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Outer Wilds - Echoes of the Eye感想 「なんちゅうもんを食わせてくれたんや……なんちゅうもんを……」

Outer Wildsの追加DLC「Echoes of the Eye」終わった……。

たぶんプレイ時間は12~13時間くらい。遊んでいる間はいろいろモヤモヤした部分もあったけど、終わってみれば最後の衝撃とその余韻で全部吹っ飛んでしまった。これまであった世界を一切崩すことなく、なおかつ本編の感動をさらに膨らませてくれる、紛れもない「Outer Wildsの拡張コンテンツ」でした。


なんちゅうもんを食わせてくれたんや……

話は少しさかのぼって2020年5月のこと。もっぴんさんのツイートがきっかけでOuter Wildsに出会い、エンディングに辿り着いた僕は当時、重度の「Outer Wildsロス」に陥っていた。


さんざん言われているようにOuter Wildsというゲームは、「知識を手に入れること」がゲーム進行の鍵になるという性質上、一度クリアしてしまったらもう二度と初プレイの時の自分に戻ることはできない。やがて絶望にさいなまれた僕は、自分の代わりに遊んでくれる初見のプレイ動画や配信を求めてさまようようになり、いつしか「Outer Wildsゾンビ」と呼ばれる存在になっていた。この1年半でクリアを見届けた投稿者・配信者の数はおそらく70~80を下らないと思う。これはこれで楽しかったが、「自分でまたクリアの感動を味わう」ことの代わりにはならなかった。

しかし、なんということでしょう……! DLCで新しく追加された部分をひととおり終え、もう一度本編のエンディングを見に行ったとき、気付けば僕の目からは、四万十川の鮎を食わされた京極さんのごとく、ポロポロと大粒の涙があふれていたのでした。なんちゅうもんを食わせてくれたんや……なんちゅうもんを……。遊ぶ前は勝手に「DLCはDLC単体で楽しむもの」だと思っていたけど、文字通りの「本編を拡張するコンテンツ」だったんだな……。

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「記憶を失わないかぎり二度を楽しめない」と言われているOuter Wildsをもう一度遊ぶチャンスをくれた。その一点だけでも「Echoes of the Eye」は僕にとって忘れられない体験になった。もしも僕と同じようなロスに悩まされているゾンビがいたら、迷わず購入して、どうにかクリアまで辿り着いてほしい。あなたが好きなOuter Wildsのあの世界が、きっともっと好きになれるはずだから。

完璧な導入と、この宇宙をまた探索できる喜び

さて、書きたいこと書いてスッキリしたのであとはDLCについて思ったことをつらつら書きます(※体験を損なうようなネタバレは避けたつもりですが、1ミリも情報を入れたくない人はここで戻ることを推奨)

そもそも最初にDLCが出ると聞いたときは正直、

・もう何も足せる余地がないほど完成されたあの世界に、一体何を追加できるのか?
・何をどう足したとしても蛇足になるのでは?
・そもそも何かを足そうにも、あの世界にもう探索できるところは残っていないのでは?

――などいろいろ心配になったんですが、うれしいことにそれらは全部、いい意味で裏切られた。ちょっと思うところはあったけど、それについては後述。

中でも自分が感動したのはやっぱり、DLC導入から追加エリア発見までの流れ。そもそもDLCを導入しても、スタート時に「観測所に新しい展示がオープンしたよ」みたいなことを言われるくらいで、パッと見には何も変わったように見えないんですよね。

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そしてその状態から、追加エリアに足を踏み入れるまでの展開は、今思い返しても胸がドキドキしてしまうくらい、まさしく本編で体験してきたあの「好奇心駆動型」の冒険そのものだった。むしろ本編があまりにもスロースタートだったせいで「Outer Wildsなのに最初からこんなに面白くていいのか!?」と心配になった。

で、そこからの数時間は、もう重箱の隅まで調べつくしたと思っていたこの恒星系に、まだこんなにも探索できるところが残っていた! という喜びで、完全に我を忘れて夢中になっていた。

