天想奇譚について

自己紹介

 こんにちは。初めましての方は初めまして!
 天々堂と申します。
 普段は書道などなどをしながら、NFTでは書道と3Dアートを融合させた作品を制作しております。
 活動プラットフォームは主にopensea、HEXAになります。
 

天想奇譚って何?

 まず天想奇譚とは? という所ですね。
 「天想奇譚」は「てんそうきたん」と読み、そのままの意味といいますか、わたくし天々堂が頭の中で作った物語の事です。
 これはコレクション内で複数枚の作品を発表し、全体を通して一つの物語を作り上げるという事を目標にしている、まだ未完(2022年12月現在)のシリーズになります。
 登場する主要な人物は二人。その他魅力的なキャラクターも随時発表していきます。
 以下、一枚一枚についてや物語について軽く説明させて頂きますので、最後までお付き合い頂ければ光栄です。



●主要人物二人のうちの一人は「あやかしの姫」。

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 天想奇譚の世界には、あやかしというものが当たり前に存在しています。
 彼らは人間を食べますし、人間の肉体的な痛みや苦しみだけではなくて精神的な苦痛や悲しみ、飢えや欲望なんかも大好物という、基本的に人間とは相いれない存在です。
 必然的に、人間とは敵対するグループという事になります。
 その親玉、統領が「あやかしの姫」です。
 作品中で姫はよく体がバラバラになっている表現があります。
 お話の中では、姫が持っている力が強すぎ、また性格も気まぐれな為に肉体すらきちんと生物の形を保たずにフラフラしているよ、という表現です。
 これは不気味さや気持ち悪さというものも利用して、物語の始めの姫の残酷な面、無邪気に人間を殺すことを幼児のように喜んでいるという不自然さを出すという意図がありました。
 物語の中では徐々に姫が人間に興味を持ち、人型に体が安定する一枚もあります。
 基本的には我々の言う「人の気持ちを理解する」という事ができないキャラクターですが、その姫が「理解」という概念に気付いてからの葛藤が多く登場します。


●主要人物のもう一人は「あやかし退治の剣士」です。

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 こちらは姫とは全く対照的な、真面目で曲がった事ができないキャラクターで、あやかしではなく人間の方の登場人物になります。
 あやかし達の恐怖に悩まされて暮らす人間側の代表で、過去に身近な人々や恋人をあやかしに殺さた復讐心と、怯えて暮らす人々を救おうという心で日々姫を倒そうと挑んでいます。
 姫にとっては人間はすぐ死んでしまう捕食の対象であり、到底理解ができない生き物であり、姫にとっては人間こそがあやかしのような存在でもあります。
 しかし、この剣士だけはいくら襲っても傷つけても死ぬことなく何度も自分の前に現れるという不思議な点を持っていますので、次第に姫はこの剣士に興味を持つようになります。
 作中の剣士の体には姫の手がまとわり付き、帯の一部も端に映り込んで、わがままな姫の執着心を表現しています。

●三作品目は上記の二人が対峙するものになります。

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 次の作品は人物紹介ではなく、少し動きやキャラクターを増やしたものになります。
 左上には鬼の角が生えた烏天狗、姫の体には大蛇が巻き付き、横には口から炎を吐くあやかしが剣士を威嚇しています。
 上下で二人の気持ちの温度差を出し、剣士の闘争心は背中のみで表現しました。
 ここではまだ姫は「人の気持ちを理解する」という概念に気付いてはいなく、物語の中盤の始まり、というような位置づけです。


●価値観が違っていても認め合いたくなくても「自分には全く理解ができない価値観を持っている人もいるのだ」と気付く事も時にはある、という事が大きなテーマです。

作中で姫は「人間にとって食べられる事は善くない事であり、苦しみや憎しみ、痛みなどは望ましくない感覚なのだ」という事に初めて気付きます。(作品URLはこちら

 これまでのちゃらんぽらんな姫が突然のどん底に落ちたような暗さと、心が停止してしまいそうな色の服になりました。
 自分の見ている世界に存在している人は違いはあれど自分と似たような考え方をしているものだと思いがちです。
 執着した相手がそうではなかったと気付いた瞬間の衝撃はきっと痛みという程度の表現では足りないと思います。
 頭の中が混乱している状態では、「相いれないのなら死ぬか殺すか」というような究極の二択しか浮かばない事もあるという事を作品にしたく、敢えて気味が悪くも感じられる表現をしてみました。


●姫が気付いた事に気付く、そんな剣士の側にも葛藤が生じます。

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 あやかしの姫が食糧であるはずの人間に名前を訊く、という所に剣士が違和感を感じたという一枚です。
 ねぐらでくつろぐ剣士の体には、三枚目で登場した火を吐くあやかしの子分のようなものがまとわりついていますが、剣士は気付いていません。
 姫の言葉を理解しようとしている事から剣士も一度目を逸らそうとします。理解してしまっては復讐は果たせなくなります。
 この時点で、真面目な剣士も「正しい事」は復讐をするという「行動」だと信じて盲目になり、目的や大儀を見失いかけています。
 剣士の頭上には姫の手が映り込んでおり、執着を感じさせますが、こちらにも剣士は気付いていません。


閑話休題。新しい登場人物も出てきます。
●復讐に燃える側だけが正義なのか?

