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婚姻届を記入するにあたって思う、妻の姓を選ぶには理由が必要なのか。

28歳、性別:女。

結婚を現実のものとして考えた始めた2021年2月。

「苗字に何か強いこだわりがあるの?あるならもちろん考えるけど。」

これから夫になる、私の彼が言った台詞。この場合の“考える”っていうのは、私の姓に統一することを考慮する、という意味。

彼がこう話したのは、私が、「結婚したらさ、苗字はどっちにしようか。」と投げかけたから。

私から聞いておいて、「こだわりはないけど・・・。」と言いよどんでしまった。実際こだわりはないし、両親の強い希望もない。次女だし。

ただ、結婚の話が進むにつれて、きっと当たり前のように彼の姓になることが、なんだか悔しいような寂しいような、とても稚拙な表現だけれど、姓を選択する場面を一瞬で通り過ぎてしまうような、そんな感覚があった。この場合の感情の原因は、”彼の姓になること”ではなくて、”当たり前のように”の部分。

ちょうど、夫婦別姓の話題が取り沙汰されていたこともあり、関連記事をいくつか記事を読んだ私は感化されていたのだと思う。だから彼に投げかけてみたのだった。

先に結婚をした友達(女性)は、当たり前のように夫の姓に変える手続きの面倒さを嘆いていた。その話を聞いていた私も、その時は何の疑問も抱かず、いつか私が結婚しても同じように苦労するのかなあ、くらいに思っていた。

いざ私の目の前に、姓の変更の瞬間が迫ってくると、途端に自分の姓が愛おしくなる。“強いこだわり”なんて言われたら自信はなくて、思いの丈を力説して彼を納得させるだけのエピソードも話術もないけれど、28年間片時も離れず共に歩んできて、小テストにも手紙にも何度も何度も書いて、人並みに愛着が生まれてしまっているのだ、きっとあなたと同じくらいには。愛情で言ったらあなたと同等、いや、彼は2歳年下だから私の方が、2年分深い愛情がある。愛情は年数では測れないなんてそんなことは承知している、でも。こだわりがなければ夫の姓になるのが必然なの?あなたには強いこだわりがあるの?ないけど妻の姓を吸収するの?あたかも自然の理であるかのように、夫の姓に統一するの?と疑問が沸々湧いてきた。

どうしても私の姓にしなければならない理由なんて持ち合わせていなくて、彼の姓になることが不満だったわけでもなくて、むしろ好きな人と同じ姓を持つことは仲間として認められたような心強さもあって。だけど、どちらの姓に統一するか考えるとき、男女の姓を同じ重さで比べて考えてほしい。私もそうだ。自分自身にも問われている気がする。主張するだけの知識も、その時感じたもやもやを言語化する力もない。違和感だけが、ずっと喉の奥につっかえているような感じがした。

世間的には、結婚して妻の姓にするとき、「仕事の関係でやむをえず」「婿入りするから」など、周囲の人の納得を得るための明確な理由が必要になる。そして仮に、私の友人が結婚して妻側の姓を名乗ることに決めたのなら、同じようにその理由を求めてしまうかもしれない。“今の世の中珍しくないよね”とか、“旦那さん理解ある人でよかったね”なんて言って。女性が姓を変更することに対してはきっと何の労りの言葉もないのに。労りの言葉が欲しい訳ではないのだけど、それが当たり前と思わないで、と言いたいだけなの、一旦立ち止まって。

私が姓について彼に投げかけた時、立ち止まって考えてくれたかな。あとからでもいいのだけど。同じくらいの愛情ある姓を、これから迎え入れる姓を、男女の別とは距離を置いて。

言語化できずにいるもやもやをどうにかしたい気持ちと、『女性』が歩んできた歴史とか置かれてる現状とか知ることで強くなりたい気持ちがしたから、気持ちのままに図書館に行ってジェンダーに関する本を数冊読み漁った。ジェンダーだけでは片付かない話なんだろうけど、今の私にはこれが精一杯、少しでも理論武装したい。論破したいのではなくて、自分の中のもやもやとの対峙のため。感情論や、私が女性として通ってきた経験則だけでなくて、もっと強い力をつけたい、と結婚を機に思ってよかった。考えないまま、立ち止まらないままじゃなくてよかった。理由を求められる世の中、その理由を知りたい。



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