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Kenny "babyface"Edmonds にまつわる彼女の思い出。

彼女はKenny'babyface'edmondsの曲、それも、結構古いトラックを好んで聞く。
ボーイズ2メン、ホイットニーヒューストン、トニブラクストンなんかの曲を。

このフックが、ここのコードが、とか面倒臭い解説も彼女は欲しがらない。
ただbabyfaceの作る旋律が心地よいの、そんなふうに答える背の高い女子だ。

彼女がbabyfaceを知るきっかけはひょんな事からだったそうだ。僕とはまだ出会っていない頃。

当時、働いていた病院の患者さんの栗平さん、が、なんだか熱心に彼女をデートに誘ってくれたけれど、栗平さんはバツイチで40過ぎ、それに身長の高い彼女より、だいぶ背が足りなかった。 

とくに背丈に魅力がなかった、と彼女は言っていた。
なんだよ、背丈に魅力がないって。僕だって彼女より少し高いだけなのに。女性はたまに、理解不能な感性を持っている。

その栗平さん、何の趣味もなくて、ワーカホリックだったそうだ。彼女は多趣味で、友人もまぁまぁ多い遊び人、のような普通の女子。容姿はまぁ、恵まれてる、たしかに。

検温に訪れたときに、音楽は何が好き?って彼女は栗平さんに聞かれた。
たぶんその時流行っていたJPOPのバンドの名前を答えたそうだ。
栗平さん、突然、得意な顔して、え、洋楽は聞かないの?なんだ、そうなんだって、マウントしたらしい。

口説きたい女性をマウントするなんて、なんて愚かな、と思うけれど、栗平さん、彼女のこと、ほんと気に入ってたみたいだ。

それから栗平さんは、当時のまだ若干不便だったiphoneだか、ipodだかで彼女に洋楽を聞かせるようになった。センスの見せどころだと、考えたんだ、きっと。
検温に行くたびに、栗平さんのお勧めの洋楽を彼女は、ほんの数曲聞かせてもらっていた。
若い頃、クラブで遊んだ話や、好きな女の子がこの曲が好きだった、なんておセンチな情報も一緒に。 

そのうちの数曲、を彼女はいたく気に入ったそうだ。
90年代のオールドファッションな曲を。

栗平さんは、それは全部、ベビーフェイスの曲だよ、と彼女に教えてくれた。

栗平さんは、友人といるときに脳梗塞で倒れて病院に運ばれたのだそうだ。だから、身体の一部にまだ麻痺が残っていた。それから程なくして、リハビリ専門の病院に彼は移ってしまったらしい。

一人身だった栗平さんが、お姉さんに迎えに来てもらって病院を出る日、お世話になりました、って一礼した後、彼の知る限りのベビーフェイスの書いた曲すべてが入った音源を彼女に手渡してくれた。

彼女はそれがきっかけで、Kenny'babyface'edmondsのつづる宝のような旋律を知ったのだ。

最近はベビーフェイス名義のI said l love youを、よく口ずさんでる。彼女はもう病院をやめってしまっているから、栗平さんの近況はよく知らない。

気に入った女性にベビーフェイスの曲を送るなんて、
悪くないと思うよ、栗平さん。少し古いけど。悪くない。






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