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いけばな歳時記

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いけばなに使われる花材は、四季の移ろいを映す「季語」のような、連綿とつながる文化の結び目であり、いけばな作例を使った「歳時記」としてまとめることができます。
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#広瀨典丈

いけばな歳時記 ナツツバキ

いけばな歳時記 ナツツバキ

 ナツツバキ(シャラ)は東アジア温帯に分布するツバキ科の樹木。初夏、朝に開花、夕に散るツバキに似た白い一日花を咲かせます。花葉が少し小さいヒメシャラも含め、ツバキとは異なる落葉樹。葉も薄く秋には紅葉します。
 仏典の沙羅双樹と見立て、寺にも植えられますが、まったく別種です。
 上作 ヒメシャラとハンゲショウを合わせた自然調→広瀬テキスト45p。

上左 名古屋高針西友うつぎ会展玄関花
上右 鉄線オ

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いけばな歳時記 ヤマボウシ

いけばな歳時記 ヤマボウシ

 ヤマボウシは東アジアに分布するミズキ属の広葉樹。初夏、近縁のハナミズキ同様、白・ピンクの苞葉(花を囲む葉)をつけます。①ヤマボウシ②ハナミズキの違いは、1.開花時期①が初夏②は中春・2.葉の出①が花より前②は花が先・3.苞葉の形①は先が尖り②は凹むか丸い、などです。
 秋には赤い実、紅葉も黄・ピンク~赤~紫と多色に染まりきれいです。
 上作は、ヤマボウシ一種いけ→広瀬テキスト75p

上左 ヤマ

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いけばな歳時記 カンパニュラ

いけばな歳時記 カンパニュラ

 カンパニュラ・ホタルブクロは北半球温冷帯に分布するキキョウ科草本。初夏~秋、茎先に青~青紫・赤紫・白など釣り鐘型の花を複数個つけます。
 日本のホタルブクロは花先が真っ直ぐですが、栽培種カンパニュラは花先が反転するものが多く、主に地中海産の改良種です。
 上作 ハラン・ブラックリーフ・カンパニュラ・カスミソウによる構成。

上左 アケビ・ホタルブクロによる自然調掛け花→広瀬テキスト35p
上右 

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いけばな歳時記 キンシバイ ビヨウヤナギ

いけばな歳時記 キンシバイ ビヨウヤナギ

 キンシバイは中国原産のヒペリカム(オトギリソウ)の仲間の小低木。初夏に黄色い五弁花を咲かせます。ヒペリカム(オトギリソウ)は外見の似た花が多く、日本ではビヨウヤナギ・ヒペリカムを区別し、ヒペリカムは花卉市場では実を扱うものが主流です。
 上作は、ボクオブジェにキンシバイを絡ませた構成→広瀬テキスト82p

上左 ビヨウヤナギ・ドクダミによる自然調自由花→広瀬テキスト19p
 ビヨウヤナギの特徴は

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いけばな歳時記 シモツケ

いけばな歳時記 シモツケ

 シモツケは東アジア温帯に分布する落葉低木でユキヤナギ・コデマリの仲間。初夏、紅~ピンクの小花を集めた花葉をつけます。枝のねばりは無く折れやすいので注意が必要です。
 上作 ツワブキの葉の間に花を覗かせたマッス構成→広瀬テキスト57p

上左 花後葉を取ったフジと合わせた自然調自由花→広瀬テキスト45p。
上右 うつぎ会研究会(剣山無しで水盤にいける)見本花。アリウムを組んで固定、ガラス瓶を掛けて

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いけばな歳時記 チガヤ

いけばな歳時記 チガヤ

 チガヤはイネ科チガヤ属の多年草。アジア中西部・日本列島全土・アフリカ・オーストラリアの日当たりに群落を作って分布。初夏、新芽を噛むと甘い白~黄・赤褐色の花穂(ツバナ)をつけ、秋には草紅葉も楽しめます。
 上作は、愛万知博 市民プロジェクトデモンストレーション下いけ。 水から離すとホケますが、問題なく使えます。バランス→広瀬テキスト63p

上左 シラン・パーム繊維で主材の方向性(遠心)→広瀬テキ

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いけばな歳時記 タニウツギ

いけばな歳時記 タニウツギ

 タニウツギは、日本列島自生の落葉広葉樹。晩春~初夏に花咲きます。
 近縁のハコネウツギ・ニシキウツギも同様の分布で、ベニウツギはタニウツギ の園芸種。それぞれの違いはわずかですが以下各所にあります。
 花色は、①タニウツギがピンク、②ベニウツギが濃紅、③ハコネウツギは初め白から濃紅④ニシキウツギは初め白から紫紅に変化。
 葉形は①②が葉元が広い卵形楕円、③は先端が広く先が尖った楕円、④は先が尖っ