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 ここで、あやかし側の登場人物の作品になります。三枚目で映り込んでいた烏天狗です。
 ここまでの物語の流れでは、単純にあやかしが悪、人間が善で進んできましたが、迫害される側にもさまざまな考えや生き方があり一人ひとり違い、持っている正義も別々なのだという事を表現したくて制作しました。
 こちらは「元」烏天狗です。
 あやかしの烏天狗としてただ存在しているだけだった彼は、住処を人間に追われ、その過程で妻を殺され、鬼になったという物語を持っています。
 誰かがだれかを非難する時、それは100%誰にとっても正しい事なのだろうか、陰に被害者は一人もいないのだろうか、集団で追い落とす側は全員が正義の味方なのだろうか、という思いを表現しました。
 見ていて不安になるような逆さの図にしています。


●人間の側にも正義だけで動いているわけではない者もいます。

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 被食者である人間たちは、あやかしを憎んで殺そうという者ばかりではありません。
 脅威であるという事は、取り除く行為に価値が生まれます。
 今回の一枚は、あやかしを殺してお金を稼ぐ人間の女の子をテーマにしました。
 もちろん人間側の登場人物ですから、殺される側には悪いことをしているなという思いが台詞の「ゆるせ」に出ています。
 けれども、復讐や迫害ではなく単純に家族や地域を養うための職業として何かを殺す様子を、人物を忍者風にして表現しました。
 純粋で迷いがなく、暗さを取り除いて華やかで強い一枚にしています。


●葛藤で少し大人びた風貌へ

恥じらいや切なさという感情も芽生え、さまざまな制約に縛られる苦しみを知るけれど見た目は大人として美しくなります。(作品URLはこちら

 こちらの作品は、物語部分にもある通り姫がきちんと着物を着ています。
 人にどう見られるか、どう振る舞えば好かれるかという事を気にするのは時には苦痛でもあります。
 しかし見た目はぐっと大人っぽく、”ちゃらんぽらん”で”気まま”な女の子から女性へと変わりました。
 それは服さえまともに着ず手足さえ自由に好き勝手に散らかしていた姫にとってはまさに痛みでもあると思います。
 凍るような冷たさの中での美しさを、臨場感を出す構図で表現しました。
 ここから新しい感情が生まれて立ち直ってくれるよう、できる限り美しく制作しています。


●正義とは

ネットでもよく見かける善意の暴走。目的が大きければ大きいほど本質を欠いて暴走するように思います。(作品URLはこちら

 再び復讐の剣士の登場です。
 これまでこの剣士は「清廉潔白・生真面目」というキャラクターでした。
 しかし、姫の心がわりを何となく察知した剣士はその変化を認めたくないと思うようになります。
 認めてしまえば、許すとまではいかなくとも受け入れる必要が出てきます。剣士はそれをしたくありません。
 復讐が「しなければならない事」から「したい事」にいつしか変わってしまいました。正義の暴走です。
 口から火を吐き、炎の上で燃える刀を振りかぶる。正しいからこそ、真面目だからこそ引き際を失う。そんな姿を表現しました。
 

集団の主である姫の変化

剣士に変化があったように、姫の方にも変化が現れます。(作品URLはこちら

 剣士の心が頑なになっていくのに反して、姫の心はそれとは反対の方向へ変化していっている様子です。
 しかしいくら心持ちが変わった所で、生まれ育ちや過去を変える事はできません。
 生まれながらにして国を背負う立場であったら? それが戦争をしている国の国民を率いる事を義務付けられる立場であったら。
 後には引けない時、その人は一国を背負ってどのような決断をするのでしょう。家族を一つの国として例えたら、もしかしたら私たちも、小さくもそんな決断をした事があるかもしれません。
 未来は変えられる、しかし工夫は必要。そんな気が致します。

争っている場にいるのは当事者ばかりとは限りません

コミュニティは大人ばかりでは形成されません。そこには子供など、様々なアイデンティティの存在が混じります。(作品URLはこちら

 集団と集団が争っている時、その場にいる”全員が”争っているのでしょうか。多分違います。
 その最たるものが子供ではないだろうかな、と思いましたのでこの作品を間に挟みました。
 子供というものは、何をすれば大人が喜ぶか、どんな事を聞かない振りをしていれば心地よく接してもらえるのか、よく見ています。
 そして争いの中で一番に生きる手段を失くしてしまうのも子供であるでしょう。
 作中ではあやかし側の登場人物として明るく強い童を製作致しました。

ちなみに

 ここまでお読み下さりありがとうございました!
 このシリーズにひそかに付いているお話部分の語り口調、誰の言葉かな、と思って頂ける事があれば嬉しいなと思います。
 実は、一枚目に出ている彼女です。非力でありながら母親のような目でいつも姫をハラハラと見守っています。
 お面の下はきっと美人だろうな、いつか素顔を登場させたいな、というのが密かな私の楽しみです。

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