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後編 何でもお金で換算する現代 『資本主義』とは何か?について 


前回資本主義とGDPについて書きましたが、資本主義の説明があやふやだったので今回の記事で改めて書き直そうと思います。

今回私が1番に参考にさせていただい著書は、苫米地氏の『超国家権力の正体』です。

前回資本主義はプロテスタントから神性を取っ払ったもの、共産主義はカトリックから神性を取っ払ったものと、ざっくり説明しました。
このことについてもう一度説明し、資本主義から生まれたグローバリズムや多国籍企業の原型についても説明します。


中世ヨーロッパ

舞台は14,15世紀のヨーロッパ。戦争ばかりやってた時代で、ローマカトリックが急激に腐敗したのもこの時期です。「暗黒時代」なんて言われたりもしますね。

17世紀のヨーロッパ

17世紀にヨーロッパの金融資本のトップに上り詰めるのが、オランダ(アムステルダム)🇳🇱です。15世紀の終わり頃からオランダのネーデルラントというところに、多くのユダヤ人が流入しました。理由は、スペイン🇪🇸とポルトガル🇵🇹がキリスト教国家(カトリック)となり、その他の宗教を迫害したからです。これを「レコンキスタ」と言います。

当時ネーデルラントはプロテスタント運動が盛んで反カトリックの国でした。しかし、その領地はハプスブルク家(カトリック)のものだったため、ネーデルラントでも重税をかけたり魔女狩りして、キリスト教信者以外を締め付けていました。
そのため、痺れを切らした現地人らが独立戦争を仕掛けます。これが「オランダ独立戦争(八十年戦争)」です。

八十年戦争

結局、人々は戦争には勝てずネーデルラントからアムステルダムに移り商売を始めます。
その頃、ヨーロッパを支配していたスペイン=ハプスブルク家は、南米大陸で奴隷を使って銀を掘らせて大量の銀をヨーロッパに運びました。強い自国産業がなかったスペインは、アムステルダムの商売人たちに銀を渡し、モノを作らせて自国に輸入しています。

この大量の銀によって中世のヨーロッパは経済成長を果たすのですが、スペインは銀を消費するだけで産業が発展したのは銀を得たオランダです。
この頃に「チューリップバブル」も起こり、オランダ東インド会社に多くの人が投資をするバブル現象が起きています。


奴隷貿易

ヨーロッパは銀を南米大陸以外からも調達しました。それがマニラ(フィリピン)と日本です。西洋と東洋の流入口です。

スペインはマニラや日本とも取引を行い、明も銀を欲しがっていたため貿易をしていました。
(ちなみに、イギリスで紅茶文化が発展したのもこの貿易によって明のお茶がヨーロッパに輸入されたためです)。

先ほどスペインがヨーロッパに大量の銀を持ち込んだため経済発展に繋がったと書きましたが、その銀は主に南米大陸で奴隷に採掘させたものです。
奴隷貿易を行う理由は何か。人件費の削減です。資本主義は利益を追求します。現代のグローバリズムの原型はここにあります。

1500年代にザビエル(イエズス会)が日本にやってきますが、実は当時、数は南米やインドほどではないですが、日本人を奴隷貿易しています。
当時のローマ教皇が🇪🇸と🇵🇹に奴隷を認めていたからです。ザビエルたちはポルトガル船に乗っていたため、奴隷貿易を辞めさせることはできなかったんですね。

フランシスコ・ザビエル

現代でも「安く仕入れて高く売る」の原則は変わりません。安く仕入れるにはコストを削減しますが、人件費は企業にとって最も簡易に削減できるコストのうちの1つ。
多国籍企業の動向をこの視点で観察すると、見え方が変わるのではないでしょうか。


プロテスタントの誕生

ここからが本題です。
前置きが随分と長くなってしまいましたが、本題に行くにはどうしても必要でした。

記事の最初にオランダがスペイン=ハプスブルク家(神聖ローマ帝国)に対して独立戦争を仕掛けたと書きましたが、これはある意味「神への反逆」です。
ローマ教皇とは簡単に言うと、神の代理人であり、その教皇が支配する国の領地の支配権を与えられた領地主はその領地の王ですから、同時に「王への反逆」でもあります。

反逆するということは自分たちの信念(後ろ盾・根拠)があったわけですが、それがプロテスタントです。
当時14〜15世紀のローマ・カトリックは腐敗していたため、「神不在」みたいな時期でした。宗教が凄く世俗的になり、地位を金で買わせたり、免罪符をばら撒いたりして金の力を欲求する王だったのです。

第214代アレクサンデル6世の風刺画

プロテスタントの指導者は周知の通り、マルチンルターです。ルターは簡単に言うと、「今の教会は、金を持ってる人しか救われない仕組みになっているからカトリックはダメだ」とし、免罪符を買うのではなく「聖書を読め」と勧めたのです(プロテスタンティズム)。
この流れを汲んでいたのが、戦争を仕掛けたネーデルラントでした。カトリックvsプロテスタントです。


