2021年9月からインタビュアーというものを志し、数名の方に半生をインタビューさせていただいているが、ヒトの半生を聞けば聞くほど、自分の価値観が凝り固まっていることに気付く。
なんでそんな選択をしたのか?
もっとこういう風に動けばいいのに・・・
あくまでもその疑問や意見は、私が今まで生きてきた経験によって形成された価値観に基づいているだけであって、それが正解か不正解かは本人が決めることだ。
ぼんやりとした高校生活から一転、徳田さんの半生は高校卒業を機に"これでもか!"というぐらい一気にギアが入る。そのギアの入り方は、当時徳田さんの周りにいた家族や友人の皆さんも驚いたことだろう。
ヒトは自分以外のヒトが心の奥底で何をどう考えているのか、到底理解することは出来ない。
過去から現在、未来への想いまで聞いて初めて、対峙するヒトの価値観の外枠に触れられる程度だと思う。
徳田さんというヒトは、インタビューをしなければ今の僕ではきっと理解することは出来なかったであろう。
後編のインタビューではさらにギアが入り、加速度が増した半生を展開していく。
(取材・文・編集・写真/奥行太郎)
念願のカットデビュー
退職後、おかんの美容室でヘルプとしてサポートしながら、念願のカットデビューを果たす。
カットデビューを果たしたのは、高校を卒業してから4年後のことだった。4年目でのカットは、徳田さんにとって絶対に達成したかったことだったそうだ。
3年間の苦労が報われ、このままおかんから店を譲り受け、今の"JINKEY"につながっていったのかと思いきや、そこはスムーズにいかなかったのだそう。ただ、スムーズにいかなかった経験が徳田さんを一回りも二回りも大きくさせたのは間違いない。
畑違いの仕事で自分を見つめ直す
徳田さんのすごいところは、腑抜けた後に必ずその腑抜けから脱出するための行動をとるところだ。高校を卒業してから床屋で働いた時もそう。"このままだったらダメになる"ということを、他者の意見も取り入れながら、自分自身に腹落ちさせていく。
年齢で判断するつもりはないが、20代前半の男の子が、畑違いの仕事をすると決意したとは言え、理容師と全く関係のないところで働く度胸がすごい。その度胸に加えて、あらゆる仕事を自分で体験し、自分の視点で自分を客観的に分析していった姿は、"徳田少年"が元々持ち合わせていたものだったのだろうか。ここでも"おかん"がキーポイントとなる。
3年前におかんのヘルプとして働いていた時に、同じことが言えたかどうか聞いてみた。
JINKEYと徳田さんの未来
18歳から4年間、何不自由なくのほほんと大学に行っていた自分と比べると、18歳からの徳田さんの半生は濃い。苦労して自分の居場所を見つけた徳田さんは、ヒトに対する想いが強くなっていった。それは"JINKEY"というお店の名前にも表れている。
一度おかんのもとを離れてから、色々な場所で働いていた経験は店舗の内装にも生きている。
徳田さんからは、いい意味でビジネスの臭いがしない。肩肘張らずに生きていて、自分の生きたいように、でもお客さんのことを第一に考えながら営業しているように感じる。
徳田さん自身のことと、お店の今後の展望を聞いてみた。
おかんに導かれて始まった理容師の道。名実ともに手に職をつけている状態ではあるが、徳田さんは生き方やスタンスを大事にしている気がしたので、このスタンスが継続できるのなら、床屋じゃなくてもいいのではないかと聞いてみた。
モヤモヤしている人に向けて
前編でも書いたが、中高時代の徳田少年はどこへ行ってしまったのか。実はどこにも行っていない。徳田少年をベースにただただ努力を重ねただけなのだ。本当に人生はどう転ぶかわからない。この徳田さんの生き方は、今の自分にモヤモヤしているヒトにとって、一歩踏み出してみようと決断する生き方ではないかと感じたので、最後に"今の自分にモヤモヤしているヒト"に向けてメッセージをいただいた。
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編集後記
インタビュー時間は約2時間。
目から鱗の半生で、自分自身の価値観が思いきり揺さぶられた。
徳田さんは元々理容師になることが夢だったわけではない。
それなのに、たったの6~7年で"理容師以外の道は考えられない"というレベルにまで達した。その道から一度外れたにもかかわらずだ。
"ヒトは夢を叶えることでしか充実した人生を送れない"というような風潮があるように思う。個人が発信できるこの世の中、多分に漏れず僕もそうだが、その風潮や考え方はこれからも続いていくのだろう。
根性から始まった社会人人生。
現在徳田さんは、羨ましいほどに充実した人生を送っているように見える。
文才がなくて非常に申し訳ないのだが、なんというか、全然無理していない。
自分のペースで、自分のやりたいことを、肩肘張らずに。
夢なんてなくったって、自分と周りのヒトに向き合えば、充実した人生を送ることができるお手本が、私の身近に存在した。
これからも私のカットを末長くよろしくお願いいたします。