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【読書の感想】スロウハイツの神様/辻村深月

今回は、辻村さんの長編小説4作目の「スロウハイツの神様」。
何がきっかけで辻村さんの本を読んだかもう覚えていないが私の好きな作家さんのトップ3に入る。
文庫本で上下で分かれているので、少し読み始めるのに時間がかかったが、読み始めたら一瞬だった。

やっぱり、辻村さんの作品は温かい。

登場人物の影と光の部分、人と人との関わり合いの中で生まれるドロドロしたものや、温かみのある姿が良く描かれていると思う。

国民的作家(イメージはラノベ作家)のコウキ、人気脚本家の環。画家の卵のすみれ、映画監督の卵の正義、漫画家の卵の狩野と円谷、コウキの熱狂的ファンだというリリア。

この物語の主人公は間違いなくコウキと環だろう。言わずもがな。

犯罪者の娘として周りから白い目で見られ、父親からは捨てられ、守ってくれた祖母も亡くなってしまい強く生きていかざるを得なかった環。家族がバラバラになり学校でも居場所がなく、図書館でたまたま出会ったチヨダ・コーキの作品でなんとか生きていけた。

はたまた自身の作品がきっかけで集団自殺事件が起こってしまい純粋すぎるが故に家族からも勘当され帰る場所がなくなった上に作品も書けなくなってしまったコーキ。そんな時コーキの作品で生きる希望を見出せたと言う手紙のおかげで作家を続けてこられた。

複雑に絡まった二人の糸はきっとほどけることはないし、色々な事情は知らなくてもいいことだと思う。
ただそれでも純粋にお互いの幸せを願って、自分は自分の幸せを掴む、そんな共通性を持つ二人だからずっと一緒にいてほしい。そして幸せになってほしい。

コーキと環以外の住人もそれぞれ等身大で、でも夢を諦めずに追って暮らしている姿にすごく感動したし、スロウハイツを出ても、何年経ってもお互いのことを忘れずにいつかまたスロウハイツで再会してほしい。

「スロウハイツの神様」は、きっと環なんだろう。

一番最後がみんな集まって大団円~~!!ではなくて、それぞれの場所でみんな頑張ってる、いつかまた会えるといいね的な感じで終わらせる、余韻が素晴らしい!
そこを含め、温かい物語だった。


2021年1月に読了。
辻村さん作品は数多く読んでいるので、また読み返して感想書きたい!

#辻村深月
#読書感想文
#わたしの本棚


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