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キングダム考察 45巻 信と羌瘣の武将としての絆 「お守り」エピソードは二人のバディとしての絆の象徴だった

【考察その28】


一連で作成していた、信と羌瘣の「黒羊戦で顕在化した武人としての絆」
最終考察記事になります。


<1つめ>

二人の剣士としての「手合わせ」による絆が、
黒羊のドラマティックな救出ハグに結びついた話から始まり、


<2つめ>

そもそも、羌瘣自身が持っていた「刺客」の性質が
「武将」として歪であり、黒羊戦は羌瘣個人としても、
それに関する本人の自覚と脱却の機会でもありました。


<3つめ>

二人がまず黒羊戦の前まで「飛信隊」でどういう立ち位置にあったか、
二人がお互いに対してどのようなプレッシャーを抱えていたかの
前提があり、


<4つめ>

尾平との確執により、
二人が併せて持っていた「飛信隊」の中でのモヤモヤを顕在化し、
その課題を各自で認めたのが黒羊戦だった、
と言う流れで記事を進めてきました。


今回の記事は4つの記事を前提として方向づけられた
「二人の武将としての絆」の最終的な言語化から、
45巻おまけ漫画「お守り」がその象徴であると
今回は書いていくつもりです。


今回の「お守り」考察は、
以前別記事で書いた「お守り」考察のリメイクになります。
以前の記事からその考察は削除します。

その時は信側の気持ちにしかフォーカスしていなかったので、
改めて羌瘣視線の考察も今回は加筆しています。

前の記事を読んだことがある方も、
また新たな気持ちでお付き合いいただければ幸いです。



考察:二人が思いを一つに進み始めたタイミング


秦軍の「内輪揉め」から、飛信隊への最後の指令の後、
桓騎の進言(198ページ)通り半日で黒羊戦は終結し、
侵略事後の砦化と警備業務に回った飛信隊の様子を
丘の上から憂いて眺める信に羌瘣が話かけに行くシーン
(45巻51ページ〜)が描かれました。


このシーンは著雍戦2日目夜に、
信が羌瘣を謝りに訪ねたシーンのオマージュであると
上リンク記事の3番目の考察で触れていました。


二人が各々の立場で隊員たちと共有した「自分の歪さ」に加え、
桓騎の挙げた「戦果の大きさ」を実感させられた、
その「反省会」のような位置付けのシーンです。


信「桓騎よりも先に大将軍になる」(53ページ)


信が桓騎を「軍隊の律として止められない」ならば
立場を上にするしか止められないと認識した現れでしょう。


羌瘣「先は難しいな、だが並びさえすれば十分止められる」


桓騎の愚行が「刺客的な剣の腕」よりも練られた策として有効だと認め、
目的の達成のためにアプローチを変える視点を持った現れでしょう。


信と羌瘣は、尾平との確執シーンでのそれぞれの気づきから、
信は「集団の中で孤独の壁を作る」覚悟を、
羌瘣は「孤軍奮闘の壁を壊して集団としての戦いをしていく」覚悟
固めたと上記記事では述べていました。


二人の覚悟は異なっていますが、見方を変えると、
信はこの先、これまで羌瘣が抱えていた心の方向性を目指すことになり、
羌瘣は、信がずっと理想としていた方向性を追っていく形となるため、
それぞれが目指す方向について、それぞれが補い合える形になっています。

「軍隊の中の孤独」という括りで二人が共通のテーマに
立ち向かう出発点となったのが、この黒羊戦だったのでしょう。


また作中では、

岐鮑「信隊長や羌瘣副長みたいな怪物」(42巻149ページ)

尾平「(信と羌瘣)二人とも普通の人間じゃねえし」(44巻166ページ)

敵兵「あの男、怪物か!」(信に対して:43巻209ページ)
敵兵「化物か、あいつ」(羌瘣に対して:44巻32ページ)

以上のように、信と羌瘣が並の人間から外れている者同士であることも
強調されていました。

この黒羊戦の話の先、「並の人たち」では分かり合えない
苦労や葛藤を二人で支えていく
と言う伏線でもあるのでしょう。


この「反省会」の描写は、
上記リンク記事で、羌瘣が「信のやり方で信が大将軍になる」
ことを目指す方向性を信に対して表明したと考察していました。

そして信もその表明を受けて、
飛信隊を「羌瘣と二人のもの」と認識し始めたのは
このタイミングだったと想像しています。


43巻おまけ漫画で布石されていた、
元々土台にある対等なはずの二人の立ち位置。

そして目指す方向は結局、2人とも同じだった。
自分たちの課題もお互いに見ることができた。

一人で課題を抱え込まないで、二人で解決出来ればいい。

少なくとも信は、この時点でこのように意識したと思います。


黒羊戦の内輪揉めは、味方兵殺しの件で
慶舎(敵総大将)討ち取りの功相殺が、結果だけ見ると
信(大将)の功を羌瘣(副長)が台無しにした結果となってます。

信「実際死人出したのは羌瘣なんだけどな」
羌瘣「忘れた」
(45巻67ページ)

