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6/19 【各国中銀の利上げ、日銀vsヘッジファンド】

●米6月FOMC


米連邦準備理事会(FRB)は6月15日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、通常の3倍にあたる0.75%の利上げを行った。

FOMC数日前までは0.50%の利上げが行われるとの見方が大半を占めていたが、ウォールストリート・ジャーナルでFRBを担当するニック・ティミラオス記者が直前に0.75%の利上げが行われる可能性に言及した。

FOMC前までの一定期間はブラックアウト期間が設定されており、FRB関係者は金融政策に関して踏み込んだ発言を行ってはならない。

この期間にFRB関係者は直接市場に対して発言はできないものの、ニック・ティミラオス記者に代わりに記事を書いてもらい、事前に市場の反応を確かめる(もしくは織り込ませる)という手法は、近時しばし用いられる。

0.75%の利上げは1994年以来であり、パウエル議長は5月CPIの結果(インフレ再加速)に「驚き」として、7月FOMCは「0.50%もしくは0.75%利上げの可能性が高い」とした。

2022年末のFF金利上限の見通しは3.50%と非常に高い水準へ修正し、引き続き「軟着陸」を目指すものの、そのハードルは高く、多くの市場関係者はリセッションを織り込みにかかっている。

(出所:モーニングサテライト)

斯かる状況下、米主要3指数は軟調で、特に高PERであるハイテク株(NASDAQやフィラデルフィア半導体指数)は下落率が大きく金利上昇の影響をモロに受けている。

確かに、リスクフリー資産に投資しても3.5%程度のリターンが得られる現環境下で、インカムゲインの低いハイテク株の魅力は相対的に失われつつあると思料する。

(出所:モーニングサテライト)

●スイス中銀、イングランド銀行利上げ


スイス国立銀行(中央銀行)は6月16日、市場予想に反して2007年9月以来約15年ぶりの利上げに踏み切った。

政策金利を0.50%引き上げ、マイナス(0.25%)とした。ほぼ全てのエコノミストが金利据え置きを予想していたこともあり、決定を受けてスイスフランは急伸。

ジョルダン総裁は「利上げをしなければインフレ見通しは大幅に上昇する」との見方を示し、また為替市場において直近フラン安が進んでいたことについて、もはやフランは過大評価されておらず、中銀は過度のフラン高・フラン安を抑制するために市場介入する用意があると述べた。

輸入物価は通貨の強弱にも影響される部分があり、一般的に安全資産であるフランがフラン高に進めば輸入物価上昇を軽減する効果があるが、足元ではフラン安が進んでおり総裁は軽減効果が弱まっていると指摘した。

またイングランド銀行(BOE)は、6月16日、政策金利を0.25%引き上げ1.25%とすることを決定した。

各国の中銀に先んじて利上げを行っているBOEは、今回で5会合連続の利上げとなる。0.25%の利上げ幅は投票で決定されたが、投票権を持つ9名のうち3名は0.50%の利上げを支持しており、今後の動向が注目される。

(出所:みんなのFX トレイダーズ証券)

●日銀vsヘッジファンド


日銀は6月17日まで開催した会合において、現在の大規模な金融緩和の維持を決定した。公表文には「金融・為替市場の動向やわが国経済・物価への影響を十分注視する必要がある」と明記した。

周知のとおり、日本は「失われた30年」真っ只中で、賃金は異常なほど低空飛行で上昇の兆しは見えない。

また変動の激しいエネルギー・食料品を除いたCPIは他先進国比で低く、加えて直近のGDPギャップは▲3.7%と、なんと約21兆円もの需要不足という危機的な状況。

斯かる状況下で、経済を引き締める手段である利上げに踏み切れるはずはない。むしろ日銀ではなく、政府が賃金上昇に繋がる労働市場の規制緩和や需要を喚起するための財政出動を行うべきではないか。

またコストプッシュインフレ対策として、ガソリン価格に関しトリガー条項の凍結解除や、一時的な消費税減税が本来検討されるべきと思うものの、財務省寄りの主義・思想集団である現宏池会政権は行うそぶりすら見せない。(デマンドプルインフレではない)コストプッシュインフレ対策こそ、政府の手腕の見せ所ではないのか。

第二次安倍内閣発足以降、日銀は金融緩和を行っているにも関わらず、政府及び財務省は2014年(5%→8%)及び2019年(8%→10%)に消費税増税を行い、散々日本経済及び消費者の需要にダメージを与え続けてきた。(かかる増税を決定したのは、旧民主党野田政権時の三党合意による)

このような利上げができない状況を生み出した根源たる政府が、円安について日銀へ様々な指摘を行っている現状を非常に滑稽に感じるのは筆者だけであろうか。

また財務省への忖度が第一なマスコミも、なぜ日銀が利上げを出来ないのかという点について根本的な問題について報じる機会は滅多に無い。

日銀は長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)政策を実施しており、10年債利回りの上限を0.25%へ抑えるために巨額の日本国債を買い入れている。

この政策に注目するのが、各国のヘッジファンドだ。日銀の金融緩和政策の転換を見込んで、円を買って、日本国債を空売りしている。いずれも日銀が利上げすれば利益を得る取引だ。

このヘッジファンドの動きに対して、日銀が無制限に国債を買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」の毎日実施に踏み切った。

今、日10年国債利回りに注目が集まっている。

●6月20日(月)~24日(金)の主なスケジュール


<アメリカ>
22日(水):パウエル議長議会証言
<日本>
22日(水):参院選公示
24日(金):5月消費者物価
<欧州>
24日(金):独6月Ifo景況感指数

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