
暗黒メモ「この世はでっかい老人ホーム」
つい先日、SNSで大きな波紋を呼んでいた一本の動画がある。
混雑する電車内で泣く赤ちゃんとその親に対して、居合わせたひとりの高齢男性が「うるさいんだよ!」「あんたみたいに甘やかしているだけの人はね、日本をダメにするんだ!」「躾けるのが当たり前だろ!」と激昂し、周囲の人も巻き込んで口論となっている一部始終が撮影されたものだ。
これがペケッターランド上ですさまじい勢いで拡散され、ついにはネットニュースにもなっていた。
「うるさいよ!黙りなさい!」――。
高齢男性が電車内で激高する動画(現在は削除済み)がX(ツイッター)に掲載され、物議を醸している。
投稿者によると、男性は駅員と警察に引き渡された。取材に応じたJR東日本担当者は、「警察を呼んだのは間違いない」と明かす。
11月1日に取材に応じた投稿者によると、注目を集めた動画は、10月下旬の夜、関東エリアの電車内で撮影された。
ぐずり出した息子を投稿者夫婦があやしていたところ、対角線上の優先席に座っていた男性が「うるさいよ!黙りなさい!」と杖を叩きつけながら叱咤してきたという。
投稿者一家は、ドア付近に立っていた。男性との距離感について「普通の会話は聞こえませんが、怒鳴り声や泣き声はお互いに聞こえる範囲内だと思います」とした。
息子は、断続的に泣いたり泣き止んだりを繰り返していた。注意された際は、1駅分、3~4分程度連続でぐずっていたと振り返る。「抱っこもオモチャも拒否されて少し手こずっていました」と話す。
https://www.j-cast.com/2023/11/08472568.htm
この動画を閲覧したペケッターランドの人びとは憤りをあらわにして「日本をダメにしたのはお前みたいなジジイだろ」とか「ちゃんと警察に引き渡されたのを知れてよかった」といった声が集まっていた。
私自身も大元の動画がバズったその当時に確認したのだが、赤ちゃんが泣いてしまうのは赤ちゃんなんだから当然だろうし、親だって別に泣き止ませようと努力していないわけでもない。いくらなんでも爺さんの無茶苦茶な言いがかりにしか見えなかった。頑として自分の主張の正当性を曲げない爺さんが大立ち回りを演じる車内の緊迫感は相当なものだったはずだ。明らかにお叱りを受けてしまうタイプの典型的な「老害」のように見えてしまったため、ネット民から非難囂囂だったのは想像に難くない。
……とはいえ、率直な感想を言わせてもらうと、今回の動画を含めSNSで定期的に盛り上がるこの手の論調には、個人的にはあまり乗れないでいる。
なぜなら、SNSで迷惑老人の動画やエピソードがシェアされるたびに盛り上がる「キレる迷惑老人」「若いころから狂暴だった団塊世代の高齢化」などといった物語は(そうした記述の説得力や共感性があまりにも高すぎることもあって)背後にある本当の論点を見えにくくしてしまうからだ。
ではSNSをしばしば賑わせるこうした「迷惑老人」の光景が私たちに伝えている本当のメッセージとはなにか? それはすなわち――
ここから先は

白饅頭日誌(月額課金マガジン)
月額購読マガジンです。コラムが定期更新されます。その他に、「白饅頭note(本編・毎月2回更新・単品購入の場合1本300円)」の2018年…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?