カルヴァン派の誕生

16世紀、プロテスタントの中から「カルヴァン派」という聖書原理主義の一派が誕生します。
「原理主義」とは、簡単に言うと聖書の教えに忠実に守るかなり厳し目の考え方。

「神に祈ればOK」としたプロテスタントは、「金を払えばOK」としたカトリックと同じじゃないか!ということで誕生したカルヴァン派は、「予定説」を展開。

"仕事は天職で、神が定めた職業に励むことは神の意思に沿うことであり、職業に励むことは神の道である"

カルヴァン派

では、稼いだお金をどうすれば良いか?カルヴァン派はお金に興味がない立場なので、「天職=神が定めた職業に使いなさい」と、したのです。
つまり、仕事で儲けることはOKという考え方から資本主義は生まれました。

マックスヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』


清貧が良しとされた時代から今度は、懸命に働いて稼ぐことが良しとされる時代へ。
いつの時代も神に左右されるヨーロッパ人を何だか気の毒に思いますが、私たちが当たり前に信じている価値観なんて、言ってしまえば一部の人間によって決められているんです。
このことはよく肝に銘じておく必要があります。

※余談ですが、先日あるオンラインセミナーに参加しました。講師の方が「お金を稼いでいる人は価値を与えている人だ」、「お金は稼いでナンボ」というような発言をしており、資本主義を"しっかり"体現しているなぁと感じました…。


資本主義の終焉

いかがでしたでしょうか。
資本主義が浸透している我が国では現在、それを軸として法律やルールが決められていて、その枠組みの中で私たちは生活しています。これは良いとか悪いとかそういう話ではなく、"事実"を述べているのです。

資本主義によって生まれた新しいモノやサービスを人々が享受し、生活レベルを上げたこと自体は良かったと思います。
経済が成長し衣食住が整い、医療レベルも向上、お金があれば国外へ旅行にも行ける、素晴らしいと思います。ただし、これは一側面の話。

目を逸らしてはいけない事実があります。それは、「資本主義には限界がある」ということ。
象徴的な出来事が2008年に起こりました、そう、『リーマン・ショック』です。

先日『マネー・ショート』という映画を見たのですが、この映画ではリーマンショックが何故起きたのか、バブルとはどういうことなのかについて語られています。

『マネー・ショート』

バブルが起こる原因を一言で言えば、「皆が資産が今後も上がり続けると信じている」から。
歴史家のマークトウェインの言葉を引用します。

"厄介なのは知らないことではない。
知らないのに知っていると思い込んでいることだ"

マークトウェイン

リーマンショックが起きるきっかけとなったのは「パリバショック」→サブプライムローンの深刻化です。
不動産神話が流れ、銀行は本来であれば住宅ローンを組めないはず(返済の見込みがないから)の低所得者やストリッパーなど不安定な収入で生活している人にまで住宅ローンを販売します、「大丈夫、価値は今後も上がり続けるから」と。

サブプライムローン(低所得者向けローン)が沢山売られると今度は、そのローンを束ねて1つのパッケージとして証券化し、金融商品として販売します。いわゆるMBS(モーゲージ債)です。
そして、今度はモーゲージ債に対する保険(CDS)が販売され、そのCDSを束ねて作った派生商品合成CODが販売されます。もう訳わからないですよね…。

実体経済とは関係ない目に見えない「情報空間」で行われる取引と金利の性質を利用してお金稼ぎが行われており、銀行家や不動産業者を含め、多くの人が本質に気づいていませんでした。
※(注)一部の金融機関は知っており分かった上で無知な国民に販売しています。そのことは映画でもよく表現されています。

その結果、600万人もの失業者を出したと言われています。
ちなみにアメリカはカルヴァン派の流れを汲んだピューリタンの人たちが作った国で、勿論、先ほど説明した予定説や仕事=天職の考え方が浸透しています。


まとめ

リーマンショックで資本主義システムは限界があるということをみに沁みて感じたはずなのに、その後も相変わらず何とかバブルとかが時折流行っています。
2018年の仮想通貨バブルや現在の米国バブル、そして、今後日本の都市部のマンションを中心に起こるであろう不動産バブル。

資本主義システムは「無限膨張システム」であり、金利分を返すために経済を大きくしマネーを増やさないといけません。マネーが市場に流通するということはその分インフレになるわけですが、それで良いのです。
主要国が物価上昇率2%と定めているのは、失業率が1番低くなるフィリップス曲線を根拠にしていると話している人もいますが、単純に誰かが借金して元本と金利分を稼ぐ、これの繰り返し。持続可能ではないことは明白です。

そして、その時限爆弾が近いうちに爆発するであろうと言われていますね。しかし、そんな事を話す人は多くはいません。投資のことはよく分からないのにNISAで舞い上がっちゃった人たちは損をしても自己責任という自覚があってやっているのでしょうか。わかりません。

資本主義が永遠でないことはこれまで説明した通りで、そういう価値観というのは悪く言えば意図的に作られており、形を変えて何度も大衆に浸透させるからです。次の金融システムは一体どんなシステムでしょうか。

お金を価値観を考える上で今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。

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