ある冬の日の出来事

2019.12.6

好きな人に本を借りた。
彼は気に入ったところに線を引いて読んでいたから
頭の中が見えたみたいで嬉しい。
「ここ、私もいいなと思った!」と勝手に共感して胸が踊ってしまう。

アルバイトの帰りに、ずっと気になっていた最寄駅の
小さなワインバーに入ってみた。
店主のおすすめで頼んでみた白ワインは、
ドライで軽く飲みやすい。
「かすかにパイナップルのようなトロピカルな風味を感じるでしょう」
と言われたけど正直よくわからなかった。
安い日本酒を引っ掛けたせいで、少し酔っ払っていたからかな。
飲み終わって、ドアを開け帰ろうとすると、「おやすみなさい」
と声をかけてくれた。「ありがとうございました」とは少しちがう、
柔らかな優しさを感じる。
白ワインの余韻がお店を出てから、眠りにつくまで、ふんわりと柔らかな糸で繋がっているような。