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Netflixで『紅き大魚の伝説』ふたたび観ましたー(ネタバレなし)

 昨年に鑑賞済みの作品なのですが、再度視聴する機会があったので感想を記録しておきたいと思いました。


個人的な評価

各要素

ストーリー  S
脚本     B+
構成・演出  C
思想     S
作画        A
キャラ    B
声優・歌   C
バランス   C+
総合     A-

S→人生に深く刻まれる満足
A→大変に感動した
B→よかった
C→個人的にイマイチ

内容と感想

 本作は中国のアニメ作家、梁旋さん、張春さんの監督デビュー作で、完成までに12年を要した大作です。

原作・脚本も担当した梁旋さん。1982年生まれです

冒頭のあらすじ

 内容的には、人間界とは別の海の底の魂世界に住む少女・チュンが、16歳になったので一人前の大人になるための試練として1週間人間界に修行に向かうところから始まる物語です。
 魂世界から人間界に行くと、チュンは紅いイルカの姿になります。チュンは母親から「人間と関わってはいけないよ」と口を酸っぱくして言われていました。

 人間界に着くと、魂世界とは違ってすべてのものが美しく、鮮明に、輝いて映ります。感動して数日を泳いで過ごすチュンですが、ある日嵐になり、荒れる海原に気を取られていると、網にかかったイルカたちに遭遇します。
 捕まったイルカたちを見て動揺し、早くその場から逃れようとして自分も別の罠にかかってしまいます。

 その様子を崖から見ていた人間の少年は、彼女を助けようと大荒れの海に飛び込み、網を切って助けてくれますが、その直後大渦に飲まれ命を落としてしまいます。
 成人の儀式を無事終え、魂世界に戻ってきたチュンでしたが、自分のせいで少年が死んでしまった事実に意気消沈します。

 そして、我が身を捨ててまで自分を助けてくれた少年の献身さに心を打たれたチュンは、命を救われた恩を返すために、彼を生き返らせることを決意するのでした。
 しかし、自然の摂理に反する願いを叶えるには、それ相応の厳しい代償を支払う必要がありました。それは、自らの体の一番美しいパーツを差し出すか、寿命が半分になるかの二択でした―

良かったところ

 ストーリーの根本に老荘思想を取り入れていて、人生哲学的に深い物語になっています。序盤から主人公のチュンが、人の魂はどこから来てどこへ行くのか?運命の正体とは何か?的な回想をするところから始まり、人はどう生きるべきか?という自問自答に終わります。
 日本のアニメ監督だと押井守さんくらいしかやらないような、息の詰まるほぼ笑いのない構成ですが、個人的には中国人らしくて素晴らしく思えました。 
 作画も中国の大自然を見事に描いていて、完成に12年の歳月を要したのも頷けます。作風的に宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』、アンデルセン・ディズニーの『人魚姫』の影響を強く感じます。

イマイチだったところ

 ストーリーや思想が非の打ちどころがない素晴らしいものである一方で、表現方法に課題を多く感じました。まず、BGMがほとんどないです。そのため感動的なシーンでも音がないため感情面で精神的な爆発に至りません。
 また、ストーリーが一本調子で展開に緩急がありません。登場人物たちの心情を深く描き切れてない置き去り感を感じます。主人公しか知りえない情報がなぜか周知の事実になっていたりもします。

 脚本的にも素晴らしいのですが、いいところを全部、主人公の祖父や祖母と言った老師的ポジションのキャラが持って行ってしまうのも残念でした。
 そして、キャラクターの成長や生き様を表現するというより、人間という生命体を客観的にみた訓話的な説教の方に常に力点が注がれているのも少しうーん…と感じました。

 日本人と中国人の感性の違いと言えばそれまでですが、説明や表現が必要な部分をあっさり流してしまって、言及しなくていいところを説教される感がありましたね^^;

まとめ

 中国のアニメがだんだん栄えてきそうな昨今。中国のゲーム・アニメというといまだに三国志のイメージが強い私ですが、中国の歴史なのになぜか日本人がネタにしていて、日本人が作った方がいい作品が作れるという謎の状況に終止符が打たれる日もそう遠くないかもしれません。

 中国の方の感性だと、自分や他人の不幸にはあまり心動かされることなく、受け入れて淡々と対処し描いていく印象を受けます。
 しかし、自分にとって大切な存在に関しては、世界すべてを敵に回してでも守るという思想を感じる作品でした。次回作にも大いに期待ですね。お読みいただきありがとうございました。

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