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猫の神様がいると言われる猫島

ある日、私と相方は愛猫の願いを叶える為、「猫島」という猫の神様が、夜になると現れて猫達を安らかにさせるという場所へ車を走らせていた。

正直、猫島なんて行かずに、今まで通り一緒に暮らしていきたいのが私達の本音だったが、愛猫の覚悟や決意の表れがテレパシーの様な方法を使って私達に訴えかけられた。それが伝わり悩んだ挙句、理解し、私達は愛猫の希望を叶えるべく猫島に連れて行く事にしたのだ。

到着すると目に映ったのは、広がる海を背に、海岬の岩壁にて沢山の猫達が佇んでいた。それはまるで、南極か北極で無数のペンギンが肩よせ合うように、猫達は岸壁に座ったり横たわったりしていた。空は曇天。海上には、カモメが飛んで鳴いていた。

私達は愛猫を家族の様に愛していたし、別れるのは本当に辛く淋しかった。前述した様に、やはり最終的には愛猫の希望を尊重し、私達は愛猫を猫島に泣く泣く離した。愛猫は私達の方を振り向きもせず、凛とした様子でゆっくり歩いて行き、岩壁の波打ちぎわで、波しぶきのギリギリかからない場所を見つけ、そこに腹這いになり手を丁寧に重ねて猫座りをし、目を瞑った。

景色はこれから雨でも降りそうなグレーなモノクロだった。覚悟を決めた愛猫は、私達の所に引き返してくる様子は微塵も感じられず、ただ波しぶきを、目を細めながら眺めていた。

しばらく私達は、それを見ていた。気が変わって戻ってきてくれるのではないか?と私は期待していた。

随分経っても何も変わらなかった。相方が「帰ろう」と私に言った。私は本当に寂しかったし、愛猫は勿論、ここに佇んでいる無数の猫達にも、何とも言えない感情が沸き立ちながら、車に乗り「猫島」を去った。

(一体なんなの?猫島って?猫の神様って何よ?)

帰宅して泣き疲れ私は眠った。目が覚めて愛猫を探す。悪い夢であってほしいと思いながら。いつもいる場所。いつも隠れる場所。お気に入りの場所。しかし愛猫の姿は見えず、あれはやっぱり現実だったのだと受け止め、また涙が溢れた。

ベッドに行っても、今まで一緒に寝ていた場所を探しても愛猫の姿は見えなかった。相方も現実逃避の様にグッスリと眠っていた。

しばらくして夜になり嵐になった。

愛猫は大丈夫だろうか?と心配になり、夜中、車を走らせて猫島に再度到着した。無数の猫達は強い雨風に濡れながらも、さっきと変わらず、飲まず食わずで腹ばいになり、目を瞑り、まるで修行僧の様に佇んでいた。

私は愛猫の名前を大きな声で呼んだ。叫んだ。しかし反応はなかった。先程、佇んでいた場所にも、愛猫の姿はなかった。

猫の神様たる存在が現れて新しく入った

その言葉が浮かんだ。それからの夢の記憶は、ない。猫の神様を夢の中で見る事も出来ず。

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私は目が覚めて愛猫を探すと、ベッドの足下でスヤスヤと眠っていた。あぁ!夢だったんだ!あぁ!良かった!と泣きそうになり、愛猫の柔らかいお腹に顔を埋めた。愛猫にさっき私が見た夢の話をすると、愛猫は分かってか分からないでか、私の鼻や頬をザラザラの舌で舐めて慰めてくれた。優しい。大好き!

あぁ!居てくれてありがとう!って、本当に思った。ずっと一緒にいてね!って、心の中で思った。

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そんな夢を見た。


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