祈りの雨 #青ブラ文芸部
一目惚れだった。
ヨルダン川の岸辺で、幼い私は迷子になっていた。母親の用事が終わるのを手持ち無沙汰に待っていたのだが、サンダルの革ひもが切れ、しゃがみこんだのはほんの数十秒。結び直したと思って顔を上げた時には、もう母の姿を見失っていた。
「ケガしたのか?」
植物の育たない荒れ地で、少年の瞳は深い緑色だった。こちらを心配そうにのぞき込む顔は、後から思い返せば幼さが残る。私よりも二三歳は年上だったと思うが、それでも十に満たない。それでも当時の私は、年上の男の子がすぐそばにい