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サラリーマンエンジニアの夢

帰路の電車に揺られながら、彼がかつて勤めていたオフィスビルが見えた。今は移転していると思う。

かなり前に取材でお伺いした、世界一のIT企業、MS社の日本法人。

その人は、自動翻訳を開発するチームのメンバーのひとりだった。

インタビューの内容は専門用語の連続で、撮影で同行していた自分には先端分野の知識は乏しく、非常に難解に感じられた。私はなかば、内容を理解すことを諦めていた。

話も終わり、最後の撮影となった際に、彼と少し雑談をする時間があった。

その男性は語ってくれた。「今の仕事が実現すれば、戦争がなくなると信じているんです。それが僕の夢です」、人は分かり合えないから争うのだと。

話が理解出来ていない自分に対する彼なりの気遣いだったのか、門外漢の私には、その言葉は鮮やかな「翻訳」となって、今でも思い出すことができる。

大きな組織で働く人は、時に理不尽に見舞われ、自身が歯車のひとつのように感じられることもあるかも知れない。

だが、チームでしか成し得ない、大きな仕事もたくさんある。

きっとあなたも、それをになっている。

少し混み始めた車内に居合わせた、名前も知らない乗客の中にも、夢や志をもって日々働く人もいるはず。そう思えば、この国もまだまだ捨てたものではないかもしれない。

何の助けにも、答えにもなっていないけれど、転職に悩む若い友人の投稿に対する、返信にかえて。



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