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久しぶりに会う話

子どもの頃に知り合った大人と、何年も経ってから再開する時があります。
昔も何度もありましたし、今でもあります。

中でも1番印象に残っていることがあります。

中学の時に私はバス通学でした。
バスの運転手さんには雑談したりなど良くしてもらっていました。
今でも連絡をとっている方もいますが、ほとんどの方は、地元を出てしまった私にはもうどうしているのか分かりません。

大学2年の春のことです。
履修登録はネット上でだったので学期開始ギリギリまで地元に残っていました。
地元は2時間に1本のバスしか走っていない田舎なのに運転免許は持っていなかったので、いつも家から出かける時はバスを使っていました。

その日もバスを利用すると運転していたのは中学の時にお世話になった運転手さんの1人でした。
4〜5年ぶりといったところでしょうか。

「おー、元気か、大学楽しいか」

降車時に、私の挨拶に返してくれた言葉を私はきっとずっと忘れないと思います。

もう覚えていないだろうと思っていたのです。
覚えていたとしても、いつ知り合った中学生だったかなんて忘れてしまっていると思っていました。

その方は覚えていたばかりか順調に進学していれば今どの学校なのか、数えてくれていました。

私は人に影響を与えるほどの人格者ではないし、誰かの印象に残るほど、人よりできた試しもない。
そんなふうに、鬱々と泥の中に沈みかけるたびに息をするためだけに、浮かび上がろうとするような人間です。

その頃ちょうど前の年にちょっと嫌なことがあり、今までの人生の中で私を覚えていてくれる人はいなくてもしょうがないと気持ちが沈んでいた頃でした。

誰かが覚えていてくれるんだ。
顔を見ていなくても誰かの中で私は歳をとり生き続けていたのだ。

とても感動した出来事でした。

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