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5/8 【米5月FOMC、米4月雇用統計、バークシャー株主総会】

●米FOMCで株式市場は暴騰暴落


FRBは5月3~4日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で、22年ぶりとなる0.50%の利上げを決定した。FOMCでの決定事項及びパウエル議長の記者会見におけるポイントは下記の通り。

①    0.50%の利上げを決定
②    今後、6・7月のFOMCでも0.50%の利上げ実施を示唆
③    0.75%の利上げについて、積極的には議論しない
④    量的引締め(QT)は6月から実施
⑤    保有資産削減の上限は950億ドル

市場は次回のFOMCにおいて、0.75%の利上げが高確率で行われると織り込んでおり、パウエル議長がこれに消極的な発言を行ったことから、4日の記者会見後に米主要三指数は大幅上昇した。

この時点においては、市場関係者は0.75%の利上げへの消極的な発言を受け、リスクオンとなり主要三指数は上昇を見せた。

(出所:リアルタイムチャート 日本時間表記)

しかしながら、翌5日になると上図の通り、主要三指数は大幅に下落。前日4日におけるパウエル議長会見後に上昇した分を全て吐き出した形で取引を終えた。

●OPECプラス 増産に応じず


この下落については、既に様々な分析が行われている。
まずは5日に行われたOPECプラスの閣僚級会合だ。

OPECプラスとは主要産油国が石油の供給量を協力して調整し、石油価格の安定を目指す枠組み。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国と、ロシアなど非加盟国が2016年12月に設立したもので、設立の背景は産油国がシェア拡大のため増産競争を展開し、石油価格の急落を招いたことがある。

このOPECプラスは5日オンラインで閣僚級会合を開き、西側諸国から要請されていた増産は行わず、小幅な増産を6月も維持することで合意した。

原油価格はロシアのウクライナ侵攻をきっかけに高止まりしているが、OPECプラスは声明で「石油市場は均衡している」と述べ、従来方針を変えなかった。

この決定を受け、更なるインフレ懸念が高まり、株式市場に影響を与えたというもの。

(WTI原油価格チャート、出所:Trading View)

●米10年債金利 3.1%を突破


米10年債金利は、パウエル議長の4日記者会見直後に一時2.9%付近まで下落した。一方で、翌5日には再び上昇し、節目となっていた3.0%を突破。現在は3.1%強の水準で推移している。

(アメリカ国債金利及びドル円為替相場推移、出所:後藤達也氏YouYubeチャンネル)

株式市場は長期金利の影響を受けやすい。あるバイサイドアナリストによれば、株価に与える影響は「金利:業績=7:3」という見方もある。

長期金利が3%を超えるのは2018年11月以来のことで、この金利上昇に株式市場が耐えられなかったため、株式市場が大きく動揺したという見方。

●インフレ&景気後退同時進行(スタグフレーション)への警戒


最後はスタグフレーションへの警戒だ。スタグフレーションとは、経済現象の一つであり、「stagnation」と「inflation」からの造語で、経済活動の停滞と物価の持続的な上昇が併存する状態。

景気の先行指標として用いられることも多いISM景気指数を確認すると、4月の数値は下図の通りで、製造業及び非製造業ともに前月から低下している。

節目の50%よりまだ上の水準にあるものの、景気後退への懸念は依然として残り、FRBの景気を維持しながらインフレを鎮静化させる軟着陸への疑問を口にする市場関係者も少なくない。

(ISM景気指数推移、出所:モーニングサテライト)

4月下旬から各企業で決算公表が相次いでいるが、越境EC等を手掛けるショッピファイは、インフレに伴う消費減退に言及している。また米国を代表する配車サービス企業リフトも、労働市場のひっ迫により、人件費増加に言及。

S&P500のEPSは、決算公表シーズン前に比べて微増であるものの、各企業の業績に関しても先行き不透明感は増している。

●米4月雇用統計

米労働省が5月6日に4月の雇用統計を発表した。下図の雇用者数は農業分野以外の就業者増減を表すが、事前の市場予想を少し上回り42.8万人増加となった。

雇用統計の結果自体には特段のサプライズ感はない。一方で、平均時給(前年同月比)は5.5%の増加と依然として高い伸びが続いており、人手不足に苦しむ企業が賃上げを進めている背景が窺える。

(米4月雇用統計、出所:後藤達也氏YouYubeチャンネル)

各企業はこの伸びが続く賃金を価格に反映せざるを得ないため、現状のインフレ抑制は非常に手ごわいものであると改めて認識される結果であった。

●バークシャー株主総会を3年ぶりに実開催


著名投資家ウォーレン・バフェット氏及びチャーリー・マンガー氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは30日、年次株主総会を開いた。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け2年連続でオンラインでの開催を余儀なくされていたが、3年ぶりに対面での実開催となった。

バフェット氏に拠れば、バークシャーの22年1月-3月の株式買い越し額は約410億ドル(約5兆3000億円)。

石油大手シェブロンの持ち分を増やし、またマイクロソフトが22年1月に買収を発表したゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザードの保有株式を9.5%に増やしたことも明らかにした。こちらはマイクロソフト社の買収価格との値差を狙う裁定取引目的の由。

バークシャーが普通株をこれほどの規模で購入した四半期は、2008年にさかのぼるデータでは例がない。

バフェット氏は、バークシャーには保険など現金を生み出す事業が数多くあるとし、手元現金が枯渇することはないと強調。「当社にはいつも潤沢な現金がある。酸素のようなもので常にそこにある」と述べた。

そもそもバークシャーは損害保険事業によって集めたキャッシュの多くを株式投資に振り分けている。通常、損害保険会社はよりリスクを抑える形で、低リスク商品(国債等)の組み入れ比率が少なくはないものの、バークシャーは株式の比率が高い。

そのような実態から、バークシャーの投資を「ナチュラルなレバレッジが効いている」と表現するものもいる。

バフェット氏はまた、株式市場は時にカジノやギャンブルのパートナーに似ていると述べ「ウォールストリート(米大手金融機関)に助長される形で、ここ数年はこうした傾向が顕著だった」などと指摘した。

バフェット氏と側近らは近年、ライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社などとの競争激化や高水準のバリュエーションを背景に、投資方法に苦戦していたようだが、再びこの株式市場が動揺する局面で、積極投資の姿勢に転換している。

個人的には、バークシャーNo.2であるチャーリー・マンガー氏のアリババ株への積極投資の行方にも注目したい。(マンガー氏についても言及したいが、長くなってきたのでまたの機会とさせて頂きます。)

●5月9日(月)から5月13日(金)の主な予定


<アメリカ>
11日(水):4月消費者物価指数
13日(金):5月ミシガン大学消費者マインド指数
<中国>
9日(月):貿易収支
11日(水):4月消費者物価指数
<欧州>
12日(木):英1-3月期GDP


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