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股関節の可動性を引き出す考え方

ストレッチをしているのに柔らかさが改善しない…

慢性的な股関節の硬さ(可動性低下)に対する治療に悩むセラピストの方って結構多いと思います。

ストレッチやセルフケア・徒手での介入などしているのになかなか効果が出てこないことや即時効果はあるけどすぐに元に戻ってしまうなど、多くのセラピストの方が経験されたことがあるんではないでしょうか。

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しかし、こうした現象は、股関節の構造や動きの特徴を踏まえて介入していくと解決できることが多いです。

今回は、この慢性的な股関節の硬さを取るために必要な考え方についてお話ししていきたいと思います。

大切なのは大腿骨頭の位置

以前にも、一般の方向けに股関節の可動性を出すために必要なこととして記事を書かせていただきました。

この中では、いわゆる関節の噛み合わせをよくすることが大事ですよ。とお話しさせていただきました。

ここでいう噛み合わせとは、寛骨の臼蓋と大腿骨頭の関係性のことを指します。

この両者の関係性が良好に保たれているつまり、『求心位』を保持することで可動性を最大限に引き出すことが可能となります。

関節の可動性に大きく影響する要素として骨の回転運動が挙げられます。

この回転運動には『関節の適合性(求心位)』や『関節を構成する周囲軟部組織の状態』が大きく影響していきます。

例えば、股関節の後方の軟部組織(関節包・靭帯および筋組織)の伸張性が低下している状態で股関節屈曲運動や内転運動をしたとします。

この時、後方組織の伸張性低下により骨頭が前方変位する力がかかり、寛骨臼前縁や前方関節唇への圧力が増大します。

この状態が続くことで股関節前方インピンジメントによる可動域の低下やつまり感、ひどいと痛みにつながってしまうと考えられます。

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求心位を保つために必要な筋機能

大腿骨頭のアライメントを整えるために必要な筋機能とは一体何か。

ここで重要となってくる機能は、大腿骨頭を股関節中心に押し込み、安定させることができるかどうかです。

股関節周囲の筋肉の中でも深層にある筋肉は、骨を関節中心に向けて押し込む方向の力が大きくなりやすく、関節に求心方向の圧迫力を与えることで安定化に寄与していると考えられています。

その作用を持つ筋肉は

✔︎深層外旋六筋
✔︎小殿筋
✔︎腸腰筋

が挙げられます。

外旋六筋や小殿筋などは、関節包や靭帯と連続性をもっています。

その特徴を生かし、運動時には関節包や靭帯が挟み込まれることを防止する役割や筋の張力により関節包・靭帯を緊張させることで大腿骨頭を関節窩に安定させる役割などが考えられています。
(引用:「身体運動学-関節の制御機構と筋機能-」)

腸腰筋も大腿骨頭を関節窩へ引きつける(安定させる)役割を担っていると考えられています。

骨格筋モデルを用いた研究で、腸腰筋の活動を減じたシミュレーションにおいて股関節屈曲の際に前方負荷が増大したことから、腸腰筋が股関節前方の安定化作用を有していると考えられる。
(引用:「アスレティックリハビリテーション」)

求心位を保つためのトレーニング

求心位に安定させるために必要な機能がわかったところで、それらの機能を高めるためのトレーニング例をご紹介いたします。

トレーニング前に今の股関節の状態を把握して、トレーニングの効果を感じてみましょう。

インピンジメントの有無を評価するにはこの方法がいいかと思います。

この運動の際に付け根に違和感を訴える場合、股関節インピンジメントが疑われます。

トレーニング1|小殿筋Tr.

このトレーニングのポイントは殿部の高さを維持したまま、骨盤ごと内旋方向へ動かすことです。

反対側の骨盤をした足の上に覆いかぶせるイメージで行うと大転子周囲に刺激が入りやすく小殿筋をトレーニングすることができると思います。

トレーニング2|腸腰筋Tr.

このトレーニングのポイントは、骨盤をしっかりと前傾方向へ動かすことです。

ヘソを前足の太もも上まで押し出すように骨盤の前傾を促し、腰椎の前傾も行うことで腸腰筋へ刺激が入りやすくなりトレーニングできます。

トレーニング3|外旋六筋Tr.

このトレーニングでは、浮かせている足を動かすのではなく、支えている側の足を軸に骨盤ごと動かすことがポイントとなります。

支えている側の殿部周囲に疲労感が出てくればOKです。

まとめ

今回は、股関節の柔軟性を引き出すために必要な考え方の一つについてお話しさせていただきました。

臨床やスポーツ現場では、股関節の硬さが改善されずに悩む方が非常に多いと思います。

それと同時に、そのような症状を改善させることができずに悩むセラピストの方も非常に多い印象です。

そういった方々へ、今回お伝えした内容が少しでもお役に立てれば幸いです。

また、そのほか股関節や股関節の機能不全が原因で起こる運動器疾患に対する動作分析についてまとめた記事やマガジンも公開しています。

こちらもぜひ参考していただけたら幸いです。



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