あらためて「ひとりGoToトラベル」を振り返る〜岡山➢大阪➢京都篇
すったもんだの挙げ句にスタートした、政府主導によるGoToトラベルキャンペーン。その開始日は、4連休の前日である7月22日であった。ところで7月の4連休って、何の日だっただろうか? 恥ずかしながら、23日が「海の日」で24日が「スポーツの日」であることを、わりと最近になって知った。この連休は五輪イヤー限定であり、本来ならば今ごろは東京五輪開幕で日本中が祝賀ムードに溢れているはずであった。
新型コロナウイルスの蔓延により、大会は1年延期となり、期待していたインバウンドも霧散した。かくして、大打撃を受けた観光業や飲食業の需要喚起、そして地域の活性化を促すことを目的に前倒しとなったGoToトラベル。しかしながら、首都圏での感染者数増加の中での強行実施に、民意による逆風が吹き荒れることとなる。結果として東京都のみが除外対象となったのは(理屈はわかるものの)、何だかなあという感想しかない。
そして22日の夜には、日本国内の新型コロナ感染者が「過去最多(790人以上)」と報じられた。東京五輪が開幕するはずだった日だけに、このニュースはやはり堪える。そんな中、政府は「GoToトラベル!」、都知事は「4連休の外出自粛を!」。この国は果たして、どこに向かおうとしているのだろうか。そんな複雑な思いを懐きながら、今のところ「最後」となった旅について、先週に続いて振り返ることにしたい。
なお、サムネイルで使用した写真は、京都の亀岡市のマスコット「明智かめまる」をあしらったマンホールである。Jクラブがあるホームタウンのマンホールを撮影し続けたら、一冊の写真集ができるかもしれない。
米子から高速バスに乗って、岡山に到着したのは7月7日の七夕の日であった。ただし、外は生憎の雨。駅前のビルには、巨大なファジアーノ岡山のポスターが貼られてある。「交通の要衝」ゆえに「通り過ぎる街」でもあった岡山。取材でここを訪れるようになって15年が経つが、当時からは信じられないくらい、ファジは定着している。これもクラブによる、地道なホームタウン活動の賜物であろう。
試合のないシティライトスタジアムを訪れる。先月のOWL magazineでも紹介した「誰もいないスタジアム」をめぐる旅は、私の中で絶賛継続中だ。スタジアムに駆け寄るような像は、大河ドラマ『いだてん』にも登場した日本人女性初のメダリスト、人見絹枝。その近くには有森裕子の像もある。いずれも岡山が世界に送り出した、偉大な女性アスリートだ。
岡山にやってきた目的は、ファジアーノ岡山の北川真也社長へのインタビューであった。偉大なる木村正明前社長の後任に抜擢されて3年目。この人には4カ月前にも別企画でお話を伺っているが、あれからクラブを取り巻く環境は激変した。こちらの仮説が、ことごとく覆される、非常に歯ごたえの感じられるインタビューとなった。こちらは来月下旬、宇都宮徹壱WMにて掲載予定。
このコロナ禍で、リモートによるインタビューを何本もこなしてきたが、やはりリアルでないと得られないものは、いくらいでもある。その当たり前すぎる実感が得られただけでも、岡山に来た甲斐があった。夜はファジで働く友人たちと会食。岡山名物の「えびめし」を初めていただく。ソースで炒めたライスに、目玉焼きとエビが載っているのが特徴。
7月8日、岡山から大阪に移動。心斎橋のホテルで荷を下ろし、地下鉄御堂筋線と大阪モノレールに乗って万博公園に向かう。ここを訪れるのは1年ぶり。ちょうど元号が平成から令和に変わった日で、観光客は太陽の塔をバックに楽しそうに記念撮影していた。今にして思えば、実に無邪気な日々であった。
万博記念公園駅で、J1史上最多となる632試合出場を達成したばかり、ガンバ大阪の遠藤保仁が迎えてくれた。4日前のセレッソ大阪とのダービーで、スタメン出場。大記録達成でも、いつもどおりの飄々としたプレーを見せていた。惜しむらくは、この試合はリモートマッチであったため、後半9分で退く時に拍手や歓声がなかったことである。
駅から降りて、徒歩でパナソニックスタジアム吹田を目指す。行政と地元企業を巻き込んでの専スタ建設は、ガンバのサポーターのみならず、他サポも注目する中で2016年にオープンした。あれから4年が経過し、スタジアムはすっかり万博公園の風景に溶け込んでいる。今日はここでの試合はないので、すれ違う人の数はまばらだ。
制限付きの入場者を迎えて、パナスタで試合が行われるのは7月18日。まだ10日も先である。入り口に通じる階段は、至るところに「立ち入り禁止」の表示が貼られてあった。ピッチに通じるゲートを覗いてみると、何かが動いた。目を凝らすと、どうやら猫のようである。ここに住みついているのだろうか。
その日の夜はヤンマースタジアム長居で開催された、セレッソ大阪vs清水エスパルスのゲームを取材。雨上がりの中で行われた試合は、奥埜博亮と片山瑛一のゴールでセレッソが2−0で勝利した。試合中、サポーターの声援を録音したものが、BGMとして使用されていたのが印象的。試合の展開に応じて、それぞれの選手コールが流れていたことに、スタッフのこだわりと苦心が感じられる。
もうひとつ感心したのが、セレッソの勝利を祝うファンの映像が、リアルタイムで大型スクリーンに映し出されたことだ。スタンドには、ファンやサポーターの姿はない。しかし彼ら彼女らの思いは、確実に選手たちに届いている。「リモート応援がある風景」を目撃できただけでも、この試合をチョイスして正解であった。
試合後、メディア受付に立ち寄ってプレスカードを返却する。クラブスタッフは、もちろんマスク着用。飛沫防止のためのビニールシートで、相手の顔が少し歪んで見える。そんな状況にあっても、笑顔で「お疲れさまでした」と声をかけられると、とても救われた気分になる。あと1カ月も経てば、こうした光景も見慣れたものになるのだろうか。
少し遅い夕食は、大阪名物の串揚げ。ソースがたっぷり入った容器に浸していただくのだが、二度漬けは厳禁である。もっとも今般のコロナ禍で、ボトル入りのソースに切り替えている店が続出しているとのこと。私が訪れた庶民的なお店は、オーソドックスなスタイルを貫いていた。食べて飲んで、3300円。
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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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