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ある年の9月のある日。
とある産婦人科の一室で私は産声を上げた。

父方の祖母が
「前の人の時と同じ病室だねぇ」
そう言ったそうだ。

父は再婚、母は初婚で、私は母が30歳の時にようやく出来た母方からすれば初孫である。

父と母の出会いは自動車ディーラーだ。所謂、職場結婚。ここではメーカーは控える。

私の車好きは元をたどれば、両親の影響なのかもしれない。

父は背が高く、若い頃はかなりモテたらしい。女遊びも金遣いも荒い、今で言うしょーもない男だったとか(ずっと、しょーもなかったけど)
結果、困り果てた父が母の所に転がり込んできて、そのまま結婚になったと母からは聞いている。

幼い頃の私には父が作った借金の返済を求めてドンドン!とドアを叩きに来るからと昼間から雨戸を閉め、母と2人押し入れに隠れて息を潜めていた…そんな記憶しかない。

たまに父と出かける時は父の浮気相手とのデートに同行させられていただけだと母は言っていた。そんな記憶は私にはないのだけれど、帰ってくると私がその女の人に買ってもらったおもちゃを嬉しそうに見せていたのだという。

生まれた時から私は不幸だった。
この時既にに貧乏で困難な人生が始まっていたのだ。

ちなみに、父の前妻の子供…どうやら私にとっては腹違いのお兄さんになるらしいが、名前も年齢も知らないし勿論一度も会ったことはない。
本当に存在するのかさえ知らない。分からない。
(続)

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