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きもの本棚①『銀太郎さんお頼み申す』主人公は着物初心。

年末に東村アキコさんの着物漫画『銀太郎さんお頼み申す』の単行本・第一巻が出たので、早速、買って読んでみた。主人公のさとりちゃんは繁華街のコーヒーチェーンで働く25歳のフリーター。常連客の和服美人・銀太郎さん(源氏名)に気に入られ、着物を着せられてギャラリーの手伝いをする。店は美術品の器を扱い、顧客とのお付き合いもすこぶる多い。

銀太郎さんを通じ、さとりちゃんが出会う着物たちと、その柄に秘められたドラマを追うコミック。さとりちゃんに着せた洋花の帯を見て、銀太郎さんは未経験な、若い時代の気軽さを懐かしむ。

ちなみに、帯は後ろ姿のお太鼓全面に、花がひとつ。ひらひらした花弁と花芯の粒を描いた「お太鼓柄」である。正面にもポンと同じ花があって、柄はそのふたつだけ。洋花はデザイン化された花で、着る季節は問わないそうで、日本画のような具象柄と違って、花の茎や枝の部分が描かれていない。

それならと、実家の箪笥から持ち帰った帯を確認してみた。

ワンポイントの「太鼓柄」である。赤紫の房がうねり、葉が紫陽花に似た植物がグラデーションをつけて染められている。茎もあって、色味はデフォルメされていない。

名前が解らずにいたが、ある時、実家の近くの公園を懐かしんで歩いている途中に、柵で区切られた植え込みの中の植物が、帯の柄と良く似ていた。さっそく、写メを撮って、ガーデニングアプリの『名前を教えて!』に投稿してみた。すぐに反応が貰えて「ヨウシュヤマゴボウ」だとわかった。洋種というだけに、帰化植物だそうだ。昭和の子供たちは通学路に生えたヨウシュヤマゴボウの実を潰し、指先を紫色に染めて、悪戯したそうだ。#マンガ感想文


近所でみつけたヨウシュヤマゴボウ


秋に使う帯だった。そして、この帯が木綿着物にマッチする理由は、モチーフの気軽さもあるのだろう。そもそも、木綿や紬に向く「染め」の帯にはゴージャスな花は描かないものなのだろうか。仕分けを間違わなければ、帯と着物は自然と合うようにできていると、納得。帯の柄に、先人の知恵を知る思いがした。

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