このやり取りを許容出来ているのが、その現れだと思います。
たまたま今回が、羌瘣を信が補う形になっただけだと言うことでしょう。


考察:お守りエピソードに含まれた二人の絆


45巻おまけ漫画「お守り」
これ、「おまけ」のはずなのになんでこんなに素晴らしいエピソードが
なぜ「おまけ」に留まっているのか、
その謎が解き明かされる日が来るのでしょうか。


45巻215ページ、羌瘣が紫水晶の腕飾りを眺めているところを見て
信が「お前を助けてくれたバァさんが持ってた」ものと察せられたのは、
事前に助けられた時のエピソードを羌瘣から聞いていた
と言うことでしょう。


「(混バァへの)ご利益はなかったみたいだ」と惜しむ羌瘣に信は、
桓騎のとこの場が無事に収まったのはそのバァさんからのご利益かも、
と慰めます。

助けてくれたエピソードと共に、信は混バァが
羌瘣にお守りを授けようとしていた(44巻114ページ)ことも
聞いていたのかもしれません。

それは混バァの「羌瘣に無事でいてほしい」思いの象徴だったはずで、
実際に貰うことが出来なかったけど、
間接的に混バァの願いはちゃんと叶えられたのだと
信は解釈してくれたのです。


その信の言葉を、羌瘣は「!」と気に留めました。
それは彼女が気づかなかったこの腕飾りの「お守り」としての効力を
信が教えてくれたからなのが主要な理由ではあるでしょう。

同時に、彼女がイメージする「武将としてすがるもの」、
具体的には「離眼の守り子」に対して「こうあって欲しい」と
思っていた意味と重なっていた
のかもしれません。


自分がやっと理解できた?と思っていた「お守り」について
信が理解しているのが意外だ、不思議だ(失敬な笑)などと思ったのか、
羌瘣はなんと返していいか分からずしばし黙って信を見つめる中、
信も少しの沈黙の後、唐突に羌瘣に問いかけます。

信「お前、お守り持ってねーの?」
羌瘣「いや、持ってない」
(216ページ)

今手にしている混バァの「腕飾り」は、
自分を守ってはくれたかもしれないけど、
「離眼の守り子」のように「自分のために」授けられたものではなく
そう言う意味で「自分は持ってない」と言ったのでしょう。

信「俺も持ってねぇ」

信も同様に「自分のために授けられたものは持ってない」と言う意味で
言ったはずですが、羌瘣はまだ信が自分と同じ意図であるかは
半信半疑だったのでしょう。

腕飾りにご利益があったと信が先に言ってたこともあったので
仕方はないですが、腕飾りが欲しい意味に捉えてしまったのは
正直笑えました(笑)。

「縁起悪ぃ」との信の返しは、もしかすると羌瘣が意を汲んでくれなかった
拗ねもあったかもしれません(笑)。


だからか信は早速方向修正するために、まどろっこしいことはせず、
「今度ひとつお前に(お守りの石を)買ってやるよ」
とストレートにこの日の本命の内容を口走りました。

「・・・え?」
と戸惑う羌瘣を横目にして照れが発生し、つい
「それでご利益ありそうならば俺も買う」と照れ隠しをすかさず
言ってしまったのでしょう(笑)。


ですがそれは先の「俺も持っていない」の発言が実は布石であり、
「羌瘣から自分のために石(お守り)を授けてほしい」と言う
意思表示でもあったはずです。

なので、力のある石なんて見ればわかると
羌瘣が言ってくれたのをいいことに
さらっと「一緒に石を買いに行こう」(217ページ)
の流れに信は持って行ったのでしょう。


信が羌瘣に石(お守り)を授けたいのは、
信に「羌瘣がボロボロにならないように守るのは自分」
と言う信念があることが前提ならば、
「羌瘣を守りたい」意味では当然でしょう。


ですが「羌瘣から自分に授けて欲しい」とも思ったのは、
上リンクの記事最後の考察で述べた、
いつの間にか自分が羌瘣への期待値を引き上げてしまう負い目
あってこそでしょう。


ボロボロになる代わりが「石を自分に授けてくれる」ことである、
すなわち、

羌瘣が自分に選んでくれるお守りは、
きっと混バァの”その石”のように、
お前が身をボロボロにしなくても、
俺らを守る有効な”お守り”になってくれるはず。

と言う願いを含んでいるのだと思います。


「石を買ってやる」と信から聞いた羌瘣が戸惑ったのは、
これも上リンクの記事最後の考察で述べた、
自分が「信のためにマストになる働きをしなくてはならない」業
背負っていくと思い込んでいたため、
まさか信が「自分の無事を祈る」意味を込めるお守りを
授けてくれるとは想像もしていなかったのでしょう。

