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甥のYouTube依存

子供がスマートフォンを持つ年齢が如実に下がってきていることは周知の事実である。それに伴い、子供の「スマホ依存」「YouTube依存」が深刻な問題になっていることも看過できない。
電車の中やファミリーレストランでの食事中にも、まだ歩けもしないような年齢の子にスマホで動画を見せている親が散見される。
大人しくさせたい気持ちも、すんなり食事を摂ってほしい気持ちも分からないでもないが、本当にそのスマホは必要なのであろうか。はたまた、このようや疑問は子育て未経験の青二才の綺麗事であろうか。
サイゼリヤでミラノ風ドリアを頬張りつつ、そういった親子連れを眺めてはそう思う。

先日、義弟家族が我が家にやってきた。夫の弟とその奥さん、そしてその子供たちである。
義弟夫妻はとても思いやりがあり、二人とも歳が私より上ということもあり、何かあればいつも親身になってくれる人たちだ。この日もお菓子などに加えて、大きな神社で私に安産のお守りを買ってきてくれ、その心遣いに涙が出そうであった。

そんな義弟夫妻の子は、五歳の女の子と三歳の男の子である。私の姪、甥にあたる。
成長につれ自我が芽生えてきたのであろうか。今までは素直だった二人はかなり我儘になっていた。特に甥は親の言うことを聞かず、暴れたりモノを汚したりと大変であった。
子供なので、別にそのくらいのことは此方は何とも思っていなかったのだが、義弟夫妻はしきりに我々に謝罪をしていた。相当手を焼いているようである。
義弟は、ここ最近は甥の我儘に対してかなり威圧的に叱ることが増えた。最初は、まだ幼いのに厳しいのではないかと感じたが、これは男同士の闘いなのかもしれぬ。

そんな甥の様子の中で、衝撃を受けたものがある。
我が家のテレビのリモコンにはYouTubeの起動ボタンが存在するのだが、甥はそのYouTubeのマークを見つけるや否やリモコンを手に取り「YouTubeをつけて」と母親にせがみ始めた。
甥と姪は自宅でいつもYouTubeを観て過ごしており、かなりハマってしまっているのだそうだ。
義弟夫妻は勿論「ここは伯父さん伯母さんのおうちなんだからダメ」と諭したが聞かず、夫の許しもあり、YouTubeで甥のお望みの動画を流すことにした。

YouTubeのあの赤いシンボルマークを覚えていて、それを見つけた瞬間、自宅でもない場所にもかかわらず「観たい」と主張するなんて…。余程の頻度で動画を視聴しているのであろう。


さて、甥のお気に入りの動画を再生したはよいが、今度は始まると同時に「あのシーンまでスキップしてほしい」と要求し始めた。
なんと甥は、自ら操作することまではできずとも、好きなシーンまでスキップしたり巻き戻したりできることまで知っているのだ。
自宅でもこの調子なようで、義妹は「もう私、どこがどのシーンか全部覚えちゃったよ…」と疲弊した様子でこぼしていた。

その後、出かけた外食先でも甥は我儘をやめず、両親をことごとく困らせていた。結局食事も摂らず、終始親のスマホで動画を観て過ごしてしまった。


義妹は我が子のYouTube依存に対し「便利な時は本当に便利なんだけど、これではね」と嘆く。
義弟も義妹も仕事の傍ら、本当に子育てを頑張っていると思うし、スマホやYouTubeに頼りっぱなしというわけではないように見える。しかしながら、ほんの時たま観せてしまうせいでこの有様なのであれば、何という影響力の凄まじさであろうか。

私が目にした某国立大学のとある教授の見解では、幼児期からスマホやYouTubeに夢中になることが、脳の前頭前野の発達に悪影響を及ぼし、必要なコミュニケーション能力や思考力が身につくことを妨げるのだそうだ。
そしてそれが有害コンテンツでなく、幼児向けアニメであったとしても関係ないと述べている。
又、別の専門家の見解では、動画だと短時間で情報を収集することが可能なため、それに慣れてしまうと、長時間の学習や授業に集中できなくなるのだそうだ。

スマホ普及のせいで近年、子供が持つ自己表現や他人の気持ちを理解する力、そして集中力は著しく落ちているという。諸説あるかもしれぬが、確実に幼児の脳を蝕んでいるらしい。

それに、地上波放送の教育番組やアニメであれば必ず定刻で終わるが、YouTubeは永遠に観ることができてしまうという点も怖い。
親がいくら「これで最後」とか「あと何分だけね」などとリミットを設けようとしたところで、三〜四歳未満の子供がそんなことを理解できるだろうか。できなければ癇癪を起こし、断末魔のような声をあげるだろう。

これが中学、高校まで続いたら最早勉強どころではない。素人のお遊戯ダンスなどのようなしょうもないショートムービーを観て過ごす、木偶の坊の完成である。


しかし他所様のことをとやかく言っている場合ではない。近く生まれてくる私たちの子も、そんな風になってしまう可能性がある。
私と夫は、我が子に最低限の物心が着くまでは絶対にスマホやYouTubeを使わせないこと、親が使っているところも極力見せないようにすることを約束した。

別に東大や京大へ進んでもらいたいわけではないが、より馬鹿になる可能性がある方向へ敢えて導く必要はない。リスクはなるべく取り除いていくことが大切なのだ。
代わりに、視覚探索絵本の「ミッケ」でも与えるのがよいだろうかと、今から考えを巡らせているのであった。


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