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【チャイのある休息を通じて。自分に合う生き方を探すまでの道のり。❘ TEDxHitotsubashiU2024 インタビュー企画】


私たちTEDxHitotsubashiUは2018年の設立以来「一橋大学内で新しい視点と出会う機会を提供すること」を理念として活動してきました。

来場者の皆様や一橋大学の学生に弊団体のイベントを通して、一橋大学が位置する国立という街の魅力にも出会ってほしいという想いから、今回国立市のお店や、国立市で活動されている方々に、今年度のイベントのテーマとなる”+roads(クロスローズ)”を主題にインタビューを行いました。

本企画を通して、国立というまちの魅力を再発見すると共に、今年度のテーマの核となる”人生における様々な選択”について再考する機会をお届けできたら幸いです。


インタビュアー

椿:Technologyチーム所属、経済学部2年生。最近はHP制作を勉強中。

福井:Eventチーム所属、社会学部3年生。国立の街に興味津々。



今回インタビューをお引き受けいただいたのは、「はたらく・暮らすに、ツカノマを。」をコンセプトに、チャイのある休息を通じて、はたらき方やライフスタイルを見直すきっかけを届けるブランド『ツカノマチャイ』の代表である岩井幸奈さん。

岩井さんは大学通り沿いに位置するシェア商店「富士見台トンネル」への出店や、富士見通りに位置する「みんなのコンビニ」での副店長という立場を通じて、国立に深く関わっていらっしゃいます。

ご自身の経験から「チャイを通じて”休息”を届けたい」と考えるようになるまでの道のりについて、お話を伺いました。

【学生~社会人1年目までの大きな選択】

椿:今までの人生で最も大きな決断を迫られた選択は何でしたか?

岩井:大学に入学してからは、英語教員になるための勉強をしていました。中学・高校生の時の英語の先生に恵まれて、教科として英語を好きになったのがきっかけの1つだと思います。また、当時の学級担任の先生と出会ったことで、自分の考え方や生き方に関して大きな影響を受けました。

ですが、大学の授業や教育実習に取り組む中で、「コミュニケーションのツールとしての英語は好きだけれども、厳密なルールに則って勉強するのは自分にあっていないかも」と感じるようになりました。私はどちらかというと人間形成の分野に興味があったので、教員になる以外の進路を考え始めました。この決断は自分の中でも大きかったと思います。

椿:教員を目指していたら、今でも英語に深く関わっていたと思いますか?

岩井:自分の場合はおそらく1年くらいで辞めていたのではないかと思います。ただ、その道に進むのをやめたことで、早めに自分のやりたいことを探す方向にシフトチェンジできました。

そして、4年になる前の大学3年の春休みに東南アジアに1人旅をしました。

それまで私は大学の外に出る機会が結構少なかったのですが、旅に出たことで、教員以外の選択肢に興味を持ち始めました。いわゆる「ノマドワーカー」と呼ばれる方々のように、場所を転々としながらパソコン1つで働くことにあこがれ始めたのもこの頃です。それで、大学の卒業前の段階からWebの勉強を始めました。

福井:東南アジアへ旅に出ようと決めたのは、何かきっかけがありましたか?

岩井:大学2年生の夏休みに、短期留学で1ヶ月ほどトロントに行きました。現地の語学学校に通い、週末は旅行でニューヨークに行ったりなど楽しく過ごしました。しかし、普通にホームステイして語学学校に通うというのは、現地の生活を体験した、と言えるだけの経験ではないと感じました。

大学3年になって、高校や中学校に行って課外授業を届けるNPO団体の活動に参加しました。そこで出会った人の中の1人が自由な人で、海外でバックパッカーをしていたというのを聞き、自分もしてみたいと思い立ちました。

タイとラオス、カンボジアに行きました。1か月半ほど滞在して、現地の日本人と合流して、バックパッカーの初心者向けプログラムに参加したり、他大学の学生団体の活動に同行させてもらったり、ゲストハウスに住み込みで働いたりして過ごしました。

現地での生活の中で、人々のものの捉え方のゆとりを感じました。切羽詰まるような様子がなく常にゆったりと構えている感じが凄くいいなと思った記憶があります。

福井:帰国してきてからも、その旅の経験はご自身に響いてますか?

