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なぞの社内研修

こんにちは、本多です。お寺の住職、大学での教鞭、それからテラエナジーの創業メンバーとして取締役をつとめています。私は小学校のとき、アメリカに住んでました。帰国子女、つまりリターニー。海外に行くことも多いのですが、日本から脱出できてノビノビできる喜びと、一方で自分の故郷はどこかなのか…嬉しさと喪失感に板ばさみになります。これまでの人生、自分なりに楽しくも、葛藤をかかえながら歩んできました。このnoteでは、そんな葛藤をできるだけ素直に言葉化しながら、自分自身が大切にしたいこと、それから経験から得られた気付きを書こうと思います。ゆっくりしたときに読んでもらえたらうれしいです

おさとりタイム

テラエナジーは電気を売っている会社である。

多くの会社がやっているように、当社にも研修やワークがある(ここ1年コロナの影響でまともな研修はできていないが…)。

そこでは、気候変動問題についての研修であったり、自死自殺の電話相談のワークを受けることもある。また、社員は一週間に半日「おさとりタイム」といって、自分の生き方を見つめる自由な時間を設けている。その時間は読書したり、公園を歩いたり、「さとり」の心境に身を置いてもらうのだ。

研修やワークを経て、実生活に変化が生じる社員もいる。それまで牛乳を飲んでいたのを豆乳にかえたり、リモートを活用して移動の機会を減らした人もいる。牛乳を豆乳にした社員は、牛を育てるのに大量の二酸化炭素を放出することを知って豆乳にしたという。リモートを中心にシフトした社員は、日々の通勤ストレスが軽減したと思う。

僕も研修やワークに参加してからは私生活にいろいろと変化があった。生ごみを使った家庭菜園をはじめたり、食料品の生産地や添加物などをチェックするようになったり、人への接し方が変化した気もする。

電気を売りながらも、それだけでは充分ではないという思いがどこからか芽生えてきた。社員や僕に生じた変化とは、自分にとっても、相手にとっても、他の人にとっても、また未来にとってもよいと思えるから、そうし出したのだと思う。

「うつわ」を育てる

ところで、最近『「利他」とは何か』(集英社新書、2021年)を読んだ。

政治学者の中島岳志さんの文法を題材にした文章を読みながら「あぁ、なるほど」と思うことがあった。日本語の「私は思う」と「私には思える」の2つは、英語にすると同じ訳語「I think」になる。ところが、この2つの日本語の意図するところはちがう。前者は、私という主体から思いが発露しているのに対して、後者は自分のなかに特定の思いがとどまっている、といった受け止めになる。つまり、前者は私が思いの主人公であり責任者であるのに対し、後者は特定の思いの「うつわ」として私がいるということになる。「うつわ」に余裕がなければ、思いは素通りする。

「うつわ」ということで、解剖学者の養老孟子さんが講演会で面白いことを言っているのをユーチューブで見た。「教育で伝えることができるのは、その人の「うつわ」だけですよ」。たしかに、これまで何万回と授業を受けてきたが、先生が言ったことはほとんど忘れてしまった。ところが、先生の人柄つまり「うつわ」だけは漠然と、しかしちゃんと記憶している。そう思うと、教育をとおして先生の「うつわ」を受け取ってきた気がする。

ちなみに『「利他」とは何か』の中で、美学者の伊藤亜紗さんは「利他とは「うつわ」のようなものではないか」と述べている。相手が入り込める状態であり、自分が変われる可能性でもあるという。「うつわ」を育てる意義を感じる。

中島さん、養老さん、伊藤さんがいうところは共通する。頭から得られた情報よりも、体やワークなど、生身の人間をとおしてえた納得のほうが、はるかに持続的で影響力が長く続くということだ。

体で納得すると、持続可能

技術が発達したことで仕事の多くは、文字と数列の確認、またボタンの押し間違いの精度を争そうものになってきた。それが人間関係にまでひろがりつつある。ただ、人間には「からだ」という生身がある。

そこのところにアクセスするのが研修やワークだろう。

仏教の修行も似ている。頭に詰め込むことよりも、体で感得するところのほうがあきらかに大きい。「ただ、座る」「ただ、聞く」「ただ、念じる」…体をとおして得た気づきは、生活に影響するし、体で納得したことで長続きもする。何より、その人の「うつわ」を育てる。

そう考えると、テラエナジーでのなぞめいた研修やワークも、会社の売り上げに直接関わる能力の向上ではないことから的外れに見えて、実は、長期的にはけっこう意味のあることだと思えてくる。

繰り返すが、テラエナジーは電気を売っている会社である。

経営状況は楽観できないが、それでも個々の「うつわ」に寄与する研修やワークは大事だし、またこうした活動が広まればいいなと思っている。

本多 真成(ほんだ しんじょう)
1979年生まれ。大阪八尾市の恵光寺住職(浄土真宗本願寺派)。龍谷大学大学院を修了し、私立大学の客員教授をつとめる。院生時代は「環境問題と仏教」の思想史研究。専門は宗教学。TERAEnergy取締役。

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