コンサル9社のCOVID-19レポートを横比較してみる
緊急事態宣言が解除された週末、シリコンバレーに詳しいベンチャーキャピタリスト、日焼けで全身真っ黒の経営者、50近くになり法律を学びなおしている敏腕コンサルタントを交えてzoom飲みをしておりました。そのときに盛り上がったのが、こんな話。
「コンサル業界は、結構活況らしいよ」
「そういえば、各社COVID-19に関するレポート出してるよね」
「これって、コンサル各社の強みや特徴を分析するのに最適じゃね?」
「確かに、コンサル発注するときとか、シューカツに使えるかも!?」
で、翌日にさっそく全身真っ黒の経営者が、自宅のベランダでさらに日焼けしながらリンク集を作ってくれました。
各社のレポートリンク集
アクセンチュア
https://www.accenture.com/jp-ja/about/company/coronavirus-business-economic-impact
BCG
https://www.bcg.com/ja-jp/featured-insights/coronavirus.aspx
ドリームインキュベーター
https://www.dreamincubator.co.jp/wp-content/uploads/2020/05/topics-200520-DI-Report-pkg.pdf
IBM
https://www.ibm.com/jp-ja/impact/covid-19
マッキンゼー
https://www.mckinsey.com/jp/our-insights
野村総合研究所
https://www.nri.com/jp/keyword/proposal
PwC
https://www.pwc.com/jp/ja/services/geopoliticalrisk/coronavirus.html
横比較の進め方
で、横比較をしてみることにしたのですが、当然各社の体裁やレポートしてる内容はバラバラなわけです。できるだけ客観的に比較するべく、こんなルールを設定してから、読み始めることにしました。
■ 評価のポイントは、以下の4つとして、それぞれ5点満点で点数をつける
・COVID-19に対する、会社から読み手へのメッセージが明確か?
・独創性のある切り口・分析があるか?
・クライアント企業向けの、具体的な提案があるか?
・自社ビジネスを越えて、日本社会に貢献しようとする姿勢が見られるか?
■ 以下のステップでレポートを選んで流し読み
・COVID-19についての総括的なレポートがあれば、それを読む
・ない場合は、それに近しいマクロ視点でのレポートを探して読む
・上記に加え、リンク集から1~2つ個別レポートを適当にピックアップして読む
というわけなので、各社の全レポートを隈なく読んで分析したわけではないですし、ましてや各レポートの内容の正確性も正直わかりません。まあ勝手比較ということをご了承ください(言い訳終わり)。あと、僕の前職含めて、コンサル会社内部の方からの情報はまったく得てないです、はい。
では、寺田の独断と偏見によるトップ3レポートをご紹介したいと思います(カギかっこ内は、寺田が勝手に感じたコンサル会社からのメッセージです)。
第3位:ドリームインキュベーター
「こんなときこそ、変化を捉えて新しいビジネス作ろうぜ」
事業開発に強いDIさんらしい産業視点に沿ったいいレポートです。産業別の変化仮説もいいのですが、その冒頭4ページの名目GDP×時価総額下落率の分析は、シンプルながら分かりやすく、これだけで小一時間は語れそうです。
こちらのP12をぜひ
https://www.dreamincubator.co.jp/wp-content/uploads/2020/05/topics-200520-DI-Report-pkg.pdf
後半の5つの産業、3つの企業内機能の変化仮説もシンプルにまとまっております。ここから事業開発しようとすると、もう2歩、3歩と思考を深めなければいけないのでしょうが、そこはコンサルをお願いしてからですかね。
第2位:ローランベルガー
「うちの得意な産業のトレンドは見えてきたので、声かけてな」
メインレポートは、マクロ経済へのインパクトを分析。2008年のリーマンショック前後の定量データを持ち込み、各産業ごとに(定性的ながらも)インパクトの大きさ、回復前の期間を述べているのは、当時を知っている経営者にとってはイメージがわきやすそう。
こちらのP16~17をぜひ
https://rolandberger.tokyo/rolandberger-asset/uploads/2020/04/RB-COVID19-impact-and-economic-implications_JP.pdf
ローランベルガーがいいのは、このマクロ分析だけに留まらず、産業ごとに骨太のレポートも出しているところ。例えば「移動」というテーマだとこちら。
新型コロナウイルス 移動のあり方はどう変わるか
https://rolandberger.tokyo/rolandberger-asset/uploads/2020/05/RB-COVID-19-STUDY_Mobility_summary.pdf
移動、アパレル、ヘルスケア、リスクマネジメントなどについて、東京オフィスのコンサルタントの執筆により、きっちりとまとまったレポートを取りまとめています。当然テーマ数は限られてはしまうものの、当該産業の関係者なら声をかけたくなりますねー。随時新しいレポートが出そうなので、このページは適宜チェックしてみたいところ。
https://rolandberger.tokyo/news/
第1位:マッキンゼー
「地域や組織ごとに職場復帰するために、ちゃんと司令塔作って、丁寧にやろうぜ」
マッキンゼーの特設サイトに飛ぶと、まとまったレポートが1本だけ、しかも日本語版は4/13版なので最初がっかり。しかたなく、5/6の英語版を読み進めることに。冒頭にCOVID-19の感染状況、各国の取り組み等を確実に押さえ、その上でマクロ経済について9つのシナリオを提示。で、着実に手を打っていこうよねー、ということで本編おわり。
ここまでだと何だかなー、という感じだったのですが、後ろの参考資料が意外と丁寧。AACTというフレームワークに沿って、コロナ対策の司令塔を作っていこうと提言。ポストコロナのビジネス環境にAdaptして、セグメントごとの労働力シフトをAccelerateして、安全に配慮したオペレーションをCraftして、地域ごとの事情みながらTime管理しながら経営しよう、という提案がどどーんと。
概念的な話も多いのですが、例えばCraftという項目をみると、従業員にどう職場に戻ってもらうにあたって工場やオフィスでのソーシャルディスタンスや消毒をどうするかのレファレンスをイラストで例示していたりもします(P51-54あたり)。
この経営トップ向けに全体感をもったレポートを公開できるのはさすがとしかいいようがないです。僕が経営トップなら、マッキンゼーさん全部お願い、って言いたくなりますよねー。まあ実際は、お財布の事情で、全部お願いできる企業は限られてしまうのでしょうが。
横比較で見えてきたコンサルの選び方
残り6社も読んでいるのですが、個別の話よりもむしろ今回横比較してきて見えてきた違いを整理しておきたいと思います。そこから、皆さんが仕事やシューカツでコンサル会社を選ぶときに役立ちそうな視点も提示したいと思います。
■ 日本独自コンテンツか、グローバルサイトの翻訳か?