岩井:1人旅に行ったことで、教員以外の選択肢をより真剣に考えるようになりました。大学4年時の教員採用試験は受けないことに決めたあと、若者の旅を支援するコミュニティに参加して活動を始めました。

椿:それで、さきほどおっしゃっていたウェブデザイナーの話に繋がるんですね。

岩井:そういう感じです。そこでカメラマンやWeb制作関連の技術を持つ人、プログラマーなど手に職つけて場所にとらわれずに働いてる人に会って、その道に進みたいと考えるようになりました。

大学を卒業後は、飲食店でアルバイトしながらWebデザインの勉強をしていました。

しかし、多忙な日々と上司との関係の悪化から精神的に辛くなってしまい、体調も崩したことで社会人1年目の秋にはアルバイトを辞め、Webの勉強に対する意欲も失ってしまいました。実家に戻ってしばらく引きこもった後に再上京して、大学時代の知人が住んでいたシェアハウスに入居し始めました。

1年ほどそこに住んで、周りに囚われずに働くことができたらいいなと考えるようになりました。複数あるシェアハウス間を行き来して、様々な人との関わりを持つ中で、価値観も大きく変わりました。

【富士見台トンネル -地域に寄り添うコミュニティ-】

福井:岩井さんにとって、富士見台トンネルはどんな場所ですか?

岩井:富士見台トンネルは毎日出店者が変わる「シェア商店」なので、お客さんとお店ごとに色が変わります。「ツカノマチャイ」では、近くでお仕事をされている方や、子育て中のママさんによく利用していただいています。イートインかテイクアウトが選べるので、お客さまごとのライフスタイルに合わせてご利用いただくことができます。

出店をしながら「富士見台トンネル」のマネジメントに関わるようになり、昨年から「みんなのコンビニ」にもスタッフとして携わるようになりました。

福井:みんなのコンビニとも関わろうと思われたのは、その地域に根ざしているところが魅力的に感じられたからですか?

岩井:当初は棚を借りて出店する「棚会員」として関わっていたのですが、「みんなでコンビニを作る」という今までにない仕組みに興味を惹かれ、お声がけいただいたことをきっかけにスタッフとして携わるようになりました。

国立市やその周辺の素敵なお店が集まっていて、街の魅力に出会える場所であることが魅力だと感じています。

福井:学生がお客さんとしてくることは多いですか?

岩井:「富士見台トンネル」も「みんなのコンビニ」も、現状では学生さんにお越しいただくことはそこまで多くない印象です。

普段はご近所に住まわれている方が立ち寄ってくださったり、遠方からの視察の方がいらっしゃったりします。

【チャイを通じて”休息”を届ける】

椿:ツカノマチャイでは「チャイのある休息を通じて、はたらき方やライフスタイルを見直すきっかけを届ける」ということをコンセプトにされていますが、なぜ”チャイ”だったのでしょうか?

岩井:ツカノマチャイの立ち上げに関して言うと、まず先に「チャイ」が手段としてあり、後から「休息」と言うコンセプトがフィットした、と言う順番です。

これまでの人生でさまざまな経験をしてきた中で、チャイは自分が最も熱量も持って、心から楽しみながらできることでした。お店でチャイを提供するだけに留まらず、+αで自分にできることは何だろうと考えた時に、働きすぎで心身を壊してしまった過去の自分を思い出しました。

忙しく毎日を過ごす人に「休息」を届けるために、スパイスの香りと甘さで心身をゆるめてくれるチャイはぴったりなのではないかと考えています。

椿:趣味としてだけではなく、チャイをお店として開こうと決断するまでには、何か別のきっかけがあったのでしょうか?

岩井:住んでいたシェアハウスでアラブやアジアをテーマにしたイベントを開催することになったのですが、みんながカレーやクナーファなど色々なものを持ち寄る中で、自分はチャイを淹れることになりました。

チャイを飲んでくださった方々から「おいしい!」と言ってもらえた時に、「人生で一番嬉しいかも…!」と思いました。「お店やってみたら?」とまで言ってくださる方もいたのですが、その時は自分でお店をやるなんて考えてもみませんでした。

ですがその後、そのイベントでクナーファという中東のお菓子を作っていた方から「一緒に間借りでお店をやりませんか?」と誘っていただき、シェアキッチンを借りてお店を開くことになりました。

福井:一度何かをやると決めたら、あまり迷うことはないですか?

岩井:私自身、以前は外からの見え方をすごく気にするタイプで、人から褒められたいとか、周りの期待に応えたいとかいう気持ちが強かったです。

世間的にどう見えるか、ということを気にして選択をし続けた結果、辛い時期を過ごしたこともあったのですが、今はその考え方から一度離れて、自分の納得度だったりとか、本当にやりたいかどうかを軸にするようになったので、選択に対して悩むことはあまりなくなりました。

福井:人からどう見えるか、というのを気にしないようにするのは、簡単なようで難しいと思いますが、どのようにして”他者の目”という判断軸から離れていくことができたのでしょうか?

