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短編小説

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何も考えていない? そんなことありません。これまでに書いた短編小説をまとめています。
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2024年2月の記事一覧

【短編小説】「空中散歩」(4/4)

「こんばんは」  女性が滑らかに口を開く。間を置かず、 「こんばんは」  樫村が返す。する…

灰かぶりの猫
3か月前
6

【短編小説】「空中散歩」(3/4)

 樫村は、予定通り早めに仕事を片付け、午後六時過ぎから、歩道橋のそばの植え込みの手前にし…

灰かぶりの猫
3か月前
8

【短編小説】「空中散歩」(2/4)

「樫村、ちょっと良いか」  一つ年下ながら、同期入社の阿部が右手を上げ、昼食を終えて社内…

灰かぶりの猫
3か月前
3

【短編小説】「空中散歩」(1/4)

 かつて〝キング・オブ・ポップ〟と称されたマイケル・ジャクソンは、地球に居ながらにして重…

灰かぶりの猫
3か月前
10

【短編小説】「ベッドシェア」(3/3)

 その日の彼は、困ったことに腰をやってしまい、ベッドから起き上がることができなくなってし…

灰かぶりの猫
4か月前
8

【短編小説】「ベッドシェア」(2/3)

 別の日の彼女は、目鼻の整った見た目に似合わず、地味な臙脂色のジャージに身を包み、布団を…

灰かぶりの猫
4か月前
19

【短編小説】「ベッドシェア」(1/3)

 いつからか、眠るときに限って、まるで自分のことを拘束するかのように、腕をクロスさせて、脇の下に両手を挟み込んでしまう。その様子を見たある日の彼に、エジプトのツタンカーメンみたいだね、と思ったまま言われたことがある。なら、もしかしたらベッドって、わたしにとっての〝棺〟みたいなものなのかもね、と冗談を返すと、彼は苦笑いを浮かべ、無言になった。  無意識に行われる癖とは違って、はっきりと自覚のあることなのだから、いつでも、やめようと思えばやめられるはずなのだけれど、起きているとき

【短編小説】「If I Can't Be Yours」(3/3)

 僕は完全に美景を見失った。  もう、どの方向へ向かったのかも分からず、僕もまた母子同様…

灰かぶりの猫
4か月前
7

【短編小説】「If I Can't Be Yours」(2/3)

 達哉を待ち、絶えず行き交う人波を眺めながら、ぼうっとしていると、美景が突然、僕の左腕に…

灰かぶりの猫
4か月前
6

【短編小説】「If I Can't Be Yours」(1/3)

「ねえ、この曲知ってる?」  左手で頬杖を突き、右頬だけを膨らませながらガムを噛んでいた…

灰かぶりの猫
4か月前
10