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第二部 春は遠き夢の果てに 一 疎水沿いに植えられた桜並木の下を、優…
二 「それにしてもさあ、ゆきぃ、いきなり人に飛びかかるクセ、たいがいにせんとあ…
三 木製のベンチに腰かけて、小川の流れを見るともなく見下ろしている。 少し…
四 「初めて逢った時のことな、こうも言うててん『ゆきちゃん、ちょうちょのおにいち…
五 すれ違い困難な道幅が続き、合っているのか不安になるくらい、長くて薄暗い峠…
六 萱葺きの母屋の向かって右側、少し離れた場所に、木造の平屋が存在する。なん…
八 「じゃ、優希のこと、よろしくね。ちょっと時間かかっちゃうかも知れないけど」 美佳の申し出で、昼食の前に二人で件(くだん)の枝垂桜(しだれざくら)を観に行くことになった。時刻は、既に正午を少し回っている。 「さっきパンを食べたから、お腹ももうちょっともつと思うから……」 「ええからええから、早よ行っといない」苦笑しながら、静枝は美佳の腰を押し出すようにする。 「ゆきぃ、よかったなあ、おばあちゃんと二人で」健吾が、少し離れた場所でなにやらくるくる踊っている優希に
九 レナちゃんのことを話すには、まずおばあちゃんがどんなことをしてたのか、聞…
十 次にレナちゃんに会ったのは、三ヵ月後の年末のこと。 「おかえり」って、お…
十一 それから二ヶ月ほど経った、真冬のすごく寒い夜、おばあちゃんから電話があ…
十二 ミカちゃんへ ミカちゃん、今さらこんな手紙を書いてしまってごめん…
十三 またサ店で働きはじめて、はじめのころは良かったんよ。顔なじみもいてよく…
十四 読み終わってからもしばらく、健吾は両腕に顔を埋めて泣いていた。 やが…
十五 桜並木をゆっくり引き返していると、ちょうどゆるやかなカーブから姿を現した静枝と優希が目に入る。目敏くこちらをみつけて、大きく手を振る二人に、美佳も手を振り返す。春爛漫の、夢のような田園風景の中に佇む祖母を見ているだけで、なぜか涙がこぼれそうになる。 「そろそろええ頃合や思て出かけた時に、ちょうど石黒先生来てくれはってね、お弁当持ってもらいましたんや」 「美佳ちゃん、ひさしぶりやな」 ごま塩の5分刈り頭にギョロ眼を光らせた診療所の石黒は、見た目はいかついが