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読書全般

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純文学全般の話をまとめたマガジンです。
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2021年11月の記事一覧

三島由紀夫『豊饒の海』について

今年こそは三島由紀夫『豊饒の海』を読んでいきたい。そう思っていたのだが、このシリーズはとても長い。難しいというのが本音である。 しかし、可能な限りやってみることにした。週1, 2本のペースで投稿していく予定だ。基本的には『春の雪』から順番に扱っていくことになるだろう。 感想記事に関する注意ただ、ひとつ注意点をご報告したい。『豊饒の海』を読了なさってから、記事をご覧になってくださると幸いだ。 順番に読むと申し上げたものの、文章の引用はなるべく自由にやっていきたい。たとえば

三島由紀夫『金閣寺』感想文の目次

※※見出し画像は NIPPON_MARI さまより 一年前、私は『金閣寺』の感想連載を書いていました。(十章分、完結済) しかし目次を作成していませんでした。そのため今更ながら目次をつくることにしました。今までご不便をおかけして申し訳ないです。 ルビの修正も大方は済んでいるかと思います。ですが、見逃している部分があれば、ご報告を頂けると幸いです。 連載中・完結後、記事をご覧になった皆様に、あらためて感謝申し上げます。

三島由紀夫、小松左京、村上春樹を読み比べてみたら面白いのかも。小松左京の精神性はどことなく三島由紀夫と共通したものがある気がするし、小松左京のSF的想像力・表現はどこか村上春樹に繋がっていきそうな気がします。あくまで直感でしかないので、じっくりと読み比べないとわからないのですが。

村上春樹「一人称単数」読書メモ【ネタバレ有】

村上春樹「一人称単数」の読書メモを残す。(ネタバレ有) 単行本全体ではなく「一人称単数」という短編のみを掘り下げる。断らない限り、引用先は村上春樹『一人称単数』(文芸春秋単行本第一刷)とする。 これは読書メモでしかない。論理的な整理はしない。全ての解釈が面白い・説得力のあるものになるとは限らない。あくまで実験的な読解である。最終的に感想記事としてまとめるには、適さないものも沢山ある。誤読も拡大解釈もあるだろう。 ただ、その過程を見せることで、読解の助けになれば幸いだ。

私の読書日記~大江健三郎『同時代ゲーム』→中上健次『日輪の翼』→村上春樹『海辺のカフカ』

今日は「昨日のつぶやき」の内容を少し掘り下げてみたい。 大江健三郎『同時代ゲーム』→中上健次『日輪の翼』→村上春樹『海辺のカフカ』と読んでいくと、日本の村落は段々と「帰れないもの」として認識されていくのが解りますね。『同時代ゲーム』は村の出身者が語り手となるのに、『日輪の翼』では村を追われ、『海辺のカフカ』では外から入るしかない。 大江健三郎『同時代ゲーム』『同時代ゲーム』はいわゆる書簡体小説だ。 〈谷間の村〉の出身者である男が、妹に手紙を送りつけた。圧倒的な熱量で村の

大江健三郎『同時代ゲーム』→中上健次『日輪の翼』→村上春樹『海辺のカフカ』と読んでいくと、日本の村落は段々と「帰れないもの」として認識されていくのが解りますね。『同時代ゲーム』は村の出身者が語り手となるのに、『日輪の翼』では村を追われ、『海辺のカフカ』では外から入るしかない。

アイディア集~大江健三郎→伊坂幸太郎→『進撃の巨人』で線を引いてみる。宮澤賢治『銀河鉄道の夜』の季節感

お品書きは下記の通り。2つの話題に関連性はない。それぞれ楽しんでいただければ幸いである。 〈おしながき〉 1.大江健三郎→伊坂幸太郎→『進撃の巨人』? 2.宮澤賢治『銀河鉄道の夜』をいつ読むか? 季節感をさぐる。 1.大江健三郎→伊坂幸太郎→『進撃の巨人』?大江健三郎→『進撃の巨人』という線を引いてみた。が、本当は、大江健三郎→伊坂幸太郎→『進撃の巨人』で線を引きなおした方が、現実的ではないか? そういう疑問を感じた、という話。 先日にはこんな記事を書いた。タイトルは「