さすがに外資コンサル系は、各国比較などの分析は充実しています。タイトルだけ翻訳して、英文サイトに飛ばされる場合もありますが、それでも海外での具体的な事例や実態を知りたい場合は、やはり彼らにまずコンタクトしてみたくなります。
実務上で重要なのは、実際に記事やレポートを執筆した著者と直接コンタクトしたり、電話会議の時間をとってもらえるかどうかをきちんと見定めることです。東京オフィスに問い合わせをしたら、日本人コンサルタントが出てきて、中身をまったく分かっておらず、要領を得ないケースがままあったりします。
シューカツ視点だと、各社のレポートの著者チームの所属や役職を見るといいかもしれません。英文レポートに日本人が結構入っているのであれば、グローバルチームで働く機会が開けていそう。また、肩書が低め(コンサル会社の役職はこのあたりを参考に)の人も著者チームに入っているようであれば、比較的若い段階から大きな責任を任せてもらえやすそうです。
■ コアレポートがあるか、リンク集か?
今回のように全社的な課題に取り組む際は、経営者としてはまず全体感をつかんだ上で、リーダーシップをもって自社の方向性を打ち出したいものです。
コンサル会社も同じで、まず全体感を示すコアレポートがあり、その後に具体レポートを提示できているコンサル会社は、まさしくリーダーシップがあり、グローバル企業の経営トップと話せていることの一証左といえるでしょう。個別各論では経営トップの時間は取れないですからね。
一方で、リンク集になっているコンサル会社は、現場に情報発信を任せられるぐらい、現場に専門性がある可能性が高いです。ですので、執行役員・部長級の方がコンサルをお願いすると、現場の気持ちもわかっていて、うまく嵌るケースがよくあります。ただ、こういう「できる」コンサルタントは一匹狼かつ売れっ子なので、発注する場合は、その本人の時間を確保できるかどうかをきちんと確認することが重要です。
シューカツ視点では、リンク集の会社のほうが、入社してから専門性を磨いて、現場発で情報発信できる機会に恵まれやすいです。ただし、裏返せば個人商店の集まりなので、経営コンサルといいながら経営者と仕事をする機会にまったく恵まれなかったり、チームとして大きな経営課題に取り組むような案件が少なかったりしがちです。
■ 明確な強みを押し出しているかか、バラバラか?
コンサル会社によっては、自社の強みを前面に押し出してアピールしていたりします。例えば、PwCだとグローバルのCFOに対して隔週でアンケートを取っていて、財務ならお任せといった感じがします。IBMは、研究開発者やソフトウェアエンジニアに向けての取り組みを明確に打ち出しています。
コンサルを頼む視点でも、シューカツ視点でも、こちらの期待とコンサル会社の強みがマッチしているといい結果につながりやすいかと。案件が多い→機会に恵まれる→経験値の蓄積される→いい成果が出る→案件が増える→採用も増える、というフィードバックが生まれます。
ただ、あまりに急成長が過ぎると、入社したてのコンサルタントが先輩の資料をもって現場に突撃、というケースが多発します。こういった状態に入ると、コンサルとしてのパフォーマンスが出ず、人がどんどん入れ替わる、という悪循環に入ります。このあたりの実情は、そのコンサル会社の退職者などを見つけて、最新情報を仕入れておくことで対処しましょう。
コンサルとハサミは使いよう
スピードが求められる環境において、社内のリソースだけでは間に合わず、コンサル会社を頼むことも多いと思います(だから、いまも活況なのでしょう)。とはいえ、全ての分野に強い、なんでもできるコンサル会社は、(当人はそういうかもしれませんが)基本的に存在しませんし、一社に依存するといろんなリスクも抱えてしまいます。
これからのWith COVID-19の世界を生き抜くためにも、コンサル会社とうまく付き合い、具体的な成果につなげるノウハウを、改めて身につけていきたいものです。それには、コンサル会社と実際につきあってみることが近道なので、こういったレポートをきっかけにして、ピンときたコンサルタントに連絡してみてはどうでしょうか。
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