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電界怪異図鑑:【天井のエシコさん】

天井のエシコさん

幽霊:怨霊
恐怖レベル: ★★★★★★★☆

「天井のエシコさん」は、昔から日本各地の古民家や廃墟で目撃されると言われる恐ろしい存在です。
彼女の特徴は、長く伸びる白い手、それから面のようにのっぺりした顔と冷たく虚ろな目。エシコさんが狙った獲物は、天井から急に伸びてきたその手に頭を掴まれ、天井裏へと連れ去られてしまいます。被害者の遺体は今のところ見つかっていませんが、帰ってきた人もいないでそうです。

ただ、助かる方法も見つかっています。
頭を掴まれても暴れずに「逆さまのお辞儀」を三回続けて行うと、エシコさんはその人を解放してくれると言われています。逆さまのお辞儀とは、首を下げるのではなく、下から上に上げる意識で動かすことです。
これは、古い日本の礼儀としてのお辞儀を逆さに行うことで、エシコさんの抱える恨みに敬意を示し、彼女の心を鎮めるとされています。

天井のエシコさんという名前は、実のところしばらく前の都市伝説ブームの際に付けられたもので、由来は古い文献に記された「枝子」という名前の怨霊に関連していることがわかっています。エシコさんは古くから日本の民家に潜んでいたようですが、その正確な起源や背景は明らかになっていません。

『現代妖怪譚』に描かれる枝子

ただ、エシコさんに関する伝承や文献は、江戸時代の『奇妙異聞集』や、昭和初期の『現代妖怪譚』などに記録が残っています。特に『現代妖怪譚』には、「枝子」を鎮めようとした神社の神主「月山 仁義」との伝承や、彼女を一時期封印していたとされる古い絵馬の存在が記されています。

ちなみに、絵馬には月山が鎮魂のために詠んだとされる和歌がありました。それは次の通りです。

雲の間
空へと昇り
蓋の下
隠れ住む魂
穏やかにせん

こうして手厚く祀られていたはずのエシコさんの封印が、なぜ解けてしまったのかは不明です。ただ、絵馬の記録がほとんど残っていないことから、封印されていた期間はごく短い間だったと考えられています。

最近の目撃情報によると、岩手県の一部地域で頻繁に目撃されており、特に旧家や古びた建物の近くでの出現が多いとのこと。エシコさんを目撃した者は、彼女の独特な鳴き声や、天井からぶら下がるその姿を忘れることはできないと語っています。
古い屋根の下を歩くときには、どうか天井に気をつけてください。

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