ですが信のこの先向かう「大将軍」の道のりに、
信のやり方で従っていく思いの共有をしていたことは確かであり、
「二人で買いに行く」と、その思いを共有する象徴が
2人の間に持てることは、
聞いた直後の目のアップを見るに、とても嬉しかったはずです。


ですが「ああ、・・・覚えていたらな」と羌瘣らしくツンデれたのは、
改めて混バァの腕飾りを見て、物理的に石があろうがなかろうが、
気持ちは受け止めたから、今回の混バァの思いのように、
自分(たち)の思いを乗せるものを、必ずしも買いに行く必要ないよ
・・・と伝えたかったのでしょう。


信も羌瘣のその返しに「・・・へへっ」と満足したようでした。
きっと信も、実際にお守りを本当に買いに行くこと自体は
重要ではなかったのでしょう。

お互いが、お互いの無事を願い合う。
お互いの存在自体が自分たちの「お守り」である。

そのことを傍に今後も戦い続けることを認識しあえたと、
信は実感出来たんだと思います。


「二人でお互いの想いを乗せた石を買いに行く」と言う約束、
現代の風習(エンゲージリング笑)が根付いている我々にとっては、
あの熱烈(?)な救出ハグを見た後なのもあるんでしょうが、
なんでこれが「結婚の約束」じゃないのか(笑)
本当に不思議でならないですが

それがその前二人で丘の上で確認しあった「大将軍までの二人の絆」が
すごく大きかった
からに他ならないでしょう。


あと、この先朱海平原の戦いの中、
信が龐煖との戦いで命を落としてしまったことで、
ここでの絆はまだ「二人の絆」としては少し緩い必要があるでしょう。

そのことについて以前考察したことがあったので(記事後半です)
よろしければ読んでみてください。


ここから残念ながら物語上で信と羌瘣の絡みが
しばらくなくなってしまいます。

なので救出ハグも「お守り」漫画も
その存在を忘れかけることになるのですが

「お守り」漫画は今後、重要な伏線をまだ持っていると私は信じています。


書き直したこの↓考察まとめで頭出しだけしちゃいました。
興味あれば見てみてください(笑)。


最後に


自分は当初、この「お守り」エピソードは私は、
考察内にも書いたのですが、信が「お守りを買ってやる」と言ったのが
本気でその「エンゲージリング」の意味を込めてだと
信じて読んでました(笑)。
それほど救出ハグの印象に引っ張られまくってました(笑)。

ただそれだと、羌瘣が「覚えていたらな」と言った後の、
信の満足げな「・・・へへっ」がどうにも理解できず、
スルーせざるを得ず意識して無視してました。(ややこしい笑)


しかも、結局実際に今の今まで二人で石を
買いに行ってはいないんですよね、きっと。

なのでそれこそこの漫画は
「二人が約束の石をそのうち買いに行く」伏線だと信じていたのです、
ハイ。


この考えが「ちがうかも?」と思い始めたのは、
このNoteで信のプロポーズ周りの記事を書き始めてからでした。
(昔の記事でも、これがそんな伏線と期待しているとも
 実際書いていました。→現在修正済み)

このおまけ漫画はこれはこれで上記のような内容で完結しており、
その後の「二人の男女としての伏線」は別にあると言う方が自然だなぁと、
今は思っています。


仮に、このエピソードの通りならば、
信と羌瘣が、万一男女として結ばれない設定だったとしても、
上記の関係性がある限り、信も羌瘣も、
この上なく幸せであると私は思っています。

と言うのは、私自身が「男女の関係なくても」
お互いの全てを委ねて得られる信頼感が持てる間柄は存在すると
信じているからです。

実際にその相手が得られるならば、
人生もう悔いなしであるとも信じています。


二人をそんな間柄にしてくれて、作者様には本当に感謝です。
そんな間柄を描いてくれたから、自分にここまでキングダムを
長く好きで居させてくれたのだと私は思っています。

ま、今となっては、もうそうじゃない種明かしがされてしまっているので、
どうでもいいことなんですけどね(笑)。

今の私はもう二人がいかにどれほど熱く結ばれるかの
興味しかありません(爆)。


何はともあれ。
複数記事に渡って深堀したかった「信と羌瘣の武人としての絆」考察を
なんとか無事に書き切ることが出来て、個人的にも大満足です。

もし全ての考察に目を通してくださっている方がいらっしゃるのでしたら
もうひたすら感謝しかありません。
長くお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。






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