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どこへ行っても新しい発見があり、もう二度と聞けないと思っていた「航行記録更新完了」の「ピッ」がまた聞ける。新しい何かが見つかるたびに、それよりもっと大きな「何もわからん」が積み重なっていく。これだよ! Outer Wildsをクリアした後、Outer Wildsに代わるOuter Wilds体験を求めていろんなゲームに手を出してきたけれど、やっぱりOuter Wildsに勝るOuter Wilds体験はOuter Wildsの中にしかなかったんだな……などと考えながら、「至福」としか言いようのない時間を味わっていた。

一部「コレジャナイ」と感じたところ

ただ、新エリア発見の興奮がある程度落ち着き、この新しい世界の仕組みがなんとなく分かってくる中盤以降、「これはOuter Wildsに求めていたものとはちょっと違うな」と思ったことも正直に書いておきたい。

まず一つ目は、さすがに本編のように完全な「ノンリニア構造」にはなっていなかったという点(これについては本編が異常すぎただけだが)。もちろん舞台が1つのエリアに限定されるのである程度は仕方ないんだけど、中盤以降は「ここで情報を手に入れたら次はあそこへ行ってアレをする」みたいな“リニアな”展開が目立ち、自分で探索しているというよりは「決められたルートに沿って進まされているな」という感がやや強かった。

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二つ目の不満は、一部のヒントがやや直接的すぎるというか、謎解きがあまりにも謎解き然としすぎていること。

あらためて思い返してみると、そもそも本編は徹頭徹尾「何かをしろ」ということは一切言っておらず、プレイヤーが自然に気付くその時をただ静かに見守っていただけだったんですよね。ガラクタだらけのおもちゃ箱を無言でポンと渡して、その奥底にひっそりと隠しておいた宝物に、いつか気付いてくれるのをひっそりと待っているような……だからこそ気付いたときに「なんもわからん」から「そういうゲームだったのか!」へと急に目の前が開けるような感動があった。

これに比べると、DLCの方はいろいろ堂々としすぎというか、「出ましたこれが今回の謎です!」「はいこれがあそこのカギです!」とばかりに、ところどころ「謎」と「答え」がモロにバーンと置いてあるのが気になってしまった(もちろんこれを逆手にとった「Outer Wildsっぽい謎解き」もちゃんとある)。ただ、DLCを遊ぶような人はこのゲームが謎解きゲームであることは既に知っているし、今さらそこを隠しても意味はない気もするのでこれはこれでいいのかもしれない。

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そして三つ目が、恐らく最も嫌がる人が多いであろう「ホラー要素」。すいません、僕は怖くて深夜に遊ぶのを諦め、朝になってからガンマ値MAXにして突破しました(ただ、真っ暗なところは真っ暗なままなので、見える範範囲が広くなるわけではない)。ゴリゴリのホラーではないものの、これ、人によってはけっこうな恐怖感を覚えると思う。

もちろん「恐怖に立ち向かうこと」はこのDLCの重要なテーマなので、恐怖演出を入れること自体は全然いいんですが、それよりわりと別のゲームで見たような、さほど新鮮味のないことをさせられる箇所があるのが辛かった。しかも単純に難しい!!! 幸いなことに「怖さ低減オプション」という名のホラーパート難易度低下オプション(※)があるので、苦手な人はどんどんオンにしていいと思います(僕は意地で使わなかったけど)。

※演出自体は(たぶん)変わらないが、難易度が劇的に下がる

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――っと、ここまで書いたところでちょうど他の人の配信を見ていたら、僕が正面突破したところをもっとスマートな方法で解いてる人がいた!!!!! ここ絶対正面から行っちゃう人の方が多いと思うんだけど、もしかしたら残りのところも別解あるのかな……恐怖パートについての評価は、攻略法が出揃うまでもう少し待った方がいいかもしれない。

【追記】その後何人かの配信を見たり、自分でもいろいろ試してみたりしたけど、やっぱり迂回手段の方が別解で、正面からステルス(謎表現)する方が正答のように思えました


そこまでのモヤモヤを吹き飛ばしてくれたラスト

――とまあ、気になるところがなかったわけではないのですが、冒頭でも書いたようにそれらを乗り越えて辿り着いたラストは、そこまでのモヤモヤを吹き飛ばして余りある、ゾンビにとって最高の栄養素だった。

