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慢性的な股関節の症状に対する動作分析と運動療法

慢性的な股関節の痛みや硬さに悩む人は非常に多く、その症状に対するアプローチに悩むセラピストやトレーナーの方も多いのではないかと思います。

『リハビリやトレーニング後は調子いいんだけど、その状態もすぐも元に戻っちゃう。』

患者さんや選手からこのように言われたりして悩まれたことのあるセラピストやトレーナーの方は多いと思います。

ここで大切なのが、

『なぜ股関節の痛みや硬さが引き起こされてしまったのか。』

を考えることです。

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なぜ股関節の痛みや硬さが引き起こされてしまうのか

私は、これらの症状が出現する原因は以下のような要素が影響しているのではないかと考えています。

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小殿筋、内転筋、腸腰筋、外旋筋群など股関節における単関節筋(インナーマッスル)は、股関節の運動以外にも大腿骨頭を寛骨の臼蓋に押し付ける作用を有しており、股関節の求心位を保ち安定化させるためにも重要な働きをしています。

しかし、これらの筋機能が低下してしまうことで大腿骨頭は求心位から逸脱し、前方変位してしまいます。

これにより、股関節の運動中において関節包や関節唇、靭帯組織に対する負荷量を増大させ、インピンジメントや痛みなどの症状につながってしまうリスクが考えられます。

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また、股関節の屈曲全可動域における約20%が骨盤(寛骨)の後傾も伴い、行われているとされています。

実際の臨床においても、寛骨の可動性自体に制限がかかっていることが多く、骨頭の関節包内運動だけを改善してもインピンジメントの改善に結びつかない症例を多く経験します。

そのため、骨頭の可動性だけでなく、寛骨の可動性に対しても評価とアプローチが必要になっていきます。

更に言えば、これらの筋機能不全や可動性の問題は、股関節自体に原因があるわけでなく、他関節の機能不全が影響しているケースが多くいる印象です。

よくある例として、片脚立位においてトレンデレンブルグ兆候のような立ち方をしている患者さんに対し、中殿筋のトレーニングのみを行なっても改善が見られないことがあります。

このような場合、股関節だけでなく足関節や胸郭など他関節の機能不全が影響し、結果的にトレンデレンブルグ兆候のような立ち方にならざるを得なかった可能性が考えられます。

そのため、中殿筋など患部局所の機能への評価・アプローチをするだけでなく、関連する他関節機能もあわせて包括的な評価を行い、アプローチを行なっていく必要があると考えられます。

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包括的な評価・アプローチをするには…

ただ、ここでひとつ問題が…。

患部局所の機能だけでなく、全身を包括的に評価・アプローチをしていく必要があることはみなさんご理解いただけたと思いますが、こうなるとどこから手をつけていけばいいのかわからなくなってしまいますよね。

そこで、基本的な動作(前屈や後屈、片脚立位など)を確認することでどこから評価・アプローチしていけばいいのかヒントを得るためことができます。

そうすることで、他関節機能による影響がないか全体像を把握することができ、局所や他関節機能の詳細な評価方法に繋げられるようになります。

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動作時の全体像を捉え、患部局所の機能を評価・改善していくための方法についてお話ししていきます。


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基本動作と股関節機能の関係性

まず、股関節の機能が制限されると動き全体にどのような影響を与えるのか、動作観察を通じて把握していきましょう。

股関節の機能不全はさまざまな動きに影響を及ぼしますが、これらを把握しやすい動きは以下のようなものになります。

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寛骨との連動性(骨盤大腿リズム)は、股関節を効率よく動かしていくために非常に重要な要素となります。

前述したようにこの骨盤大腿リズムは、股関節前方インピンジメントを防ぐ機能としても役割を担っています。

そのため、寛骨の動きの見やすい脊柱の前後屈や回旋といった動きを通して分析していくのが良いと思います。

また、片脚立位では下肢全体や脊柱全体の機能をスクリーニングすることが可能です。

◼️体幹前屈

☆動作観察における着眼点☆
✔︎腰椎の後弯
✔︎前屈に伴う寛骨の後傾、骨盤帯の後方変位

ここでは、脊柱の前屈に伴う腰椎の後弯とPSISを触知し前屈に伴う寛骨の後傾が出ているか(異常動作であるPSISの上外方への偏位の有無を確認します)か確認します。

立位での前屈動作は、股関節の屈曲と腰椎の屈曲(後弯)が同時に生じる動きになります。

前屈動作の前半は腰椎の屈曲が主動作となり、後半は股関節屈曲が主動作となります。

そのため、動作の後半から股関節(寛骨)の動きが適切に見られるか確認します。

多裂筋をはじめとした脊柱起立筋群の伸張性低下は、前屈に伴う腰椎の後弯と寛骨後傾の可動性に大きな影響を与えます。

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