描写が細部までいき届いている文章や映画が好き。それは、ひとつの物事に対する解像度が高いということ。ストーリーがジェットコースターのように展開していくものは非日常的で面白いけれど、やっぱりそこに自分がいる感じというか、自分の日常を見出すのが難しいから。私は小説を書きたいけれど、物語を作りたいわけではない。欲をいえば描写だけで1つの小説を書いてみたい。文脈1つで日常でもこれだけ変わることを証明したい。
クリスマスに恋人から直筆の手紙をもらった。 そして、好きな人の筆跡は意外と見る機会が少ないなと気づく。私たちの言葉はいつもデジタルの窓をくぐって、ゴシック体の均一なフォントで贈られ、そして届く。 人が書いた字というのは暖かくて不均一でいいものだ。そしてそれが好きな人のものならなおさら。書き損じをして、ぐちゃっと塗りつぶた形跡や、ここで言葉を選び迷っていたのだろうなと思うインクのにじみ。ひとつひとつが愛おしい。 好きな人がこの言葉を、手紙にしたためるまでの形跡を追ってゆける。彼
例えば、夜の公園を歩いている時に見上げた先に、星が妙に綺麗に並んでいたこととか、そんな場面ばかりを思い出す。だって特に有名人や物語の主人公でもない僕の人生なんて、取り立てて毎日思い出せるような出来事で溢れているわけじゃない。描写ばかりが言葉になって白い余白を埋めていく。僕は去年の今頃、生まれた町を出た。十分馴染んだ友人や、やけに仲が良かった坂の下の曲がり角にある家に住んでいるおばあさんがいる町だ。時々彼らや彼らを取り巻く建物や空気、ある季節に嗅いだ花の匂いなんかを思い出す。で
自分で淹れるのはもう慣れたはずのドリップ珈琲が、普段よりもぐっと苦く感じた、土曜日の朝。 あなたのことを考える。無理をしていませんか。 過去を愛しすぎてはいませんか。もしそうならば、わたしが過去に勝とうとしても、暖簾に腕押しのようで、どうにもできないこの気持ちが辛いのです。 あなたがいつも念入りに未来とか、これからという言葉を使うので、その深い深い心の根には、どこかで過去を愛しすぎているように感じて悲しくなるのです。 #恋愛 #詩 #エッセイ
黒いランドセルを背負った小学生の男の子が下を向いて、私の前をとぼとぼ歩いていた。 紺色のジャケットと半ズボンを丁寧に履いて学帽を被っているから、どこかの私立の小学校に通っているのかな。 ふと立ち止まって白い紙切れを道から拾い上げた。秘密の何かを見つけたように道の端に寄って恐る恐る中身を見ている。私のことも、ちらと見た。 そして、紙を畳んだと思ったら、ふいに歩いてきた道と逆方向に歩き始めた。今度は下を向かず、前を向いて、心なしか愉しそうに見えた。 彼の中の冒険が始まったように見
朝起きて、二度寝をして、あなたとの夢を見た。 お別れをする夢。 焦って泣きながら目が覚めたから、きっとこの愛は本物なんだと思った。
2019.12.6 好きな人に本を借りた。 彼は気に入ったところに線を引いて読んでいたから 頭の中が見えたみたいで嬉しい。 「ここ、私もいいなと思った!」と勝手に共感して胸が踊ってしまう。 アルバイトの帰りに、ずっと気になっていた最寄駅の 小さなワインバーに入ってみた。 店主のおすすめで頼んでみた白ワインは、 ドライで軽く飲みやすい。 「かすかにパイナップルのようなトロピカルな風味を感じるでしょう」 と言われたけど正直よくわからなかった。 安い日本酒を引っ掛けたせいで、少
例えば、好きな人と知らない女の子が二人でおしゃれなカフェやら予約必須のイタリアンに行っていたら傷つく。でもそんなことより、家系ラーメンに一緒に行きましたとかの方が1億倍傷つく。本人にその気はなくても、女の子の方はそういう肩肘張らない間柄に恋愛感情を抱くんだと思う。でもだからと言って「行かないで」と伝える事が出来ない。そんなに束縛をするのは嫌だし、本当にその子のことが好きだったら、食事を行くのを一回や二回止めたところで、きっと自然とくっつくものだと思っているから。(私は運命のよ