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いけばな歳時記 ヤグルマギク

いけばな歳時記 ヤグルマギク

 ヤグルマギクは、ヨーロッパ原産で晩春~初夏に花咲く耐寒一年生のキク科ヤグルマギク属。20世紀初頭に日本列島に入り野原に広がりました。花色は青紫~ピンク・白。ヤグルマソウは別物で、同族とされていたスイートサルタンも今は別属と分かっています。
 上作は、ウツギと合わせた主材の方向性(遠心)→広瀬テキスト48p。

 上左 青紫とピンク、色違いで一種いけ色彩構成→広瀬テキスト59・75p
 上右 キリ

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いけばな歳時記 オオデマリ(ビバーナム)

いけばな歳時記 オオデマリ(ビバーナム)

 オオデマリ・スノーボール(ビバーナム)は、ガマズミ(ビバーナム)の仲間の落葉低木。スノーボールの開花は春、オオデマリは少し遅れて晩春~初夏に開花し、咲き始めは淡緑、咲き進んで白く変わります。
 オオデマリは日本列島原産で葉の形は楕円でやや厚みがあり、スノーボールはヨーロッパ・北アフリカ原産で葉は薄く切れ込みがあります。
 水揚げが悪いので、枝に割りを入れる・表皮をむく・叩き潰す・・芯のワタを除く

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いけばな歳時記 シラン

いけばな歳時記 シラン

 シランは、日本列島・台湾・中国などに分布し、春、赤紫・紅・白・ピンクなどの花をつけランの仲間。葉は薄く幅広長楕円状で縦すじがあります。
 上作は、主材の方向性(遠心)・一種いけ→広瀬テキスト48・75p。

 上左 葉を巻いた横長・巻く・一種いけ→広瀬テキスト53・71・75p。
 上右 チガヤ・ボクによる自然調 主材の方向性(遠心)→広瀬テキスト48p

 上左 葉を巻いた・一種いけ→広瀬テキ

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いけばな歳時記 アマリリス

いけばな歳時記 アマリリス

 アマリリスは中南米・西インド諸島に分布するヒガンバナ科の多年草。白・赤・ピンク・淡黄などの花色で六弁の大きな花を咲かせます。秋咲きのホンアマリリス=ベラドンナリリーは別物です。
 アマリリスは茎が柔らかく中空で傷みやすく藁などの詰め込み保護で出荷されます。詰め込みは取り除き、剣山にそのままでは留めにくい場合、先に枝をいけたい方向に刺して、そこにアマリリスを差し込みます。
 上 ハウチワカエデ

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いけばな歳時記 シャクナゲ

いけばな歳時記 シャクナゲ

 シャクナゲは、北半球中心の寒帯~熱帯まで、広範に分布するツツジ属の常緑花樹。春~初夏、枝先に赤・ピンク・白・黄の大きな五~七裂の合弁花を総状に咲かせます。
 ツツジ同様ねばりは無く、水揚げは水切り・枝に割りを入れる・表皮をむく・叩き潰すなど。
 作例は、主材を向き合わせにして客材を包み込むようにいける「主材の方向性(向心)」の見本花です。 →広瀬テキスト48p

 上左 ウンリュウヤナギを上下に

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いけばな歳時記 ダッチアイリス

いけばな歳時記 ダッチアイリス

 ダッチアイリスは、19世紀末、地中海沿岸に分布するスパニッシュアイリスにさまざまな種を掛け合わせてオランダで作られた園芸品種。花色は青・紫・暗赤・黄・白など豊富。剣先状の葉の中折れした内側が白っぽく絹光沢するのも特徴的です。
 バクテリアによって、葉や花の黄変・花先の巻き込みが起きるので、水切り・水換えは必須です。
 上作は ダッチアイリスを上に花、中間に葉、下にスイトピーを置く上下対比→広瀬テ

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いけばな歳時記 エニシダ

いけばな歳時記 エニシダ

 エニシダは西アジア~ヨーロッパ・アフリカに分布するマメ科の一属。常緑・落葉低木。春~初夏多数の小花が並び咲き、花色は黄・白(赤・ピンク・オレンジが一部に差す園芸種もあり)。日本には17世紀末中国経由で伝来。
 濃緑の細枝が八方に伸びる姿は独特。曲げも利き、成形に適しています。
 作例は、エニシダを丸めた一種いけ→広瀬テキスト71・45p

 上左 モンステラの葉を半面切ったスペースにエニシダ・カ

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