小説で「歳時記」を編んでみる~春・夏編

季節ごとに読みたくなる作家や作品がある。 この意見に共感してくださる方は多いだろう。ラインナップには個人差があるかもしれないが、季節ごとに読みたい作品を一覧にしてみるのも面白い。つまりは小説をたくさん並べて、一つの「歳時記」をつくってみると楽しいだろうと思う。 🌸春に読みたい作品🌸〈梅の季節〉 三島由紀夫『春の雪』『近代能楽集』、ほか戯曲。 谷崎潤一郎『卍』『蓼食う虫』 ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』 ※『春の雪』は梅と桜の開花時期の間になりそうでしょうか。

📚大江健三郎と『進撃の巨人』

『進撃の巨人』をさかのぼっていくと、ノーベル賞作家・大江健三郎にたどり着くのではないか。これは個人的な直感である。 類似点を指摘する人もほとんど見つからなかった。共通点を見出す人もサラッと言及するのみだ。真剣に論じた人はいないだろう。 🌳大江健三郎と巨人🌳大江健三郎の作品にも、実は巨人が登場する。”知の巨人”といった比喩ではない。本当にヒトよりもサイズの大きい巨人が登場する。この点がわかりやすいのは『M/Tと森のフシギの物語』だろうか。(以下『M/T』と略す。) 『M/

📖夏目漱石『夢十夜』感想文のあとがき

読書感想文に「あとがき」が付く、というのも何かヘンな話である。 だが『夢十夜』を読む上で、心がけていたことが色々とあった。そういった工夫を紹介していきたい。それにはどうしても「あとがき」が必要なのだ。工夫の内容については、以下の通り。 1.日露戦争の話題は持ち出さない 2.なるべく本文を引用しながら 『夢十夜』感想文の目次を案内しておく。第一夜から第十夜まで一夜ごとに記事を書いてきた。まだ本編をご覧になっていない方は、こちらから読んでいただきたい。 1.日露戦争の話を

小説で「歳時記」を編んでみるというのは思いのほか、面白いです!! ”『金閣寺』は夏の季語だろう”とか、 ”『羊をめぐる冒険』は冬だろう”とか、 ”トルストイは初夏に読みたくなる”とか、 ”大江健三郎は夏の盛りのイメージがある”、だとか。 短いですが、今日はこれにて。

📚冬に読みたくなる作品⛄

もうそろそろ冬だ。 冬が近づいてい来ると、村上春樹の初期作品やドストエフスキーの小説を読みたくなる。季節によって、特定の作品を読みたくなるのだ。 ツルゲーネフ『はつ恋』今のシーズンであれば、ツルゲーネフ『はつ恋』を読むと沁みるものがある。緑が寂しくなり肌寒くなる時期に読む『はつ恋』は本当に面白い。これ以上寒くなったら、寂寥感が勝ちすぎて、かえって読むのが辛くなってしまうだろう。 二葉亭四迷や国木田独歩も、この短い秋のうちに読んでしまうのが吉なのかもしれない。 村上春樹

私の読書日記:『異邦人』と”弁護”

カミュ『異邦人』にて、多くの読者はムルソーを心理的に”弁護”させられているのではないか。今日はその説明をしていきたい。 共感も感情移入もできない……(私含め)多くの読者は、ムルソーに対して安易に共感を寄せることも、感情移入することもできない。彼の心理を理解することも難しいだろう。『異邦人』の乾いた文体が、そういった読みを拒絶しているという面もある。 また、ムルソー本人もそういった共感や感情移入を拒否している。恋人も、弁護士も、神父も、誰もが彼に心を開いていたが、彼の心理に

📖夏目漱石『夢十夜』第十夜②

この記事でひとまず決着をつけたい。夏目漱石『夢十夜』の第十夜、その感想文を書いていこう。 第十夜の出来事に関しては、前回の記事でまとめておいた。また、第十夜に登場する人物やモチーフの気になる部分についても触れた。 「ガダラの豚」の伝承について特に気になるのは、豚の大群があらわれる箇所だろう。「ガダラの豚」の伝承を思い出した方も多いのではないか。 あるいは、ブリトン・リヴィエール『ガダラの豚の奇跡』という絵画を連想された方もいらっしゃるかもしれない。 絵画の真ん中に黒い