#565 真正な評価のススメ
私たちは大人になるまで、一体いくつのテストを受けてきたのか?
学校で行われるテストが繰り返されることで、私たちはテスト漬けにされ、学校的評価観に毒されてしまっている。
「誰よりも早く終わらせる」
「誰よりも高い点数をとる」
「テスト範囲さえ、勉強すればいい」
「選択式だから、あてずっぽうでも当たるかも」
などなど・・・。
このような考え方に毒されているのは、選択式や穴埋め式の標準テストをこれまで何回も受けてきたからである。
このような標準テストでは、「未来社会を担う人材」を育成することは不可能である。
これからはVUCAの時代であり、断片的で客観的な知識を知っていても意味がないからである。
調べればわかるような知識をもつよりも、知識を活用し、問題解決ができる人材が必要なのである。
それならば、標準テストばかりするような評価観を改革していかなければならない。
これからは「真正な評価」が必要なのである。
真正な評価とは、選択式や穴埋め式のような標準テストではなく、「ポートフォリオ評価」や「パフォーマンス評価」を指す。
このような評価を導入する必要がある。
理由は「学びの質」や「評価への参加」を保障できるからである。
まず、「学びの質」について。
選択式や穴埋め式の標準テストは、単元の一番最後に実施される。
内容は子どもに公開されず、秘密にされる。
そして、断片的な知識を問われ、いかに暗記できたかが重要となる。
このような評価法では、「知識を暗記すること」が目的となってしまう。
つまり「はじめに獲得すべき知識ありき」で学ぶことになる。
しかも、テストには何の文脈も状況もないので、実生活に生かすことはできず、「テストをして終わり」となってしまう。
これでは、質の高い学びは実現しないだろう。
一方、「真正な評価」の代表である「パフォーマンス評価」を導入してみる。
この場合、単元のはじめに「パフォーマンス課題」が公開される。
それは、実生活に関係するリアルな課題であり、状況や文脈が設定されている。
子どもが解きたくなるような魅力的な課題である。
そこからスタートすることで、子どもはその課題を解くためには必要な知識を考えたり、得ようとしたり、探したりすることになる。
つまり、標準テストの場合と比べ、順番が逆なのである。
「はじめに解きたい課題ありき」であり、そのために知識を必要とするのである。
まさに「なすことによって学ぶ」スタイルである。
そしてそのような課題は、実生活や学際的な問題に関連するため、学びの質が高い。
課題を解くこと自体が、学びの一部となる。
つまり、パフォーマンス課題自体がカリキュラムの一部となるのだ。
その課題を解くことで、実生活やこれからの人生に生かすことができるのである。
これが「真正の評価」が可能にする、「学びの質」の保障である。
次に「評価への参加」について。
標準テストで評価する場合、教師が「評価する側」、子どもが「評価される側」と明確な区別がされてしまう。
これでは受け身の態度を身に付け、「テストを受けて終わり」という状態にさせてしまう。
しかし、「真正な評価」を導入することで、評価に子どもを参加させることができる。
つまり、ステークホルダーを広げることができる。
それを可能にするのが、「ルーブリックの共同開発」である。
ルーブリックとは、子どものパフォーマンスやポートフォリオを評価する際の評価基準(スタンダード)である。
このルーブリックの観点やレベルを、教師と子どもが共同で設定していく。
これが「評価への参加」を保障するのである。
なぜ、こんなことができるのか?
それは「真正な評価」における課題には、「正解がない」からである。
選択式や穴埋め式の標準テストには、正解が存在する。
正解か不正解しか基準がない。
なので、教師が基準を設定せざるを得ない。
一方、「真正な評価」における課題には正解がないので、基準を複数人で考える余地がある。
その際に、教師だけではなく、学習の主体である子どもに参加させることで、子どもに「当事者意識」をもたせることができる。
ルーブリックの内容を子どもも理解できるので、自分の学びを自己評価したり、学習改善を図ったりすることができる。
教師は子どもの学びを見て、授業改善を図ることができる。
つまり、教師と子どもが「形成的評価」を実現することができるのだ。
また、「真正な評価」に対してルーブリックを設定することは、評価の「信頼性」と「妥当性」という相矛盾する関係を克服する役目もある。
※標準テストは信頼性が高いが、より高次な能力を測るという妥当性は低い。対して、真正な評価は妥当性が高いが、採点者の主観によるので信頼性が低い。そこにルーブリックを設定することで、信頼性を克服できる。
このように「真正な評価」は、標準テストのもつ弱点を補完し、「学びの質」や「評価への参加」を保障することができる。
これからアクティブラーニングがますます深まりを見せていく時代、「真正な評価」はなくてはならない評価法であると考える。
ぜひ導入していきたい。
では。
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