私にとっては本を読んだりものを書いたりすることは頭の中を整理する上で最重要だ。本を読む事で、自分の気持ちに合う”ことば ”を探し、ものを書く事で、その”ことば”を生み出す。自分の親しい友達に相談したりもするけれどこの頭の中をことばにする段階をなくしては、話していても整理されていないのと同じことだ。だからいつもこうやって文字にしたり、誰が書いた小説の文章を読んで自分と同じ気持ちをことばに変換する。だから文章を書くことや文章を読む事はいつも私とともにあった。誰かからの救済の声かけ
一人旅が好きだ。自由で身軽な感じがする。そして一人でも案外楽しくやっていけることを知り、荷物なんてたかがリュックサック一つくらいで十分事足りることを知る。一人で旅をしていると当然そばに頼れる人はいないから、この体と心を頼りにするしかない。旅先で初めて会った人と話す際には、自分を知ってもらうために、たくさんの要素がある「自分」のどこを見せようかな、話したいかな。そんなことを考えているから、自分についてもよく考える。一人で自分に芯を持たせ、身軽に、それでいて強くなっている感覚が心
冬に食べるアイスは格別で、夏じゃだめ。すっかり冷えた両手にふぅふぅと息を吹きかけながら、その場しのぎだと分かっているけど温めながらお家に帰る。玄関で靴を脱いだらすぐに石油ストーブをつけて、その足でガスコンロに向かう。つまみをひねって火をつけて、お湯が沸くのを待つ間、コーヒーが入った缶を取り出す。(うちのは缶の中に軽量スプーンが入ってるから、取り出すときにカラカラと音が鳴る)ドリッパーに二杯コーヒーを入れたらお湯を注いで抽出されるのを待つ。やっとのことでマグカップの半分までコー
最近ふと、恋の終わりの瞬間の、こま切れのような記憶を思い出して、涙がとめどなく流れてくる。好きな人ができたと言って去った初恋のあの人、好きだけど別れようと話し合った冬になりかけの公園のベンチ、好きかわからなくなったと伝えられた夏なのに涼しかった真夜中の坂道。こんな瞬間がいつか大好きなあなたとの間に来るのかなと思ったり。本気で好き、だから進むのが怖い。いつか壊れてしまいそうで。 #恋 #エッセイ
すっかり陽が沈むのが早くなった。 寒いなぁと思いながら背中を丸めて、コートのポケットに手を入れ大学のキャンパスを歩く。午後5時。後ろを歩いていた女の子二人組が話していたのが聞こえた。軽率に恋に落ちてしまいそうになった、と話していた。不可抗力だから自分ではどうしようもない、感情を引きもどせない、そんな恋なのだろうか。 もう出来上がってそれなりに安定してきた、恋というより愛と呼ぶ方が適切な気がする私の恋愛は、もう自分たちの足で進めていくしかない。 意思を持った2人、そんな関係だか
Appellation: Soave Region: Veneto Country: Italy Colour: White Grape Varieties: Garganega Soil type: Volcanic Vessel type: Stainless Steel 家族での大切なお出かけの際に、皆で開けた白ワイン。 唇に触れた瞬間に、ハーブの香りが広がる。有機農法で作られているらしく一本のワインでも状態は均一ではない。ボトルの底の方に行くほどハーブの香りを強
大学には5年通った。春を5回。そして、夏も秋も冬も、同じだけ私の頭上を通り過ぎていった。そして恋をした。笑って転げて、泣いて、怒った。そこにはほとんどいつもお酒があった。酒は酔うためのものだった。そして夜は酔っ払いのためのものだった。 そんな日は次の日との境界線が曖昧で、恍惚としている、甘い世界。ふわふわしたそんな空間では、時間があっという間に過ぎていってしまう。飲みすぎた日は、家に着いたとたんに服を脱ぎ捨て、熱いシャワーを頭から浴びる。風呂場から出るとお酒とお湯で火照った身