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情熱に輝く瞳は、素敵だ -読売中高生新聞編集部『部活魂! この文化部がすごい』

 この連載では、ある添削士が新書の中高生向けレーベルから毎回1冊を取り上げ紹介します。中高生の読者に向けて書いていますが、知的好奇心の強い小学生、学び直したい大学生や大人の方々が読んでくださるのも大歓迎です。

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 『響け! ユーフォニアム』というアニメが話題を集めている。武田綾乃の同名小説を原作とする、高校吹奏楽部の青春物語だ。現在(2024年4月〜、Eテレ)放送されている3期目は、物語の最終盤。主人公たちが3年生となり、最後の大会に向けて駆け抜けていく日々が描かれる。部員たちの部や音楽に対する想いが、ぶつかりながらもやがて一つにまとまっていく物語は、とても見応えがある。
 ところで、私(この文章を書いている人)には、吹奏楽の経験がない。音楽のことも、吹奏楽部という部活のことも、あまり詳しくない。だがそんな私でも、このアニメは毎週楽しみに観ている(なんなら過去作も視聴済)。それは、このアニメの優れた表現が、吹奏楽部の青春を追体験させてくれるからだ。

 部活について言えば、3年間ないし6年間で実際に経験できるものごとには、物理的な限界がある。ひとつの活動にずっと打ち込んでいれば、他の活動は経験できない。逆に、所属する場所をコロコロ変えていては、一つひとつの活動に関する経験は浅いものにとどまる。自分が実際に経験できることなど、世界のごくごくごくごく一部でしかない。
 だが物語には、他人の物語を追体験させてくれる力がある。自分が経験していないことでも、こういう状況に置かれたらこういうふうに感じ考えるかもしれない、と想像力を広げてくれる。そうした追体験の多さが、人としての懐を深くしてくれる。

 今回取り上げるのは、文化・芸術の部活動に打ち込む中高生たちの物語である。読売中高生新聞編集室『部活魂! この文化部がすごい』(ちくまプリマー新書、2020年)だ。

 この本のもとになったのは、読売中高生新聞のコーナー「部活の惑星」。担当記者は全国の部活を取材し、活動の内容や部員たちの想いを小説仕立てでまとめた。数多くの記事の中から、文化部を取材したものをまとめたのが、この本である。

 ひとくちに「文化部」と言っても、その中身は実に多種多様だ。

 運動部の「甲子園」や「国体」のように、全国大会を目指して猛練習に励む部活もある。
 全国大会を目前にして水害に遭い、楽器が泥水に沈んだ吹奏楽部。百人一首部でしのぎを削る、ふたりのエース。頭から墨をかぶる覚悟でパフォーマンスをする書道部。文化部も、ところによっては体育会系のようなハードさがある。

 一方で、ユニークな分野に打ち込む部活もある。 
 地元の伝統芸能を舞う、鹿踊り部。ドラえもんを22世紀に帰すべきか、について激論を交わす、ディベート部。文化祭で苔(コケ)についての研究発表をする、雑草研究会。読んでいるだけでも勉強になる。

 この連載は「ただ単にすごい部活や中高生を紹介するのではなく、等身大の10代を描きたい」(p.8)という思いで始まったという。この本に登場する、場所も内容も様々な文化部に共通するのは、「10代の本気」だ。

本気だから流せる涙がある。
本気だから悩むことがある。
本気だから知ることのできる人の温かみがある。

読売中高生新聞編集室『部活魂! この文化部がすごい』p.10

 自分のやりたい活動に打ち込むのも、大事なことだ。だがそれだけではなく、自分が体験していない活動、それらに打ち込んでいる仲間にも目を向けると、学校生活はさらに楽しくなるだろう。
 あなたも「10代の本気」を感じ、そして体現してほしい、と願う。

(この記事を書いた人↓)

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