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ウィズ・コロナを想いつつ「誰もいないスタジアム」をめぐる旅〜町田➢横浜➢川崎篇

 6月になった。先月25日に政府による緊急事態宣言が解除され、4日後の29日にはJリーグが再開(J3は開幕)の日程を発表した。ワールドカップ・アジア2次予選についても、10月と11月に2試合ずつ開催されることが決定。ヨーロッパのリーグもドイツに続いて次々と再開され、ようやく世界のサッカー界が動き出したことを実感する。ただし「ウィズ・コロナ」という条件付きではあるが。

「旅とフットボール」をテーゼとするOWL Magazineも、新たな節目を迎えたように感じる。何しろ3月以降、地球規模でスポーツの灯火が消え、移動が厳しく禁じられていたのだ。その間、どうやって旅とフットボールの物語を紡いでいけばよいのか。私自身、いろいろと試行錯誤を続けながら、何とか3カ月の間に6本のコラムを書き上げることができた。達成感もあった一方、最近は新たな課題に直面していることを強く実感している。

 それは何かといえば、移動のリハビリ。何しろずっと自宅に蟄居していたのだ。最後にリアルでインタビュー取材をしたのは、緊急事態宣言が全国に拡大する2日前の4月15日。それから4週間もの間、私は一度も電車に乗車することなく、行動範囲も交友範囲も極めて限られたものとなってしまった。かつてワールドカップの取材で、ブラジルや南アフリカまで飛んでいたことが、さながら前世の記憶のようにさえ感じられる。

 すっかり萎えてしまった旅の感覚を取り戻すには、Jリーグが再開される前に、移動のリハビリをすることが何より必要だ。そこで思いついたのが、試合が行われていない首都圏のスタジアムを訪れ、現地の「今」を写真に収めることである。一見、無意味にも思えるこのアイデアを、なぜ思いついたのか。それについては次回、あらためて触れることにする。今回は、OWL Magazineの愉快な仲間たちとの「小さな旅」の顛末をお届けしよう。

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 リハビリの実施日となったのは6月6日の土曜日。京王線の下高井戸駅で、OWLの広報兼宴会部長、大澤明日香さんと落ち合う。家族以外とリアルで話をするには、いつ以来だろか。ミーティングポイントにて、タクシードライバーになって3カ月のOWL主筆、中村慎太郎さんの車に乗り込んで、いざ出発!

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 今回のルートは、FC町田ゼルビアの町田GIONスタジアム(通称、野津田)、横浜FCのニッパツ三ツ沢球技場、そして川崎フロンターレの等々力陸上競技場である。その前に、野津田の近くにあるゼルビア✕キッチンに立ち寄って、ランチをいただくことにする。幸い、お店は6月1日から営業再開していた。

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 ゼルビア✕キッチンは、トップチームから育成年代までの栄養補給と食育、そして地域住民との交流の場として2015年にオープンした。管理栄養士の監修によるメニューは、栄養のバランスが取れている上にコストパフォーマンスも抜群。明日香さんがオーダーした「日替わり栄養アシスト定食」は、このメニューの豊富さで900円!

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 久々に訪れたゼルビア✕キッチンは、味のクオリティがまったく変わっていなくて少し安心。とはいえ、緊急事態宣言の間は一時閉店を余儀なくされ、先月はドライブスルー形式のテイクアウトでしのいでいたそうだ。店内が空いていたこともあり、われわれもソーシャルディスタンスを保ちながら食事をすることに。

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 15時前に、野津田に到着。今回訪れるスタジアムの中では、とりわけアクセスが容易でないだけに、慎太郎さんが快く車を出してくれて本当に助かった。ホームゲームがある日は、スタグルの店舗がずらりと並ぶ広場は、当然のことながら閑散としている。地元の子供たちが、スケードボードに興じていた。

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 到着してまず視界に入ってきたのが、改修工事中のバックスタンド。鉄筋コンクリート3階建ての屋根付きで、完成すればプラス5000人の収容人数となり、J1基準を満たすこととなる。昨年の秋から始まった工事は、来シーズン開幕までに終了する予定。どんな仕上がりとなるのか、楽しみに待つこととしたい。

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 公園内にあるためか、野津田は清掃や管理が行き届いている印象を受ける(1週間前に訪れた味の素スタジアムは、雑草が伸び放題の場所が点在していた)。しかしながら、デカデカと書かれた「閉鎖」の二文字を目の当たりにすると、やはり厳しい現実を認識せざるを得ない。遠くで新型コロナに関する、行政による市民向けアナウンスが聞こえてくる。

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 町田から横浜へ移動。慎太郎さんと明日香さんが「OWLのこれから」について語り合っている間、不覚にも睡魔に襲われてしまい、こっくりこっくり船を漕いてしまう。そうこうしているうちに、車は神奈川県へ。ついに県境を超えてしまったことに、えも言えぬ感慨を覚える。三ツ沢に到着したのは16時。テニスコートの向こう側にスタジアムの照明塔が見える。

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 ニッパツを訪れたのは、昨年8月以来のこと。バックスタンドの向こう側にあった古河電工の社宅を取り壊していて、新たに横浜市立市民病院が建設されるところであった。あの時は「ナイトゲームもあるスタジアムのすぐそばに、こんなに大きな病院を作って大丈夫なのだろうか?」と思ったものだったが──。

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 あれから10カ月。完成した病院が、想像以上に存在感を発揮しているため、むしろニッパツのほうが「添え物」っぽく感じられてしまう。13年ぶりのJ1昇格を果たした横浜FCだが、ホームゲームを開催する前にJリーグは中断。地元のファンやサポーターは、さぞかし無念の思いであろう。

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 それでも、スタジアムからコロナ禍のネガティブな余韻が感じられないのは、オープンから65年にわたる重厚な歴史ゆえであろうか。気がつけば、明日香さんは応援するフロンターレのレプリカに着替えていた。そして慎太郎さんは、初めてワールドカップを観戦したブラジル大会のときの日本代表ユニフォーム。いよいよ最後の目的地である等々力を目指す。

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 等々力到着は18時。この時間帯、東京は土砂降りに見舞われていたが、幸いにして天気は持ちこたえてくれた。ここを訪れるのは、2月のルヴァンカップ以来という明日香さんは、感慨深げにスタジアムを撮影。シャッターのサビは元からあったと思われるが、中断期間中に見ると際立って痛々しく映る。

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 川崎は人気クラブゆえに、取材で訪れる時は人をかきわけかきわけ、ようやくメディア受付にたどり着くという感じだった。あらためて観察してみると、いかに自分がこのスタジアムのことに無知だったのか、思い知らされる。バックスタンドの外壁に飾られた、クラブ歴代の集合写真の存在も、この時に初めて知った。

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「GB」とはグレートブリテン(英国)のこと。2020年の東京オリパラで、川崎市が英国のキャンプ地になっていたことも、私は知らなかった。このコロナ禍がなければ、当地はフロンターレだけでなく、英国の選手団の受け入れでも盛り上がっていたことだろう。失われたものの大きさを、あらためて噛みしめる。

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