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TENTOで学ぶプログラミング言語⑦ Blender

期待されるオープンソース・ソフトウェア

はじめにお断りしておかなくてはなりません。Blenderとは言語ではなく、ソフトウェアの名称です。したがって、本来はこの項で取り上げるのはおかしいのですが、使いこなすのにある程度の修行が要求される点において、プログラミング言語と似た側面があります。
また、TENTOには「Blenderを習得したい」という要望がとても多いのです。

数々の生徒にBlenderを教え導くTENTOのエース開発者、吉川綱希先生は語ります。

「Blenderとはひとことで言えば3Dモデリングソフトです。公式サイトにはほかにVFXやCG合成、アニメーションにも利用できると書いてありますが、主な仕事は3Dモデリングだと言い切ってしまっていいと思います」

どのように出会ったのですか。

オープンソースカンファレンスで見たのが最初でした。ただ、そのときは『ふーん、こういうのが出るんだ』と思ったぐらいで、自分でやってみようとは思わなかったんです。自分でやりはじめたのは、2016年か17年ごろ。VRゴーグルが一般的になって、3Dに注目が集まったときです。書籍を購入して勉強しました。Blenderはそれから何度かバージョンアップして、今はだいぶ扱いやすくなりました」

「興味ぶかいのは、Blenderに協賛する企業です。

協賛企業一覧の一部

IT業界の主だった企業はすべて加わっています。錚々たるものですよね」

以前お話しいただいたOBSも同じオープンソースで、たくさんの企業の後援を得ていましたが、Blenderは比べものにならないですね。

「このジャンルの注目度がそれだけ高いということだと思います。高性能な3Dモデリングソフトが無料で手に入るとなれば、多くの人がコンテンツをつくるでしょう。それはこのジャンルが盛り上がることにつながります。だから投資が集まるのではないでしょうか。
OBSもいいソフトだと思いますが、ここまで後援企業を集めてはいないですよね。比肩できるのはGNUぐらいかなと思いますが、GNUはソフトウェア群すべてです。ソフトウェア単体でここまで推されてるのは、おそらくBlenderぐらいでしょう」

Blenderの学びかた

「3Dモデリングは、丸みを表現するのが難しいんです。多面体を構成し、面をたくさんつくることによって、球に近づけていきます」

「Blenderを学びたいという子には、はじめはわりとカクカクしたものをつくってもらいます。ネットからビルの画像を拾ってきて、『これつくって』と言ったりとか。すこし慣れてきたら『今近くにあるもの何でもいいからつくってみて』とか言います」

ムチャぶりですねえ。

「ソフトウェアって道具なんです。大工さんにとってのカナヅチみたいなものです。大切なのはカナヅチをどう扱うかではなくて、それを使ってなにをつくるかです。私はカナヅチの扱い方を教えているだけで、なにをつくるかはそれぞれに考えてもらいます」

3Dモデリングをする子は、ゴールのヴィジョンといいますか、目的が見えている子が多いのですか。

「さまざまですが、私がマンツーマンで見てる子は、わりと明確に『こうしたい』という希望をもっていますね」

どんなものでもそうですが、ある程度上達すると、自分がどの位置にいるかわかります。以前は「こういうのをつくりたいな」とぼんやり考えていたのが、モノが見えるようになって、「目的地にたどり着くには山を3つ越えなきゃいけないぞ」とか知ることになります。道の遠さに絶望したりすることもあるんじゃないですか。

「まあ、挫折を味わうのも大切な経験ですし(笑)。……それに、3Dモデリングのたいへんな点は、目的地に着くまでに、どういう道筋をつくるか、自分で考えなきゃいけないことなんです。階段を一段あがるためには何をしなければならないか。一段あがったらどうするか。通過点をすべて自分で考えていきます。すくなくともその子は、まだあきらめてはいませんね」

mocopiという画期的なオモチャ

「ところで、今年(2023年)に入って、SONYからすごいのが発売されました。mocopiというのですが。私も予約して買っちゃいましたし、TENTOの子にももう入手したという子がいました」

「体に装着してモーションキャプチャーする器具は、これまでもあったんです。ただ、踊ったりするためにはちょっと重かった。これはそこをクリアしてるんです。体につけて踊って、それを3Dデータとして取り込むことができます。もちろんBlenderでも扱えます。ふつうに映像を撮ったって、それを3Dの資料とするためにはあらゆる方向から撮らなければなりません。複数のカメラが必要になりますが、これはそれも必要ない。あらかじめ3Dデータになっていて、自由に編集できるんです。かりに自分がダンスとか、体を動かすのが苦手でも、得意な人につけてもらえばいい。そういう機会にもなりますよね」

子どもがおこづかいで買うにはすこし高いような気がします。

「これまでのモーションキャプチャーツールに比べれば、圧倒的に安いです。VRヘッドセットなどを入手することを考えれば、決して高価ではないように思います。それに、VRヘッドセットって、基本的にコンテンツを楽しむためのものですよね。mocopiはコンテンツをクリエイトするために使うものなので、同じ値段でも感じ方がちがうのではないでしょうか。今後はこれでキャラクターを動かしたいと考える人も増えてくるでしょう。Blenderを扱いたいというニーズはさらに増えます。革命的なものが現れたな、と思っています」


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