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自分の立場が見えてくる―斎藤美奈子『学校が教えないほんとうの政治の話』

文章添削士がおすすめの本を紹介する「文章添削士が推す! 秋の推薦図書」シリーズ。
今回は、岩渕あずみさんによる斎藤美奈子『学校が教えないほんとうの政治の話』の紹介記事をお届けします。


2024年は世界各国で様々な選挙が行われ、「選挙イヤー」と言われています。日本でも自民党総裁選、立憲民主党代表選の行方に対し、注目が集まっています(この記事が掲載される頃には結果が出ているかもしれません)。私が推薦するのは、まさにそんな「選挙」や「政治」に関わる本です。「リアルな政治」を理解するために、自分の「政治的な立場」を見つけること、それがこの本のテーマです。 
 
この本は5つの章に分かれており、第1章から第4章までは政治に関わる過去の事件や出来事など、歴史的な背景が書かれています。中学や高校の日本史の授業で聞き覚えのある事件も多く取り上げられ、それらが今にどうつながっているのかがわかります。第5章は、第4章までの内容を踏まえた上での「現代の政治」の話になっています。この本が出版されたのは2016年ですが、第5章で取り上げられているのは「憲法改正」、「歴史認識問題」、「原発問題」など、今後も議論が続くことが予想される重要な問題ばかりです。
 
この本の特徴は、章毎に「2つの選択肢」が提示されていることです。各章で挙げられている選択肢は「体制派と反体制派」、「資本家と労働者」、「右翼と左翼」、「国家と個人」、「保守とリベラル」の5組です。どれも言葉から何となくのイメージは沸くけれど、「自分がどちらの立場か」を改めて聞かれると、答えに悩むものもあるのではないでしょうか。各章を読み終えた時、果たして自分は「どちら寄り」なのか考えることで、この本のテーマでもある自分の「政治的な立場」が見えてきます。
 
私はこの本を、「自分の政治的な立場が分からない」という若者にお薦めします。
2016年に選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられ、「若者も政治に参加しよう」という機運が高まる中、「選挙に行った方がいいのは分かるけど、誰に投票すればいいのか分からない」と悩む人も多いのではないでしょうか。学生時代の私が、まさにそうでした。両親が政治に対する関心が高い人たちだったので、一緒にニュースを見たりはしていましたが、いざ投票に行くとなると、「誰に投票すればいいか分からない」、候補者を選んでも、「自分の選択が正しいのか自信がない」という状態でした。この本に出会ったのは、ちょうど社会人になった頃です。
 
この本は、投票における「正解」を教えてくれるものではありません(そもそも投票に「唯一の正解」はありません)が、自分なりの判断を下すための様々なヒントを示してくれています。
今回推薦した本が、「投票」に悩む人たちの助けになればと思います。

(執筆者:岩渕あずみ)

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