本編で解かれなかった謎の一つに答えが示され、同時に本編で描かれた“あの奇跡”が、こちらが考えていたよりもさらに薄く、頼りない氷の上に打ち立てられていたことが明かされる。そしてその背後には、Nomaiとはまた違う文化や考え、「宇宙の眼への見方」を持った別の人々がいて(眼のマークが本編よりギザギザしてるのも良かった)、彼らもまた別のアプローチによって宇宙の無慈悲さに立ち向かおうとしていた――。

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ゲーム全体を通して初めて描かれた「明確な悪意」は、彼らの信念の強さかもしれないし、もしかしたら逆に弱さの表れだったのかもしれない。思えばNomaiもHearthianもメンタルつよつよ種族だったのであれが当たり前のように思っていたけど、「みんながみんなそうでなかった」という当たり前のことがあらためて描かれたことで、この宇宙やNomai、Hearthianたち、そしてもちろん新しい彼らのことも含めて、全てがより尊く、愛おしく感じられるようになった。彼らが奏でていた楽器のあの哀しげな音色も、そのまま彼らの運命が投影されているようでたまらなかった。

DLC単体としての面白さもあるけれど、この「翻って本編部分がより味わい深く感じられるようになる」という部分こそ「Echoes of the Eye」の最も重要な部分だと僕は感じました。何よりもう二度と味わえないと思っていたエンディングのあの気持ちを、頭部を強打することなくもう一度自分で体験できたことは、ゾンビとしてこれ以上ない喜びだった。あと単純に、最終盤はゾンビへのサービスカットが大量にありすぎて情緒がおかしなことになった……オタクがよく「公式からの供給」で喜んでるのってこういうことだったんだな……。

――ということで、記憶を消さなくても遊べるOuter Wildsの追加コンテンツ「Echoes of the Eye」をゾンビはぜひ遊びましょうという話でした。では一瞬だけ人間に戻ったけど、僕はまたゾンビ活動に戻りますね。

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【追記】その他プレイ中&クリア後に考えたこと



※ここからはネタバレ全開なので注意!








・あの人&あの人たちの名前が知りたかった……!
・「海外だと追跡者=シーカーって呼ばれてるけど日本語だとシカなのすごい偶然」ってツイート見て笑ってしまった
・本編は三体IIIだったけど、DLC遊んだら三体Iを読み返したくなった
・まだイバラに飲まれる前の第5惑星がスライドリールでチラッと見えるのいいよね……
・火炎放射器て
・フィクションのメタバース見るとモヤッとしてしまう人なのでそこは正直モヤっとした
・本編以上に誤字率が高いのはいかがなものか
・リトルスカウト周りのバグで5回くらい落とされましたけど???(PS5)
・ステルス部分、一応3エリア全部「ほぼステルス回避できる回答」は確認したけど、基本的にはやっぱりステルスするのが正規ルートっぽく見える(ステルス回避する方が別解っぽい?)
・謎解きが謎解き然としすぎている件、「本編の謎は超自然的なものだったけど、DLCの謎は人為的なものだから」という意見を見てなるほどと思った
・そもそもここの謎やヒントの配置、明らかに「いつか誰かが解くこと」を前提に置いてあるよね……?
・最後の最後で主人公の顔見せてくれるの「わかってるぅ~~!!!」(ここの音楽の盛り上がりも最高)
・本編すっ飛ばしてDLCのラストまで行くと、ちゃんと囚人に見せるビジョントーチの内容も変わるのに驚いた
・直前のアプデでエンディングの絵が変わってたのそういうことか!(DLC部分終わったらちゃんとまたエンディング見に行きましょうね)
・眼に着いたら周辺をよく観察すると……うわあああああ!
・最後のシーケンスで空を見上げると……うわあああああ!
・ダムにリトルスカウトくっつけるとちゃんと表面完全性が表示されるのフフッてなった
・サントラの最後の2曲、曲名見ると本当にこれで終わりなんだ……って実感できてしまって寂しい
・ヒントの多くが絵で示されるため、本編のように「航行記録見ておけばオールOK」とはならない点はちょっと残念(途中何度かスクショ見直す必要があった)



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