岩井:やはり挫折したことが大きなきっかけだったのかなと思います。今のままではダメだということにその時に気づいて、そこから考え方がかなり変わりました。

少しドライかもしれませんが、その時に人間関係も含め、色々なものを断捨離しました。合わない人と一緒にいることに時間を使うのはもったいないなと思い、色々な関係を精算して、自分と近い価値観を持っている人や一緒に高め合っていける人たちと、深く繋がろうというのを意識するようになりました。

【仕事とプライベートの境界線】

福井:私は何かに熱中するあまり、頑張る時間とそれ以外の休息やプライベートの時間とのバランスを崩してしまうことがよくあるのですが、岩井さんはそのようにしてそのバランスを保っていらっしゃいますか?

岩井:今は仕事とプライベートの境界はあまり無い状態なのですが、私も最近になってやっと自分の時間を確保するということができるようになってきた気がしています。

最近は時間の使い方を見直して、「◯時から◯時までは仕事をするけど、それ以降はしない」「前日に次の日のやるべきことをリスト化しておく」というように、ルールを決めました。

もちろん暮らしと仕事が繋がる部分もあるので、完全にそのルール通りというわけではないですが、自分のメンテナンスのためにも、メリハリをつけるためにも、やるべきことを可視化して上手く取り組んでいこうとしています。

福井:仕事とプライベートの境界が曖昧な今の状態は、岩井さんの生活にとって良い方向に働いていますか?

元々は仕事とプライベートは全く別という考え方だったのですが、境界線が曖昧な今の働き方は、自分にとっては凄く合っているなと思っています。

仕事をしている国立という場所が自分のプライベートにとっても心地良い場所になっているので、自分の仕事を通して、街がもうちょっと良くなったらいいなという考え方をするようになりました。

福井:進路選択をするにあたって、ワークライフバランスに悩む学生も多いと思いますが、大学生に向けて何かアドバイスはありますか?

岩井:選択って、一度やってみないと分からない部分もあると思います。

何かを選ぶというのはすごくエネルギーが必要ですし、大変だと思います。ですが、最初に選んだ場所にずっといなければならないわけではないと思うので、最初の選択が自分の人生を決めてしまうとは考えずに就活してみても良いのではないかなと。

最初に選択した場所が自分にすごく合っていたら、それはそれで良いことだと思うのですが、もし違うと思ったらその感覚を殺さないようにすることは大事かなと思います。

「3年働かなきゃいけない」ということは個人的にはないと思いますし、少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかなと思います。

私も最初に働いていた会社をすぐやめた時は、金銭的に困ったりということもあったのですが、その時は苦しくても、もっと自分のやりたいことだったり、しっくりくる環境を見つけるための時間だったと思っていますし、それがその後の人生に大きな影響を与えるのではないかなと感じています。

福井:岩井さんは「みんなのコンビニ」のスタッフや、「富士見台トンネル」への出店を通して、国立のまちに深く関わっていらっしゃいますが、どこかおすすめのスポットやコミュニティはありますか?

岩井:自分が携わっている場所ではありますが、「富士見台トンネル」と「みんなのコンビニ」はやはりおすすめです。

どちらもシェア型の場所なので、消費者として地域の色々な魅力を発見できるところも魅力だと感じていますし、また「小さく商売を初めてみたい」と考えている方にも、スタートを切る場所としておすすめです。

飲食店だと、マルカフェキッチンさんやスナック水中さんが好きです。食事やお酒を楽しめるだけでなく、お客さん同士の心地よいコミュニティがあることも共通の魅力ですね。

あとはつい最近「谷保ねこ」という猫カフェさんにも初めて伺いました。猫たちがのびのびと自由気ままに過ごしているのをみていると、とっても癒されます。猫好きの方にはぜひおすすめしたいです。

【最後に、学生に向けて一言お願いします!】

岩井:シンプルではありますが、まずは色々やってみることが大切だと思います。

学生の時は色々なことを知る経験や外に出ていく機会が少なかったりすると、それまで聞いてきた大人の言葉や、 見てきたものが全てになってしまいがちだと思うんです。かつての私もそうでした。

人との出会いや異なる価値観に触れることで、自分に合うものや、やりたいことが見えてくるかなと思うので、ぜひ色々なことに挑戦してみてください。

Interview:椿左京 / 福井郁花 
Text:椿左京  / 福井郁花


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