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『特別展「法然と極楽浄土」』(東京国立博物館)

【内容】
浄土宗の開祖である法然に関する展覧会。


【感想】
このところ仏教関係の本などを読んだりしていたりして、気になっていた観に行ってみました。

浄土宗関連の重要文化財がゴロゴロ展示されていました。

そう言った意味では、豪華な展示とも言えるかも知れませんが…
通常こうした展示、特に東京国立博物館、トーハクで行われるような大規模な展示では、学術的にその宗教についての関連資料なども陳列されていることも多いのですが、今回の展示ではそう言ったものの展示や説明などはありませんでした。
例えば、浄土宗といえば、その開祖である法然が修行ひた天台宗関連の展示や、法然の弟子である親鸞に関する展示などあっても良さそうなのに、一切ありませんでした。

浄土宗の教団も全面バックアップということで、あまりそうした別角度からの展示というものをしなかったのかと…
そう考えていくと、浄土宗の関連施設の紹介などもあったり、増上寺が持つ五百羅漢の掛軸が掛かっていたりしたなあと…

などとは書きましたが、浄土宗の最重要なしょかなどが並んでいて、観ていてそれなりに感じるものはありました。
残念ながら、古文や書には疎く、解説を読まないと何が書いてあるかはわからないことも多いのですが…
浄土宗の最重要経典である阿弥陀経の写経などは、本当に神経を使って書きいるのが伝わって来ました。それ自体が瞑想的であったり、宗教的な行為だったのだなあと…

今回の展示でも、仏画や仏像の展示もありましたが、そこまでメインを張るような展示ではなかったように感じました。
そもそも開祖の法然自体が、仏像などの存在は否定はしないが、本人的には南無阿弥陀仏を唱えることが一番であるという考え方なのもあって、そこまで絢爛豪華な仏像や仏画という流れにはならなかったという面があるせいなのかなあと思ったりしました。

徳川家康が浄土宗を信仰の対象としていたということで、その後、江戸幕府の時代には手厚い庇護を受けていたとの話は聞いたことがあったのですが…
今回の展示では、徳川家康が書いたと伝えられる南無阿弥陀仏の掛軸が展示されていたりもしました。
大きな折り紙くらいの紙に、ものすごい細かい字で、南無阿弥陀仏が書かれていて…
間違い探しのように、2箇所家康という文字を忍び込ませていました。
はて、これはどうなんだろう…家康が書いたから、書に家康という文字を忍び込ませる?なんだか怪しい、というかそもそもそれってかなり罰当たりなのでは、なんてことを感じたりもしました。

今回の展示を観ていて、仏教に関する知識や知見がないことで、日本の古典や文化、歴史について理解が進まないといったことがあるんだろうなあと感じたりもしました。

それから、村上春樹の祖父は浄土宗の僧侶だったという話を書いていたことなども思い出したり…
ちなみに、植木等の父親は浄土真宗の僧侶だったとか…
非公開の人なども合わせると、実は日本の文芸や芸能に携わる人の中で、家がお寺といったパターンはそれなりにあるのかも知れないですね。

そういえば、元々は上野の森にある寛永寺をはじめとする広大な天台宗系のお寺のあった敷地の一角にトーハクの建物が建っていたことを思い出して、こうした展示を行うには相応しいような気もしました。


※ちなみに、法然についてよくわかっていなかったので、下記の資料を参照してから、鑑賞してきました。

・『聴く歴史・中世 衆生を救済した法然上人・念仏の教え』(語り:寺内大吉)

・『法然と明恵―鎌倉仏教の宗教対決― DISC1〜2』(語り:町田宗鳳)

・『後鳥羽上皇、法然と親鸞を流罪に処す』(語り:山折哲雄)

https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2629

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