見出し画像

【新連載】ライターなるには日記〜1990年代の経験を2020年代の若者に伝えることの是非について<表>

  いきなりの新連載である。が、その前に、新著『蹴日本紀行 47都道府県のフットボールのある風景』の話から始めることにしたい。

カバー

 実はこの本、OWL magazineの影響をかなり受けていることを、ご存じであろうか? おそらく当のOWL関係者も、この話を聞いたら「え、そうなの?」と驚くかもしれない。

 OWL magazineに寄稿を始めたのは2019年2月。本書の企画がスタートしたのは、同年11月であった。「旅とフットボール」というテーマ、テキストと写真とのマッチング、そして全体のテイスト。これらはいずれもOWL magazineで掲載した「旅の物語」がベースとなっている。『蹴日本紀行』の元となった「フットボールの白地図」」の3分の1をOWL magazineにて展開したのも、実はそうした事情があったからである。

 そんなわけで、OWL magazineには恩義がある。ゆえに今後も「旅とフットボール」をテーマにしたコラムを提供できれば、と思っていた。ところが『蹴日本紀行』での撮り下ろし取材を最後に、めっきり旅する予定がなくなってしまった。東京五輪以降、全国的に顕著となった感染拡大の影響ももちろんある。しかしそれ以上に、47都道府県の「フットボールのある風景」をコンプリートした達成感から、次の旅に出発するきっかけがなかなか掴めずにいたことも大きかった。

 旅とフットボールのストーリーが紡げないのであれば、OWL magazineで寄稿し続ける意味がない。私の役割も、そろそろ終わりかな? 何となくそう考えていた時に、編集部から思いがけない提案をいただくこととなった。

「ライターを目指す若者に向けた連載をお願いできませんか?」

 正直、この発想はなかった。なかっただけに、とてつもなく魅力的なオファーに感じられた。一方で、懸念事項が2つ。まず「旅とフットボール」のOWL magazineで、ライター志望者に向けた連載はそぐわないのではないか。そしてもうひとつ。私が「写真家・ノンフィクションライター」を名乗るようになったのは、今から24年前の1997年。当時と今との時代的なギャップは、ライターを目指す若者に戸惑いを与えるのではないか。

第1の懸念については「OWL magazineはライター育成型のメディアなので問題ありません」とのことだった。確かにOWL magazineでは、毎月のように新しい書き手がデビューしている。それだけでもすごいことなのだが、さらに驚くべきことは、主筆の中村慎太郎さんが新人の文章に推敲を重ね、何度も書き直しを命じた上でデビューさせていることだ。

 昔は、そういう編集者が普通にいた。というよりも、書き手を育てることもまた、編集者の重要な仕事のひとつであり、逆にそれができなければ「編集者失格」という価値観が当たり前に存在していたのである。編集者は単に、売れる本や雑誌を作っていればいいという話ではない。出版文化を永続させるために、次の世代を育てるための努力を惜しまないこともまた、編集者に与えられた使命であった。

画像3

【以下、OWL magazine読者のみに公開】OWL magazineでは、サッカー記事や旅記事が毎日、更新されています。Jリーグだけでなく、JFLや地域リーグ、海外のマイナーリーグまで幅広く扱っています。読んでいるだけで、旅に出たくなるような記事が盛りだくさん。すべての有料記事が読み放題になる、月額700円コースがおすすめです。

なお、宇都宮の新著『蹴日本紀行』は、徹壱堂でお買い上げいただきますと、著者サイン入りでお届けいたします。

ここから先は

1,529字 / 1画像
スポーツと旅を通じて人の繋がりが生まれ、人の繋がりによって、新たな旅が生まれていきます。旅を消費するのではなく旅によって価値を生み出していくことを目指したマガジンです。 毎月15〜20本の記事を更新しています。寄稿も随時受け付けています。

サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…

よろしければ、サポートをよろしくお願いします。いただいたサポートは、今後の取材に活用させていただきます。