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サンダーボルト【酒呑童子】

昔、南蛮の男が、日本の小さな集落に漂着した。

集落の者達は、南蛮の男の肌が大変白く血の色が際立って見える事や、自分達の言葉が通じない事、色の抜けた金髪を見て、やれ奇怪なりと、やれ妖怪の類いなりと口を揃え、青天の霹靂となった。

一人の物書きは南蛮の男の鼻がそれはそれは太く高いもので、それを天狗と名付け書にしたためた。

ある者は、南蛮の男が酒が大の好物で、呑めば忽ちその身が赤く火照り鬼の様だと言った。
まるで人の言葉も通じぬ鬼の童が馬鹿の一つ覚えの様に酒を飲む。
酒呑み童子、シュテンドウジと名付け書にしたためた。

南蛮の男はそれから、その集落で村の者と幾月か過ごしたのだが、ある日を境にぱったりと姿を眩ませてしまった。集落の食料も金も少しばかり盗まれ、村の子供も一人攫われていた。
集落の者たちは心配し、南蛮の男を探したが結局見つける事は出来なかった。

後に名のある都にて、一人の盗人のキリシタンが処刑されたとの話が流れるが、それが南蛮の男かどうかは知れぬままだった。

それより年月経ちし先の世にて
子供を隠す天狗の言い伝えと、村の金塊を盗む酒呑み童子の言い伝えが其々派生して一部の者の耳に届く様になった。

・歌川国芳【酒呑童子退治の図】

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