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休職に入った勢いで青春18きっぷをひっ掴んで東北一周へと飛び出した話——1日目

0.プロローグ

 諸事情により3月半ばより休職へ。対人関係ですり切れた精神と何も書けなくなった手をリセットするために何ができるか……。
 旅行しかない、それも観光メインではなく電車に乗って車窓からぼーっと外を眺めていられるようなやつ。それならばと、兼ねてより使ってみたかった青春18きっぷを手に半ば衝動的に家を飛び出した。
 衝動的に出かけたため東北を選んだ理由はあまり明確にはないが、私にとってほぼ未開の地だったことと、西に向かうとなると魔の静岡区間が頭をよぎってしまい、反射的に避けたのではないかと今にして思う。

1.行程(1日目)

(到着時刻等は下記のGoogleマイマップに記載しています)

 JR埼京線・川越駅からスタートし、東北一周の第一歩としてまず目指すは杜の都・仙台。
 私にとって東北は北海道へ行く際に飛び越えてしまう未開の地であり、この時点で本州最北の到達点となる。所要時間も7時間半で変わった行程もなく、新幹線・急行車両の使えない青春18きっぷの旅とは如何なものか、お手並み拝見といったところ。

2.川越〜宇都宮

(画像は1日目夜に撮影)

 自動券売機で青春18切符を購入。6枚も発券されたものだから「調べた時は5日分で1枚だったけど1日1枚に変わったのかな?」などと首を捻ってしまった。
 そしてこれから5日間旅の必需品かつお供である切符を手に、いざ行かんと————

————自動改札機へ向かった。
 当然、「ピンポーン」とよくある音が鳴り、改札は通れなかった。
 日付ごとにスタンプを押すんだから当たり前な話ではある。京都の地下鉄・バスの2日間フリー切符は確か自動改札でも通れるようにできているのだが、これは日付印を押す箇所の作りからしてそんなものに対応していない。
 ……とは思っていたのだがもしやと思いつい通してしまった。これまでの疲れか昨日の酒でも残っていたか?通勤ラッシュの時間でなかったことに胸を撫で下ろす。そんな時間にやらかした暁には流れを止めた罪で市中引き回しの刑に処されているに違いない。

 とにもかくにも、有人改札を通り、まずは大宮、そして宇都宮へ。
 正直、この区間はよくある湘南新宿ラインの範囲なのでそこに思いを馳せるところはないのだが、窓から見える街の景色に田園風景が混ざってくるにつれ、「ああ、ホントに飛び出してきたんだな」という実感が沸々と湧いてくる。

2.宇都宮〜黒磯

ジャンク感の強かったフライ餃子。これはこれでアリ。

 宇都宮で餃子を食べ、黒磯へ。

黒磯駅の歩道橋?

 いざ着いた黒磯駅、春を迎えつつも新緑とはいかない時期もあいまってかどうにも荒廃とした雰囲気。架線の多さと黒ずみの目立つ歩道橋のせいで、田舎というより街道の果てというかダンジョンの入り口と言うべきか、何やら来るところまで来てしまった感が否めない。

3.黒磯〜新白河〜郡山〜福島〜仙台

 黒磯からはいよいよ2両編成。そしてついに整理券が登場した。電車でこれを見るのは京都丹後鉄道以来なので、いよいよそこまで来たか、という気分になる。
 ところで、どうも乗客に先程の電車で見かけた顔がちらほら。さては仙台まで同じ電車じゃないか?とふと予感した。実際、見覚えのある何人かは仙台駅の改札で見かけた。かつて東海道本線は熱海駅で18きっぷ利用者らしき集団に出くわしたことはあるが、やはり電車も少ないしある程度同じ行程になるものらしい。ちなみに何度か見かけたからといって声をかけたりそこから物語が始まるということは一切ない。そんなコミュニケーションスキルは地元埼玉どころか前世にでも置いてきたのだろう。

新白河駅

 広々としたロータリーに高層ビルなど一軒もない新白河駅前と、周辺なぞ知ったことかと立派に鎮座する東横イン。どこにでもあると言われている通りこれからの先々にもいたるところに存在し、そして旅行中はほぼ毎日お世話になる。

 東北本線の電車内に津波警報時の注意書きが貼られていた。このような所にもかつての爪跡が認められるが、これは次に同じケースがあったら生き延びるための、未来を見据えた前向きな痕跡なのかもしれない。

北斗星の名残

 福島駅のホームに降り立った際、足元に北斗星の案内が残っていた。学生の頃は北斗星・カシオペア共に健在で、その魅力を友人からよく聞かされていた記憶が微かに残っている。自分もいつという憧れはあったがそれも叶わぬ夢となってしまった。
 確かカシオペアは高級路線(カシオペア紀行?)にシフトして残っていたと思うけれど、じゃあと気軽に乗れるものでもなく……。

たぶん貝田駅周辺?

 虹の根元と思しき箇所。「虹の根元には財宝が眠っている」という言い伝えもあり、電車を飛び降りて金貨の一山でも掘り当てていたら来月にはカシオペア紀行を満喫していたかもしれない。実際は本当の根元という訳ではなく視点が変わると消えてしまうらしい。
 ところで、かつて彩雲を目にした知人はその直後にガチャを回してSSRを引いたとかなんとか。天井1回で6万円くらいが相場なので、金貨1枚分くらいの恩恵はあるのかもしれない。

4.仙台駅到着

(あまりにも寒かったため写真は翌日撮影)

 電車遅延により約15分遅れで仙台駅に到着……寒い!めっちゃ寒い!めっっちゃ風強い!!!
 いくら北上したとはいえ仙台でこの寒さって……気温もそうだが風がとにかく強く、台風でも来ているのかというほど吹き荒れている。ビル風かと思ったがそうではないらしく、街中どこもかしこも吹き飛ばされそうであった。パーキングの看板が頭上で揺れている時など、「これ強風でもげて背後から突っ込んでくるんじゃないか」と恐怖に肩を竦めながら歩いていた。

 それにしても、この行程を1時間半とかで東京まで行ってしまうのだから新幹線は恐ろしい。かつて一度だけ仙台には来たことがあるが、その時は午後に新幹線で仙台を発って、帰宅ののち西武ドームへナイター観戦に赴いていたはずだ。これが普通列車を使おうものなら、観戦どころか帰宅した時には試合が延長12回引き分けになっていてもおかしくない。
 余談だがその試合は栗山巧選手のサヨナラ3ランが勝負を決めた、現地観戦でも五指に入るほどのベストゲームであった。当日ふと思いついて行った試合がこうなったのだから、移動時間が短いというのはそれだけでドラマを生むチャンスが増えるのだろう。そういった点でも新幹線というのは人々に夢を与える存在なのかもしれない。
 今回はそんな用もなく、むしろ何も考えずのんびり車窓を眺めることも目的だったため、青春18きっぷは正にうってつけであった。仙台だからと安直ではあるが牛タンを食べ、2日目に備えることとした。

5.次回予告

 無心で普通列車に揺られることに充実感を得つつも、東北はまだ道半ば。
飯と酒と赤煉瓦に引き寄せられつつ、勢いのまま北へ歩みを進める。

 次回、「2日目 仙台〜青森」
……えっこの区間JRじゃないんですか?


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