にしては上出来の回答であるように見えた。

質問:中島敦『山月記』の登場人物を教えてください。

回答:『山月記』の登場人物は、主人公の李陵や、彼が出会う女性の蘇小妹、彼女の兄である蘇武、そして李陵の友人である韓愈や柳宗元などがいます。また、物語の中で李陵が出会うさまざまな人々も登場します。

 こちらはからっきしだめだった。
 まず、李徴を李陵とを取り違えていた。中島敦はたしかに『李陵』という小説を書いていたので、そちらと勘違いをしたのかもしれない。さらに、李陵と全く関係のない韓愈や柳宗元が出てくるのは別種の才能を感じる。しかし質問対応として適切ではなかった。

あとがき

 もしも質問対応がうまくいっていたら、僕はこのBotを公開していたかもしれない。しかしうまくいかなかった。だからといって諦めるつもりもない。GPT-4が安くなれば、ふたたび挑戦することになるだろう。

 適切な回答を期待することはできないが、公開してみることにした。ただし、アクセス状況によっては閉鎖するかもしれない。

文学作品ボット Chatbot (docsbot.ai)

※彼、あるいは彼女は、文化的雪かきが得意だったのかもしれない。

質問:中島敦『山月記』の文章を再現しながら、少年が旅をするショートショートを書いてください。

回答:[#8字下げ]山月記[#「山月記」は中見出し]

少年は旅に出た。彼は京都から何百里も離れた市へ向かっていた。途中で、彼は山林に入り、知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走っていた。何か身体中に力が充ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。気が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。彼は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと自分に言い聞かせた。しかし、彼は夢の中であっても、自分が虎になっていることに興奮を覚えた。彼は虎として、山々を駆け巡り、自由自在に動き回った。そして、彼は夢から覚めた。彼は自分が虎になった夢を忘れることができなかった。彼はその夢を、いつか小説に書きたいと思った。

質問:芥川龍之介『蜘蛛の糸』の文章を再現しながら、熱すぎる温泉に驚いている男性の様子を描写してください。

回答:[#8字下げ]一[#「一」は中見出し]

男性は、熱すぎる温泉に入った瞬間、思わず大きな声を上げました。彼は、まるで地獄の底にいるかのような感覚に襲われ、身体中が火照っているようでした。彼は、必死になって温泉から出ようとしましたが、足元がすくわれるような感覚に襲われ、動けなくなってしまいました。彼は、自分が地獄にいるのではないかと思いました。しかし、そこで彼は、蜘蛛の糸を思い出しました。もし彼がその糸に縋りつけば、地獄から抜け出せるかもしれないと思いました。彼は、必死になって糸を探しましたが、見つけることはできませんでした。彼は、絶望的な気持ちで、温泉に沈んでいく自分自身を想像しました。

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