第九回 動画配信ソフトOBS
ClassicとStudio
あなたがゲーム動画を撮影し、配信しようとするなら、きっとOBSを使うことでしょう。動画配信にOBSを使うのはごはんを食べるとき箸を使うのと同じぐらい当たり前のことです。
じつは、OBSはとっても深いソフトウェアです。その一端を、TENTOきってのエンジニアにしてnoizの開発者、吉川先生に語っていただきました。
OBSはいつごろから使っているのですか。
「今のOBS Studioの前のバージョン、今はOBS Classicと呼ばれているものから使ってます。OBSはOpen Broadcaster Softwareの略ですから、基本的には配信用のソフトウェアなんです。以前、配信をよくやっていたので」
ClassicとStudioはどうちがうのですか。
「いちばん大きな相違は、クロスプラットフォーム対応だと思います。Classicのころは、Windowsでしか使えなかったんですよ。Studioになって、MacでもLinuxでもイケるようになりました」
高機能とオープンソース
OBSの特徴はどんなところにあると思いますか。
「無料であるにもかかわらず、すさまじく高機能であることだと思います」
機能が多すぎて使いこなせている人はすくないんじゃないかと思います。
「OBSの本体は決して大きくないんです。さまざまな機能の多くは、プラグインの形で提供されています。ダウンロードすると、そのプラグインが同梱されたものを得ることになるんです」
「プラグインの多くは本体と開発者が異なっています。オープンソースですから、すべてコードが公開されていて、それをもとに世界中のエンジニアが機能を追加したり、リファクタリング(プログラム書きなおし)をおこなったりしています。OBSは基本的にCまたはC++で書かれていますから、プラグインもそれらで書かなければならないんですが、それでは敷居が高いということで、PythonまたはLuaのコードを受けいれられるようになっています」
これはすごいですね。
「この機能はあんまり見ないですよね。オープンソースだから、無料だからできることなんだと思います」
どういうことでしょうか。
「有料って保証とセットなんですよ。お金をもらっていれば、商品に不具合があったとき、売った側の責任でなんとかしなければなりません。無料だったらそんな必要はないんです。かりに不具合があっても、『だって無料じゃん』と言えるんです。『不具合があったら自分の力でなおしてね』というのがオープンソースのスタンスでもあります。新しい扉を開けやすいんです。OBSがこれだけ高機能であることの一因だと思います」
用なしになったプラグイン
先生ご自身もプラグイン作ったことはありますか。
「あります……が、今はまったく必要ないですね」
「富士フィルム製のデジタルカメラの画像を取り込むことができない、という不具合があったんです。それを回避するためにつくったんですが、富士フィルムの修正が来るのがすごく早くて(笑)。このプラグインは数週間で用なしになりました(笑)」