見出し画像

就活前に読むべきだった『何者/朝井リョウ』は就活で疲弊した心を何度も突き刺した

「就活が終わったら『何者』を読もう!」
これが就活に対するモチベーションだった。

ずっと気になっていた『何者』。nntのまま就活関連の本を読むにはソワソワしてしまうし、内定を所持してから安心して読みたい。そう思っていた。


もし過去の自分に会えるなら

ちょうど1年前に遡る。

大学3年生の2月。インターン経験はおろか部活もサークルも何にも所属していない。そのためガクチカなるものが全く無い。

それでも就活解禁の日付は決まっているし、2月にもなれば大学の就活イベントも就活サイトの合同会社説明会も始まる。これにはどうしたって抗えない。

やる気のない私にとって、意識高い系が無双する就活なんてものは大嫌いな行事。スタートダッシュがどうとか語りかけている講師の言葉は耳を通り抜ける。

その時の自分に会えるなら、本を押し付けながらこう叫ぶつもりだ。


『ふざけるな!!今すぐに読め!!!!!今すぐ!!!!!』


そのくらい就活前に読まなかったこと後悔している。




ボロボロの就活

🍧(大学3年生)『夏にスーツなんか暑くて着たくないしぃ〜さっさと終わらせて髪染めて遊び行こ〜っ!!』


…これが叶えばよかったんですけどね。


夏休み前に周りがどんどん内定をもらっても私は面接にすら辿り着かない現実を突きつけられる。


になり、ようやく初めての面接。面接に行ったからといって何かが変わったわけでもなく1次面接落ち当たり前。


(全部自分が悪いのは大前提として)
旅行をしている友人の投稿を横目に夜中までESを作る。負の感情がどんどんと蓄積されていく。インスタなんて見ちゃいけないなと自衛し始める。


進まない就活、している風の就活、



夏になっても終わらない選考を受けに、汗だくになりながら着るスーツも、気が付けば汗をかかなくなる。



季節が変わってしまった。




優秀な学生が消えたはずの市場でも取り残される絶望





自分の理想を捨て、死に物狂いで受けまくる。


涼しい季節になりようやく掴んだ1社目の内定。



ここまでくると弱気にもなる。「なぜ私なんかを採用するのだろうか」「中身なんてどうでもよくて人間だから採用されたのかな」なんて考えながら。


こうして私の就活は終わった。






ようやく本が読める!!!!!!

内定がある以上、『何者』を読んでもしんどくならないはずだ✨



…と思っていた。この時までは。









『何者』を就活後に読んで

比較的ネタバレなしパート

物語の人物に感情移入するということは珍しいものではない。自分に似た思考、気持ちの動き、過去、があれば共感してもっと物語にのめり込むことができる。

『何者』を読み、例に漏れず私は主人公に共感した。といっても、ここが似ているなぁなどふんわりしたものではなく心が通いすぎていた。

まさに主人公=自分。就活に対する主人公の目線が私そのものだった。

そして、就活を進めるにあたって必ず目につくいわゆる「意識高い系就活生」も登場する。私は就活を始める前から「意識高い系就活生」は苦手だし、絶対にこんな就活生になんかなりたくない、とも思っていた。


しかし、就活を終えて気付かされる現実は残酷でいくら意識高い系になりたくないからといって斜に構えて本気で取り組む就活生を鼻で笑う学生より、興味のない話を頷きながら前のめりで聞けて、誰かによって動かされているようなあの不自然なキラキラ笑顔を持っている彼ら彼女らの方がはるかに世渡り上手で就活に向いているということ。


その残酷な現実がまさに、この本の中で蠢いていた。



既に読んだ方向けパート

就活に対する拓人の目線。同じ就活生に対しても、社員に対しても、嫌味ったらしい視点で見ている。恥ずかしながら、まさに私だった。

合同説明会なんかで本当のことを言うわけがない。よそ行きの説明と取り繕った案内だろうと思っていた。社員の言葉を信用できずにいたから、インターン応募、選考の前に必ず口コミを見にいくことが習慣化される。それも1つのサイトだけではない。学生が書き込むサイト、社員が書き込むサイト、元社員が書き込む転職サイト。

とりあえず応募するこの行動がとれなかった。

とにかく拓人の検索履歴には思い当たるところが多すぎる。友人の会社まで調べたことはないが、全く興味がない候補に入れてすらいない業界の会社を調べて悪い口コミを見てはその都度安堵する、そんな日々を過ごしていた。


そして理香の言葉に何度も心をつぶされた。突き刺す言葉のナイフがとても鋭い。いくら正論だとしても理香のような意識高い系にはなりたくないし、そんな学生をずっと鼻で笑い舐めていたい。それでもズルズルと就活を長引かせていた私にとって理香が突き刺す真正面からの指摘は鋭利すぎた。


「カッコ悪い姿のままあがくことができないあんたの本当の姿は、誰にだって伝わってるよ。そんな人、どの会社だって欲しいと思うわけないじゃん」

p318

私は勘違いをしていた。意識高い系就活生は皆、生まれ持った才能で何も疑わず純粋な気持ちでああなっているのだと。

もしかしたら作られたあの不自然なキラキラ笑顔の裏には私の何倍も努力をしている見えない苦労が隠れているのかもしれない。


『何者』を読むまでこの考えには辿り着かなかった。



私は就活をするにあたり全てを憎み斜に構えていたが、そもそもが間違いだったと、就活を終えた今初めて気付いたのだ




後悔

就活を始める前に読めばよかったと本気で後悔しています。だからといって、就活前に読んでいたとしても意識高い系に生まれ変われていたとは思えません。

ただ、理解のできないかけ離れた人種だと思っていた人が同じ人間であり、同じ就活生である、と気付けるだけでも大きな価値があると思います。


意識高い系が苦手であんな血が通ってなさそうな就活生になんかなりたくないと思っている就活前のあなた、きっと何かの役にたつと思います。ぜひ読んでみてください。


私のように就活が終わってから読もうとしていたあなた、今すぐに読むべきです。




#わたしの本棚


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?